幻想女神  第四章


 不思議そうな顔をするハボックを男は掴んだ腕を引いて路地の中に突き飛ばす。短い悲鳴を上げて地面に倒れ込んだハボックを見下ろして男達はニヤニヤと笑った。
「アンタが探してる酒もバーも知ったこっちゃないんだよ」
「そうそう、そんなもんに俺たちゃ興味ねぇ」
 ポカンとして見上げるハボックの顎を男の一人が掬い上げる。
「俺たちが興味あるのはアンタだよ」
 男はそう言うとハボックの胸に手を伸ばした。胸に触れようとする男の手を払いのけてハボックが怒鳴る。
「騙したなッ」
「人聞きの悪いこと言うな。アンタだって判ってついてきたんだろう?」
 そう言いながら伸びてくる手から逃れてハボックは後ずさった。圧し掛かってこようとする男の顎を、思い切り蹴り上げる。思いがけない抵抗に男が怯んだ隙に、ハボックは立ち上がり路地の外へ逃げようとした。だが、もう一人の男が出口を塞ぐように立ちはだかる。ハボックは右手を握り締めると男の腹めがけて思い切り突き入れた。いつもなら突きに吹き飛ぶ相手の体は、吹き飛ぶどころか揺らぎもしなかった。それどころか突き入れたハボックの手首を掴んで笑う。
「見かけによらずとんでもねぇオテンバだな。だが、生憎こっちもそれなりに鍛えてるんでね」
「な……っ」
 男はそう言って笑うと掴んだ手首を降り上げるようにしてハボックの腕を背後にひねる。そうしてハボックの体を後ろから抱え込んだ。
「おとなしくしろって。楽しもうぜ、なあ」
 男はそう言ってハボックの耳に噛みつく。その頃になってハボックに顎を蹴られた男が立ち上がった。顎をさすりながらハボックに近づいて言う。
「おいたが過ぎるぜ。せっかく気持ちよくしてやろうとしてんのによ」
 男はそう言うとハボックの顎を掴んだ。二人の男の間に挟まれて、ハボックは必死にもがいた。
「離せッ、この……ッッ」
 何とか逃れようとするものの背後に捻り上げられた腕はビクともしない。士官学校の時ならいざ知らず最近ではこんな風に力で負けたことなどなくて、ハボックは自分の非力が信じられなかった。
「へへ、いい女じゃねぇか」
 顎を掴んだ男はそう言うと強引に唇を合わせてくる。
「んんっ」
 ナメクジのような舌が入り込んできて、ハボックはゾッとして身を震わせると口内を這い回るそれを思い切り噛んだ。
「ッッ!!このアマッ!!」
「…ッ」
 舌を噛まれた男は怒りに任せてハボックの頬を張る。それからジャンパーの前を開けると豊かな胸を鷲掴んだ。
「ヤダっ!!」
 思わず悲鳴を上げるハボックに男が下卑た笑みを浮かべる。シャツ越しに胸の頂を刺激するように揉みしだいた。
「大人しくしろって。イイ思いさせてやるからよ。……くく、下着もつけてねぇで、やっぱりこうされるのを期待してたんじゃねぇのか?」
 男はそう言って楽しそうにハボックの胸を捏ね回す。
「違……ッ、アアッ」
 胸を揉まれ頂を指先で刺激される度ゾクゾクとした快感が走り抜ける。もともと胸を弄られるのは弱かったが、男だった時とは違う快感の拾い方をする体に戸惑って、ハボックは嫌々と首を振った。
「俺達のデカいの突っ込んでヒィヒィ言わせてやるぜ」
 背後からハボックを押さえ込んだ男も笑いながら言う。後ろから伸びてきた手が、ジーンズのジッパーを下ろし、中へと忍び込んできた。
「やめろッ」
 身を捩るハボックの抵抗などものともせずに男は手を下着の中へと入れる。男の無骨な指に小さな実を摘まれてハボックは悲鳴を上げた。
「イヤあっ!!」
 男はハボックの耳元でクククと笑いながら指を狭間へと滑らせる。太い指をグッと狭間に突き入れられて、ハボックは息を飲んだ。男にはない、生まれながらに受け入れるように出来ている部分を嬲られてハボックがビクビクと震える。ハボックの豊かな胸を弄んでいた男がニヤリと笑って言った。
「感じ始めたみたいだな。乳首もコリコリになってきたぜ」
「こんなイイ体してんだ。ちょっと可愛がってやればすぐトロトロになってしがみついてくんだろ」
 そう言いあう男達のイヤラシい笑い声がハボックの耳に届く。どうしても男達を振り払えない怒りと悔しさにハボックの瞳から涙が零れた。
「やだ……ヤダァァッッ!!」
 悲鳴を上げるハボックに男達がゲラゲラと笑う。男達はもがくハボックを地面に引きずり倒した。固い地面に背を押しつけられてハボックは男を睨む。もがいた拍子に自由になった腕をハボックは思い切り払った。
「ガッ」
 グッと握った拳で鼻を殴られて男が怯む。その隙に逃げ出そうとしたハボックは次の瞬間乱暴に引き戻された。
「あっ」
「このアマっ!!」
 殴られた男は恐ろしい顔で怒鳴る。引き戻したハボックを押さえつけるとハボックの頬を力任せに張った。バシッという音と共に目の前に火花が散ったような気がして、ハボックは地面に頬を預けた。
「ちょっと手加減してやればいい気になりやがって!」
 男はそう言ってハボックの顎を掴む。赤く血走った目でハボックを睨んで言った。
「どうせヤられるんなら痛い思いはしたくねぇだろうっ!これ以上抵抗するとただじゃおかねぇぜ」
 そう言って凄む男をハボックは睨むと唾を吐きかける。男はこれだけ脅しても抵抗をやめないハボックを見下ろして歯を剥き出した。
「こ、の、アマぁぁッ!!」
 怒りに任せて男はハボックの首に手をかける。絞め殺さんばかりの勢いに、もう一人の男が言った。
「落ち付けって。こういう気の強いのは一度突っ込んでやればいいんだ。そうすりゃ大人しくなる」
 仲間の言葉にハボックの首を絞めかけていた男が手を弛める。ニヤリと笑って頷いた。
「なるほど。確かにそうだな」
 男はそう言うとハボックのジーンズに手をかける。グイと引きずり下ろされてハボックが悲鳴を上げた。
「ヤ……っ!!」
 膝の辺りまでジーンズを引き下ろして男は目を丸くする。男物のボクサーパンツを目にしてククッと笑った。
「なんだぁ?男物の下着なんざ穿きやがって。一緒に住んでる男のか?」
 男はそう言いながら下着に手をかける。ハボックの抵抗をものともせず引き下ろせば丸い尻と淡い茂みが現れた。
「今日はこのパンツの男のブツじゃなくて俺達のでっかいのをたっぷり食わせてやるからな」
「こいつの男もかわいそうになぁ。まあ、パンツだけじゃ女は守れねぇからよ」
 男達はそう言って下卑た声で笑う。ハボックはそんな男達を睨んでなんとか逃れようともがいた。
「離せっ!離せよッ!」
「諦めろって。お前の男よりよっぽどイイ思いをさせてやるから」
 男はそう言って舌なめずりするとハボックの股間に手をやる。ギョッとして身を固くするハボックをニヤニヤと見つめながら狭間に指を突き入れた。
「ヒィッ!!」
 いきなり根元まで指を突き入れられてハボックが悲鳴を上げる。ぐちぐちと蠢く指にゾッとしてハボックはもがいた。
「やだっ、やだっっ!!」
「大人しくしろ。すぐ善くなるから」
 もがく体を簡単に押さえつけて圧し掛かってくる男にハボックは目を見開いた。信じられない力の差に、ハボックの心に恐怖がこみ上げてくる。
「やだ……ヤダアぁぁぁッッ!!」
 どうすることも出来ない恐怖と絶望にハボックの唇から高い悲鳴が迸った。


