辿り着くはパナケイアの空  第四十二章


 何度も何度も口づけて、漸く唇を離す。オレの髪をかき上げて大佐が熱っぽく言った。
「欲しい、ハボック」
 お前が欲しい。耳元に口づけながら大佐が囁く。吹き込まれる熱い囁きに抗えるはずもなく微かに頷けば、噛みつくように口づけられた。
「んっ、ンンッッ!!」
 舌の根が痛いほどきつく舌を絡められてオレは大佐の腕を掴む。このまま千切れてしまうのではと思った時、大佐の唇が離れてオレはホッと息を吐いた。
「ハボック」
 大佐は離した唇をオレの首筋に押しつける。チクリとした痛みをオレの肌に刻みながら大佐はシャツの上からオレの体を弄(まさぐ)った。その手がシャツの裾から潜り込み、肌に直に触れてくる。乳首をキュッと摘まれて、思わずビクリと体が跳ねた。
「たいさ……ッ」
 大佐は指先でオレの乳首を捏ねたり潰したりしていたが、いきなりオレのシャツに手をかける。その手が思い切りシャツを引き裂くのを見て、オレは息を飲んだ。
「……すまん」
 呻くように言う大佐の余裕のなさが信じられない。目を見開いて見つめるオレの視線を避けるように、大佐はオレのボトムに手をかけると下着ごと剥ぎ取ってしまった。
「やっ!!」
 全裸に剥かれてオレは手足を引き寄せ縮こまろうとする。だが、大佐に押さえ込まれて叶わなかった。
「ヤダ……ッ、見るなッ」
 大佐の熱い視線がねっとりと見ている事を感じてオレは羞恥に顔を赤らめる。明るい部屋の中、大佐の強い視線に晒されるのは恥ずかしくて堪らなかった。
「大佐っ」
「見せろ、ハボック」
 もがきながら訴えるように呼べば低い声が答える。そうすればもうどうすることも出来ず、オレは震えながら目を閉じた。
視界を遮れば一層強く視線を感じる。それでももう一度目を開ける事が出来ないでいるオレの胸に、大佐が口づけてきた。
「ひゃ……ッ」
 唇で強く吸われ舌で押し潰されると指でされるより酷く感じてしまう。それが快感なのかはよく判らなかったけど、大佐にそうされていると思っただけで興奮して中心に熱がこもっていくのを感じた。
「たいさっ、それヤダッ」
 胸を繰り返し弄られれば先端がプクリと大きくなる。それにつられるように中心が堅く勃ち上がるのが判って、もう恥ずかしくて死にそうだった。
「だが、イイんだろう……?」
 チロチロと舌を這わせながら大佐が言う。その手がやんわりとオレの中心を握り、オレは小さな悲鳴を上げて背を仰け反らせた。
「や……ッ!!」
「可愛いな、ハボック」
 大佐はそう言いながらオレの楔を扱く。直接的な刺激にたちまち追い上げられて、オレは緩く首を振った。
「大佐……ッ、やめてっ、出ちゃう……ッ」
 ぐちゅぐちゅと扱かれて高まる射精感をオレは必死にこらえる。でも、大佐はやめてくれるどころか一層きつく扱いた。
「だめッ、ホントに……ッ」
 オレは大佐の手首を握って閉じていた目を開ける。そうすれば食い入るように見つめてくる黒曜石と目があった。
「や……やあああッッ!!」
 その途端、ゾクリとしたものが背筋を駆け抜けオレは射精してしまう。強い大佐の視線を感じながら、オレは大佐の手の中にびゅくびゅくと精を吐き出した。
「あ……ああ……っ」
 恥ずかしい。恥ずかしくてたまらない。涙の滲む目で責めるように大佐を見れば、大佐がうっとりと笑った。
「可愛いな、こんな顔でイくのか」
「ッ、馬鹿ッッ!!」
 そうでなくても恥ずかしいのに、そんなことを言う大佐をオレは罵って顔を背ける。そうすれば大佐がオレの頬にキスを落としながら「すまん」と言った。その声に大佐を見上げると優しいキスが降ってくる。大佐は何度かキスをすると、オレの脚の間に手を差し入れた。オレの熱に濡れた手が脚を押し開くようにして双丘の狭間に入り込んでくる。指先が蕾に触れて、オレはビクリと体を震わせた。
