パワー! その18


 気がつけばステージの曲も半分程を過ぎて、客達の雰囲気も興奮の中に寛いだものが混じってくる。ロイは楽しそうに体を揺らすハボックを見つめて言った。
「ここにはよく来るのか?」
「そうっスね、マイク達のバンドが出る時は勿論っスけど、そうでない時もよくマイクが誘ってくれるんスよ」
 だから、と言って笑うハボックの言葉にロイは僅かに眉を寄せる。
(それはもしかしなくても気があるという事ではないのか)
 自分基準でそう決めつけて、ロイはステージ上の男を要注意人物リストのトップに載せた。その時不意に今までのアップテンポの曲がゆったりとしたバラードに変わる。「あ」という顔で僅かに目を見張ったハボックはロイを見てにっこりと笑った。
「これ!マイクの得意ナンバーなんスよ。オレのお気に入りなんス」
 そう言ってゆったりとした曲に合わせて目を瞑ってゆるゆると体を揺らすハボックの姿にロイは目をみはった。
(ここだーッ!)
 心の中でそう叫んでロイはハボックに手を伸ばす。いきなりガシッと腕を掴まれて、ハボックが驚いたように目を見開いた。
「え?中佐…?」
 見開く空色の瞳の幼さにロイは鼻を膨らませてハボックを引き寄せる。はやる心を抑えて極上の笑みを浮かべてハボックに言った。
「せっかくのいい曲なんだ。それに合う踊りをしよう」
 そう言ってロイはハボックを抱き締めるように腕を回す。胸を合わせてゆっくりと体を揺らすロイにハボックは慌てて言った。
「や、でもッ、ちゅ、ちゅうさッ」
「黙って……、お前のお気に入りの曲なんだろう?ゆっくり聞かせてくれ」
 そう言って微笑まれれば無理に腕を振り払うことも出来ない。
「あ…や……はい……」
 困り切って腕の中で真っ赤になるハボックにロイはゴクリと喉を鳴らす。
(なんて可愛いんだッ、ハボック…!後はキスだッ、キスしかないッッ!)
 心で叫んでロイは腕に力を込めた。



2009/11/02


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