「本当にどこに行ったんだ、あの馬鹿者は…ッ」
 ロイは忌々しげにそう呟く。通りすがりに肩をぶつけた男がロイを睨みつけたが、逆に強い光を放つ黒い瞳に睨まれて逃げるように慌てて離れていった。
「くそ……」
 ロイはそう呻いてあまり来たことのない界隈に足を向ける。その時、微かな悲鳴が聞こえて、ロイは足を止めた。
「………」
 声の出所を探してロイは辺りを見回す。細い路地の入り口が見えて、ロイはそちらに向かって歩きだした。ロイが角を曲がる寸前、再び悲鳴が聞こえる。慌てて飛び込んだ路地の奥で、二人の男が女性を押さえ込んでいるのが見えた。
「何をしているッ!!」
 そう怒鳴れば男達が振り向く。男の一人が立ち上がるとロイに向かって歩いてきた。
「なんだ?てめぇ。痛い目に会いたくないならとっとと向こうに行きな」
 そう言って凄む男をロイは平然として見る。
「そうはいかない。お前達こそ彼女を離してとっとと失せろ」
「…んだとっ」
 まるで怯む様子のないロイにカッとなった男がが殴りかかってくる。ロイはその拳を軽く受け止めると、思い切り男を殴り飛ばした。
「グハッ」
 大声を上げて散乱するゴミ箱に突っ込む男を見て、もう一人の男が慌てて身を起こす。蹲る仲間を見てロイをすごい形相で睨んだ。
「何しやがんだ、貴様ァッ!!邪魔すんじゃねぇッ!!」
「もう一度だけ言う。彼女を離してとっとと失せろ」
 まるで怯む様子のないロイに男は顔を歪める。
「失せるのはてめぇの方だッ!!」
 そう叫ぶと同時にロイに向かって殴りかかってきた。
「……下衆が」
 ロイは吐き捨てるようにそう呟くと造作なく男の拳をよける。たたらを踏む男の肩を掴んで振り向かせると男の顔に拳を叩き込んだ。
「ガッッ!!」
 ぐしゃりと嫌な音がして男の鼻が潰れる。ビクビクと震えて転がる男を、漸く起きあがったもう一人が腕に肩を回して抱え起こした。
「おっ、覚えてやがれッッ!!」
 使い古された捨て台詞を吐いて逃げ出す男達にロイはフンと鼻を鳴らす。地面に蹲る女性に慌てて駆け寄ると声をかけた。
「大丈夫ですか?」
 その声にビクッと細い肩が跳ねる。ロイは乱された服に眉を顰めると上着を脱いで女性の肩にかけてやった。
「怖かったでしょう。もう大丈夫ですから」
 その声に女性が俯けていた顔を上げる。見上げてくる涙に濡れた空色の瞳に、ロイは目を見開いて息を飲んだ


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