親友疑惑  第六章


「んっ」
 舌をきつく絡め取られれば口内に血の味が広がりズキズキとした痛みが走る。ハボックは首を振って深い口づけから逃れると、顔を背けたまま横目でロイを睨んだ。
「痛いっス」
「舌を噛み切ろうなんて馬鹿な真似をするからだろう?」
「だって……っ」
 その時の事を思い出してハボックは唇を噛み締める。愛しい空色に浮かぶ怯えた色に、ロイはハボックの耳元にキスを落としながら囁いた。
「そんなにアイツにされるのが嫌だったか?」
「当たり前だろッ!」
 思いがけないほど強い拒絶が返ってロイは目を瞠る。耳元から顔を上げじっと見下ろしていれば、ハボックが顔を背けたまま続けた。
「アンタ以外の奴にヤられるなんて絶対嫌だ。ディアスのを押し当てられて入ってきそうになって……っ、そんなことされるくらいなら死んだ方がマシだッ」
「ハボック」
 微かに震える声でそう告げるハボックをロイは息を飲んで見つめる。次の瞬間沸き上がってきた愛しさに、ロイはハボックの顔を強引に振り向かせると噛みつくように口づけた。
「んんッ!んーッ、……痛っ、大……んんンッ!!」
 痛がるハボックに構わずロイは深く口づけきつく舌を絡める。貪るような長い口づけを終えて唇を離せば、ぐったりとしたハボックが恨めしげにロイを睨んだ。
「ひでぇ……」
「お前が喜ばせるような事を言うからだろう?」
 そう言って嬉しそうに笑うロイにハボックが顔を赤らめる。ロイは紅く染まる頬を撫でながら囁いた。
「もっとお前を喰わせろ」
 口内に広がる血の味を味わっていれば、その身を喰らい尽くしたい衝動に駆られる。肉食獣の目でそう囁く男をハボックは目を見開いて見つめたが、笑みを浮かべて答えた。
「いっスよ、その代わり喰うなら骨まで残さず喰ってください」
 挑戦的な光をたたえる空色にロイは一瞬見開いた目を細める。そうすれば益々肉食獣にしか見えないロイに、ハボックはゾクリと震えた。
 ロイはハボックの喉元に唇を落とすときつく吸い上げる。チクリとした痛みに押さえ込んだ躯が微かに震えるのを感じれば、ロイは唇を押し当てていた肌に歯を立てて噛みついた。
「い……ッ」
 急所に噛みつかれハボックは反射的にロイを押し返す。ロイはその手を掴んでベッドに押しつけると更に歯を食い込ませる。白い皮膚が破けて滲んできた血を旨そうに舐めて、ロイは漸く顔を上げた。
「ヘンタイ」
 唇についた血を舐める男を睨み上げてハボックが言う。そうすればロイがハボックの股間をやんわりと握り締めて答えた。
「ヘンタイ行為をされてこんな風にしている方がよほどヘンタイじゃないのか?」
「あっ」
 服越しに触れられた楔ははっきりと判るほどに熱を持っている。悔しそうに見上げてくる空色にロイは笑うとチュッと口づけた。
「愛してるよ、ハボック」
「────ずりィっ」
「何故だ?本当のことを言っただけだぞ」
 そう言って見下ろしてくる黒曜石に、ハボックはコクンと喉を鳴らした。
「……シて、大佐。早く……っ」
 ハボックは腕を伸ばしてロイを引き寄せる。ロイは嬉しそうに笑うと引き寄せられるままハボックに口づけた。


