| 辿り着くはパナケイアの空 第三十四章 |
| 「偽物?聞き捨てならないな、それは」 マクレーンは今までの人懐こい笑みを消してオレを見つめる。マクレーンの頭脳の鋭さを表すような鋭い視線を、オレは受け止めて口を開いた。 「アンタのところに来ていたのはハリソン大佐の部下だ。アンタ達の話に賛同して資金を出していたのもハリソン大佐。マスタング大佐は一切関係ない」 そう言えばマクレーンが怪訝そうに眉を寄せる。どう言うことだと問いかける視線にオレは言葉を続けた。 「そもそもの発端がなんなのかは判らない。でも、ハリソン大佐はマスタング大佐の事を恨んでいて失脚させるつもりなんだ。学生達を扇動して軍に反旗を翻したという理由でマスタング大佐の命を奪おうとしてるんだ」 オレがそう言えばマクレーンはじっとオレを見つめる。 「証拠は?」 「物的証拠は残念だけど。でも、これはオレがハリソン大佐から直接聞いたことだから」 「あんたに直接?でも、あんたはマスタング大佐の部下なんだろう?」 話を聞いていたカーティスが横合いから口を挟むのにオレは答えた。 「オレを仲間に引き込んで最後の仕上げをしようって目論見なんだよ」 そうしてオレはこれまでの経緯をざっと掻い摘んで話した。黙ってオレが話すのを聞いていたマクレーンは考えるように手を口元に当てて言う。 「それで?あんたの目的は?」 「オレの目的は一つだけ。大佐を、マスタング大佐を守りたい」 きっぱりとそう言えばマクレーンは目を見開いてオレを見つめた。 「恐らくハリソン大佐はアンタ達の事も潰すつもりだ。手の内は全部バレてんだろ?」 そう言えばマクレーンは眉を顰める。傍らのカーティスと視線を交わすマクレーンにオレは畳みかけるように言った。 「アンタ達がアメストリスの行く末を案じてるのは判る。でも、力じゃなにも解決しない。そんなの、アンタならよく判るだろ?」 考えるように黙り込む二人の顔を見ながらオレは続けた。 「今動けばハリソン大佐に利用された挙げ句叩き潰されるだけだ。軍が、マスタング大佐の部隊がアンタ達学生を援護するとか言われてるんだろ?確かに一度は援護するように見えるかもしれない。でも、ハリソン大佐はそれ以上の部隊でマスタング大佐ごとアンタ達デモ隊をぶっ潰すつもりなんだ」 必死に言い募るオレをマクレーンはじっと見つめる。 「じゃあどうしろと言うんだ?あんたはどうするつもりなんだ?」 聞かれてオレは一度呼吸を整えてから口を開いた。 「今回デモを起こすのはやめてくれ」 そう言えばカーティスが目を吊り上げた。 「バカ言うな、俺たちがこの日のためにどれだけ準備を重ねてきたと───」 「あんたはどうするんだ?」 カーティスの言葉を遮ってマクレーンがオレに尋ねる。オレはカーティスに向けていた視線をマクレーンに移して答えた。 「なにも。ただ普通に市街地での演習をするだけだ。ハリソン大佐からは学生達に手を貸すよう指示が出てるけど、オレの上官はマスタング大佐だけだから。なにも起きなければハリソン大佐がどんなに部隊を引っ張ってこようとどうしようもないだろ?」 オレは間をおいて言葉を続けた。 「アンタ達の言い分はきちんと公式の場で主張できるように取りはからう。マスタング大佐なら裏でコソコソ手を貸すんじゃなくて、ちゃんと話す場を作ってくれる筈だから」 大佐はどんな立場の相手でもきちんと話を聞いてくれる人だ。だから直接大佐と公式の場で会って話をして欲しいと言えば、マクレーンはフムと考え込んだ。 「確かに俺たちはマスタング大佐が手を貸してくれるという話を間接的に聞きはしたが直接話したことはない。いつも人づてで電話ですら声を聞いたことはないな。いつもくる男がマスタング大佐の部下だという証拠もない」 「だったら」 「でも、あんたの言うことが全部本当だという証拠もないだろう?」 勢い込むオレにマクレーンがピシャリと言う。マクレーンはオレを見つめて続けた。 「あんたの話は判った。だが今すぐここで返事をすることは出来ない」 マクレーンの言葉にオレは上げかけた声を飲み込んでギュッと唇を噛む。確かにマクレーンの言うことはもっともで、オレの話を聞いてくれただけでも彼らにとっては大きな譲歩なのだ。 「後で連絡する」 そう言うマクレーンに頷いて、オレはパブを後にした。 |
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