「ハボック……」
 熱い声でオレを呼んで大佐は熱を塗り込めるようにオレの蕾をさする。大佐がなにをしようとしているのかが判って、オレは小さく首を振った。
「ヤダ……怖い……っ」
 オレは男で受け入れるようには出来ていない。以前、無理矢理ねじ込まれた記憶が蘇って、オレは恐怖に身を強張らせた。
「ハボック」
 呼ぶ声にオレはギュッと目を瞑って首を振る。大佐の事を好きだけど、どうにも恐怖が先に立って頷く事が出来なかった。
 大佐は小さく息を吐き出しながらオレに口づける。大佐のため息の欠片がオレの唇に吹き込まれるのが悲しかった。
「大佐……好きっス!」
 拒んだことで気持ちを疑われまいかという考えが頭をもたげて、オレは何度も好きだと繰り返す。しがみつくオレを宥めるように大佐は何度もオレに口づけた。少しすると大佐は口づけていた唇を下へと滑らせる。首筋を辿り鎖骨の窪みを擽るように舐めると更に下へと辿っていった。さっき散々弄った乳首には触れず脇腹へと舌を這わせる。胸を弄られなかった事で思わず息が零れたが、それが安堵なのか落胆なのか、自分でもよく判らなかった。
 薄い脇腹の皮膚をチロチロと舐めていた大佐がいきなり歯を立てる。
「アッ!……や、あ……っ」
 痛むそこを再び舌先で舐められればゾクゾクと体が震え、湿度の高いため息がオレの唇から零れた。
「痛くされるのが好きなのか……?」
「ッ?!なわけ、ないっしょ!」
「そうか?」
 舌を這わせながらとんでもない事を言う大佐に思わず声を張り上げて否定する。でも、大佐は楽しそうに笑ってオレの乳首に爪を立てた。
「ヒッ……いたぁ……ッッ!!」
 愛撫にプクリと立ち上がっていた乳首を爪が刺さるほど抓られてオレは悲鳴を上げる。
「痛いッ、ちぎれちゃうッ!!」
 食い込んでくる爪で本当に千切れてしまうような気がしてそう叫べば、大佐が手を緩めた。
「は……あぁ……」
 ホッとして息を吐き出すオレの脚の間に大佐の手が触れてくる。腹につくほどそそり立った先端を捏ねて、大佐が言った。
「萎えてないな。痛かったんだろう?」
「ッ?!そ、それは……ッ」
 確かにオレの楔は萎えるどころかさっきより勢いを増している。狼狽えるオレに大佐はクスリと笑って言った。
「まあいい。これから追々判っていくだろうからな」
「たいさ……っ」
 その言葉がこうした行為が今日限りでないことを告げている。なんだか酷く恥ずかしくて顔を赤らめるオレに大佐は優しくキスしてきた。
「ハボック……」
 キスは好きだ。大佐が好きだって気持ちがどんどん強くなる。手を伸ばしてしがみついたオレは、大佐が服を着たままなのに漸く気づいた。
「大佐、服、脱いでっ」
 オレの事は素っ裸に剥いておいて自分は服を着ているなんてズルイ。そう言えば大佐がニヤリと笑って体を起こした。
「さっきまで気づいてなかったくせに」
「ッ」
 ニヤニヤと笑う大佐が憎たらしい。だって、もう、いっぱいいっぱいなんだ、仕方ないじゃないか。
「怒るな、悪かった」
 プイと顔を背けるオレの頬を撫でて大佐が言う。圧し掛かってきた素肌が直に触れて、オレはピクリと体を震わせた。
「たいさ……」
 腕を伸ばして大佐の体を抱き締める。しっとりと汗ばんだ肌が興奮を伝えていて、オレは艶やかな黒髪に手を差し入れてキスを強請った。


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