 服を脱ぎ捨て直に肌を合わせれば忽ち互いの躯が熱を上げる。白い肌に唇を強く押しつけ紅い花びらを幾つも散らしながら唇を滑らせると、ロイはたどり着いた胸の頂を唇で包み込んだ。強く吸ったり舌先で押し潰したりしながら、もう一方を指先で強く捏ねた。
「あ……ふぅ、ん……ッ、たいさ……ァ」
 甘い声で啼きながら強請るように突き出される胸を、ロイは執拗に攻め続ける。込み上げてくるジンジンとした疼きが痛いのか、イイのか、判らなくなったハボックは、身を捩ってロイを押し返した。
「そこはもういいっス……っ」
 嫌だと訴えるハボックにロイは低く笑うと顔を上げる。熱に潤む瞳を覗き込んでロイは言った。
「じゃあどうしたいんだ?」
 意地悪く聞くロイをハボックは睨んで押し返すようにして身を起こす。なにをするつもりかと押し返されるままベッドに座り込んで見ていたロイは、互いの脚を絡めるように座り込んだハボックが互いの楔を両手で包み込むようにして擦り始めたのを見て目を見開いた。
「ハボック……ッ」
 まるで十代の若者が精を処理する為のようなそんな行為を続けながら、ハボックはロイを見てうっすらと笑う。そんな表情を見れば、ロイはハボックの頭を引き寄せチュッチュッと軽く口づけながら、もう一方の手でハボックの手の上から一緒になって扱き出した。突き出した舌先で互いの唇を舐めチュウと唇を吸い合って夢中で楔を擦り合わせる。やがて小刻みに躯を震わせると、二人は互いの腹の上に熱を吐き出した。ハアハアと荒い息を零しながら互いの顔を見てクスクスと笑う。
「こんな事をしてイったのは久しぶりだな」
「中佐としてたんスか?」
「するか、バカ。気色の悪い」
 ロイは思い切り嫌そうに顔を顰めると言葉を続けた。
「士官学校時代もその後も、男とどうこうしたいと思ったのはお前だけだ。大体、お前、私が自分で処理したのなんてそれこそ初めてヌいた時くらいだ」
 どこか偉そうに言うロイにハボックが尋ねる。
「じゃあ、それ以外の時はどうしたんスか?」
「世の中には綺麗なご婦人がたくさんいるだろう?」
 そう言うロイにハボックは顔を歪めた。
「なんかソレ、すげぇムカつく……」
「なんだ、ヤキモチか?」
 嬉しそうに言われてムスッと押し黙るハボックに今度はロイが尋ねる。
「そう言うお前こそ、士官学校時代まさか誰かとシてたんじゃないだろうな」
 ディアスのこともある。まさかと思いながらも尋ねれば否定の言葉が返って安心したのも束の間、ロイは続く言葉に目を剥いた。
「まあ、結構誘われたりはしましたけどね」
「おい」
「でも、ブレダにやめとけって言われて」
 断ってました、と言うハボックに、ロイはハボックの貞操を守ってくれたブレダに今度酒でも奢ってやろうと考える。もっともブレダにしてみれば、よりによってロイに喰わせる為に守ってた訳じゃないと言うだろうが。ロイがそんなことを考えていればハボックが濡れた瞳でじっと見つめてきた。
「たいさ……」
 情欲に色濃く染まった瞳にロイは薄く笑うとハボックの頬に手を伸ばす。
「欲しいのか?」
「アンタだって挿れたいっしょ?」
 負けじと言い返すハボックにロイは言った。
「そのままじゃ入らないだろう?」
そ う言うロイをハボックは目を見開いて見つめる。ほんの少し迷ったものの、ベッドの上で大きく脚を広げると二人の熱に濡れたままだった指を己の蕾に押し入れた。
「んっ……」
 ロイが見つめる先で、ハボックはしどけなく開いた脚の間に手を入れて、奥まった蕾をクチクチと掻き回す。荒い息を零しながらも沈める指の数を増やしていき、ついには三本もの指を挿れてぐちゅぐちゅと抜き差ししては掻き回した。
「んふ……はァ……たいさァ……」
 甘ったるい声で呼ぶハボックにロイは笑って手を差し出した。
「おいで、ハボック」
 誘われるままハボックは己の蕾から指を引き抜くとロイの脚を跨ぐ。そそり立つロイ自身を蕾に宛がい、ゆっくりと腰を下ろしていった。


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