パワー! その13


「じゃあ、今日は楽しんでいってくださいっ!」
 マイクはそう言って、握ったロイの手を更にギュッと握り締めると足早に出て行く。ジンジンと痺れる手をそっと擦りながら、ロイはマイクの背をニコニコと見送るハボックを見た。
「友人と言っていたな、どこの友人なんだ?」
「士官学校で一緒だったんス」
 ロイが聞けばハボックが答える。
「昔っからギターが大好きで、音楽のこととかすげぇ詳しくて。学校にいた頃、よく夜通しで音楽の話を聞かされたんスよ」
(夜通し…)
 ロイはハボックの言葉の中の単語に引っかかって眉を顰める。消灯後、小さなライトだけをつけた室内で熱く音楽について語る友人の話を聞くハボック。昼間の訓練の疲れから話を聞きながらもついウトウトしてしまい、友人の肩に頭を預けて居眠りを始めるハボック。
(まっ、まさか悪戯されたりしたのではっ!!)
 長い睫を伏せて、桜色の唇から穏やかな寝息を立てるハボックは堪らなく色っぽい。自分の妄想の中のハボックにすっかり興奮したロイが自分基準で友人の行動を決め付けた時。
「中佐!もうすぐ始まりますから行きましょう!」
 いつの間にやらトイレの入口に立っていたハボックの声にロイはハッとして顔を上げる。
「中佐、早くっ!」
 にっこり笑って手を差し出すハボックにロイの顔がぱあっと晴れ渡る。飛びつくようにその手を掴もうとした寸前、ハボックは身を翻して駆け出してしまった。
「早く、早く!中佐!」
 少し先でまた振り向くとロイを手招くハボックに
(“捕まえてごらん”ってことか、なんて可愛いんだっ、ハボックっっ!)
 勝手な妄想に陥りながら、ロイはハボックを追って走ったのだった。


2008/2/28


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