| パワー! その17 |
| 「大丈夫っスか?」 ヨロヨロしながらバーカウンターに辿り着いたロイにハボックが言う。心配そうに覗き込んでくる空色の瞳に、ロイは「ははは」と笑って見せた。 「大丈夫だ。不意打ちだったからな、ちょっと効いたよ」 苦笑して言うロイにハボックがホッとした表情を浮かべる。とりあえずロイが大丈夫そうだと判るとカウンターの上のメニューを指差して言った。 「中佐、何にします?」 「そうだな、ジン・トニックにするよ」 「んじゃオレ、マリブ・オレンジにします」 ハボックはそう言ってカウンターの中から二人の様子を見ていたバーテンダーに注文を通す。バーテンダーは頷くと慣れた手つきで素早くカクテルを作り、二人の前にグラスを置いた。カウンターに金を置こうとするハボックを制して払ってくれたロイにハボックが恐縮する。 「なに、さっきホットドッグを奢ってもらったからな」 「そっすか?じゃあ遠慮なく」 ロイの返事にハボックが笑ってグラスに口をつけた。どうみてもオレンジジュースにしか見えないそのグラスを見てロイが尋ねる。 「なんだかジュースみたいなカクテルだな。旨いのか?」 「え?あ、飲んでみます?」 ロイの言葉にハボックがグラスをスッと差し出した。突然突きつけられたグラスにロイの動きが止まる。じっとグラスを見つめたまま動かないロイにハボックが首を傾げた。 「あの…中佐?」 その声に引き付けられるようにロイがハボックを見る。黒い瞳に凝視されて、ハボックは困ったように頬を染めた。 「あ、えっと……すみません、いりませんよね」 ハボックは恥ずかしそうにそう言ってグラスを両手で握り締める。そっと口付けるようにグラスに口をつけたハボックの腕を、伸びてきたロイの手がガシッと握り締めた。 「えっ?」 驚いて見開く空色の瞳にロイはズイッと近づく。それから普段女性を口説くときに絶大な威力を誇る微笑みを浮かべて言った。 「是非、味見させてくれ、ハボック」 「あ、はいっ、どうぞっ」 ハボックは間近に迫るロイの微笑みにドギマギしながらグラスを差し出す。グラスを受け取ったロイはゴクリと唾を飲み込んだ。 (これはいわゆる間接チュー!!!) さり気なくグラスを回し、ハボックが口をつけた箇所を手前に持ってくるとチラリとハボックを見る。じっと見つめてくる空色の瞳に微笑んで、ロイはグラスに口をつけた。コクリと飲んだカクテルはハボックの香りがするような気がする。グラスの淵に溜まった滴を舌で受け取めるフリをして舐めると、グラスをハボックに返した。 「うん、かなり甘いが美味しいな」 「へへ、オレ、実はこういう甘いの、好きなんス。女の子みたいで恥ずかしいんスけど」 恥ずかしそうに顔を赤らめて言うさまが愛らしい。ロイは鼻の穴を膨らませて大きく首を振った。 「そんな事ないぞッ、私も甘いカクテルは大好きだッ」 「ホントっスか?なんかオレと中佐って結構好みが似てるっスね」 そう言って嬉しそうに笑うハボックをロイが堪らず抱き締めようとした時、ステージから大きな音がして一際高い歓声が上がった。 「あ、曲が終わっちゃった!中佐、落ち着いたんならあっちに行きましょう」 クーッとロイが舐めた箇所からカクテルを半分ほど飲み干してハボックが言う。コトンとカウンターに置かれたグラスをロイはさり気なく手に取ると残りのカクテルを飲み干してしまった。 「中佐?」 「ああ、今行く」 半分戻りかけて振り向くハボックにロイは頷く。 (次は直接チューだッ!!) 曲に合わせて体を揺らす客達の間に入っていくハボックの後を追いながら、ロイは拳を握り締めたのだった。 2009/09/07 |
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