パワー! その2


「本日付で配属になりました、ジャン・ハボック准尉ですっ」
 緊張に上ずった声でそう言って敬礼するハボックを見つめてロイは頷く。
「よろしく、ロイ・マスタングだ」
 そう答えれば、ハボックが何か言いたげに口を開くより先に、ロイは言葉を続ける。
「前に士官学校であったな」
「あっ、はいっ!」
 自分はロイに声をかけられたことを誇りに、いつかその下で働けることを夢見て士官学校での2年間を過ごしてきた。士官学校の生徒にすぎない自分をロイが覚えているなんてことはありえないと思いつつ、それでも確かめてみたくて聞こうとした矢先ロイのほうからそう言われて、まさか覚えていてくれるとはとハボックは感激に顔が熱くなった。
「オレっ、中佐のところで使ってもらいたくて一生懸命やってきたっス。まだまだ未熟ですけど頑張りますっ」
 紅い顔でそう言うハボックにロイは頷いて言う。
「うむ。期待しているよ、准尉」
「はいっっ」
 目を輝かせて敬礼すると執務室を出て行くハボックの背を見送って、ロイは満足そうに頷いた。扉が閉まった途端、傍らのホークアイに向かって言う。
「今日は鼻の下も伸ばさなかったし、涎も垂らさなかったぞ」
 何がいけないんだ、と言うロイにホークアイが答えた。
「嘗め回すような目つきがイヤらしかったです。あと、舌なめずりする音が聞こえました」
「2年前よりさらにいい体つきになってたな」
 ホークアイはロイの言葉にため息をつくと言う。
「夢を壊すようなことをなさらないでくださいね」
「失敬な、そんなことをするわけがないだろう。可愛がってやるだけだ」
 ろくでもないことを考えていそうなロイをちらりと見てホークアイは言った。
「体術の腕前は相当なものだそうですよ。せいぜい次の日の業務にさしつかえないよう、なさってください」
「案ずるな、寝技は得意だ」
 そう言ってにんまりと笑うロイに、ホークアイは密かにハボックに護身術を教えてやろうと誓ったのだった。


2007/6/19



 その3
その1