パワー! その16


 ググーと身を寄せてもキョトンとした顔で逃げようとしないハボックにロイの鼻息が荒くなる。
(イケるっ!イケるぞッッ!!ついにこの桜色の唇が自分のものにッ!!)
 鼻の穴を膨らませたロイが今まさにハボックの唇に自分のそれを押し付けようとした時。
 ドゴオッ!
「グハッ!」
 すぐ傍で曲に合わせて跳びはねていた屈強な男の肘がロイの脇腹にヒットする。ガクッと膝をついたロイにハボックが慌てて手を伸ばした。
「大丈夫っスか?中佐っ」
「は、ははは……だっ、大丈夫、だっ」
 引きつった笑いを浮かべたロイは、痛みに呻きながらも心配して自分を覗き込んでくるハボックとの距離に再び拳を握り締めた。
(まだイケるッ)
 立ち上がるタイミングで引き寄せてキスすればいい、懲りないロイがそう思って手を伸ばそうとする。だが。
 バコンッ!!
ッッ!!〜〜〜ッッ!!」
「あ、失礼!」
 今度は別の男の拳がロイの後頭部を直撃して、ロイは前のめりに床にへたり込んだ。
「中佐!」
 続けざまの不幸にハボックが慌ててロイを引き起こす。
「早く立たないと危ないっスよ、みんなステージしか見てないから」
「あ、ああ……すまない」
 流石にフラフラしながら立ち上がったロイにハボックは言った。
「あっちにバーカウンターがあるっスから、ちょっと休みましょう」
「すまん
 痛む頭と脇腹を擦りながらロイはハボックに連れられるままバーカウンターへと歩いていったのだった。



2009/01/16


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