| オブシディアンの虜囚 第五章 |
| 「───長、……隊長ッ!」 「え……?……あ」 何度も聞こえる声が己を呼んでいるのだと漸く気づいて、ハボックは辺りを見回す。そうすれば部下たちが怪訝そうな顔でこちらを見ていることに気づいて、ハボックは顔を赤らめた。 「どうかしたんですか?隊長」 合同演習の真っ最中、様子のおかしいハボックに年嵩の軍曹が小声で尋ねる。ハボックはひきつった笑みを浮かべて首を振った。 「いや、ちょっと考えごとしてて……」 「しっかりしてください、北の連中も見てるんですから」 「ごめん……」 ハボックは答えて正面を見据える。 (しっかりしろ、集中しなきゃ!) 心の中で自分に言い聞かせて、ハボックは号令を発すると同時に走り出した。 (……サイテーだ) ハボックは乱暴に閉めたロッカーの扉にゴンと頭を打ちつけてため息をつく。部下たちがさりげなくサポートしてくれたおかげで形にはなったものの、今日の演習は正直最悪だった。 (なにやってんだ、オレ……こんなじゃ大佐に合わせる顔がないじゃん) 集中しようと思えば思うほど全くと言っていいほど集中出来なかった。躯の奥の奥にじんわりと残った種火のような快感が、躯を動かそうとする度その小さな火を体中にまき散らそうとするようで、思うように動くことが叶わなかったのだ。ハボックはのろのろと躯を起こしロッカールームを後にする。そういえば今夜もネルソンに誘われていたが、とても行く気にはなれなかった。 ハボックは夕暮れの街を俯き加減に歩いていく。このままでは今夜も眠れなさそうで、ハボックは正直かなり焦っていた。 (このまま今夜もちゃんと眠れなかったら明日の演習はボロボロだ……) とにかく躯の中のこの熱をどうにかしないといけない。ハボックは賑わう街を歩く足を止めると迷うように視線をさまよわせた。それから胸のポケットからサングラスを取り出してかける。ハボックは背を丸めるようにして大きな体を精一杯縮こまらせて、すぐ側の路地へと入っていった。路地の奥の店の前まで来ると辺りを伺うように視線を巡らせたと思うと、店の扉に手を伸ばし中にパッと飛び込む。扉に寄りかかるようにして息を吐くと、顔を上げて店内を見回した。 そこは所謂大人の玩具を扱っている店だった。狭い店内には所狭しと様々な道具が並んでいる。まだ開店して間もない時間であることもあり、店の中にはハボック以外の客は見あたらなかった。 (よかった……あんまり客いないみたいだ) 正直こんな店には入ったことはないし、そもそも玩具を使おうと思ったこともない。だが、今の切羽詰まった状態のハボックには玩具に頼るくらいしか解決策が思いつかなかった。 ハボックは狭い通路をきょろきょろと見回しながら歩く。棚には用途に合わせて様々な玩具が並んでいた。 (うそだろ……こんなにあるのかよ) 玩具は形も大きさも様々だ。しかも驚くほどにカラフルで、ハボックは色とりどりの男性器を模した玩具に、頬が赤らむのをどうすることも出来なかった。 (なにがいいのかなんて判んねぇよ……) 店に入ったら適当なものを選んでパッと買ってパッと帰るつもりだった。だが、あまりの種類の多さに圧倒されて選ぶどころではない。通路を歩いていたハボックは幾つものバイブが陳列されたショーケースに気づいて立ち止まった。 (すげぇ……) ピンクや紫の華やかなものから、やけにリアルな赤黒いものまである。赤い顔で飾られたバイブを見ていたハボックは、ショーケースの前に小さなボタンがついていることに気づいた。 (なんだろ、これ……) よく見れば飾られたバイブ一つ一つの前にボタンがある。悩んだハボックが手を伸ばしてボタンを押した途端、ショーケースの中のバイブが動き出した。 「ゲッ!!」 紫色の透明なそれは亀頭の部分だけがクネクネと動いている。そのイヤラシイ動きを見入るように見つめていたハボックは、ハッとすると慌ててボタンを止めた。ゆっくりと視線を動かせば、細かな説明書きと共に幾つもの飾ってある見本の前には一つ一つボタンがついている。楔だけでなくその下に皺もリアルな二つの袋がついているものを見てハボックはゴクリと唾を飲み込んだ。 (“リアルな肉質感ゆえに本物とプレイしている錯覚に陥ってしまう……本物を思わせる質感と激しい振動がアナルを疼かせる究極のバイブ”って……なんか、すげぇ……) じっと見つめたままハボックはそろそろとボタンに手を伸ばす。スイッチを押せば黒光りした男性器の模造品は振動しながらうねるようにくねくねとその全身を蠢かせた。 「うわ……っ」 そのあまりのイヤラシさに今度はすぐにボタンを止める。「スウィングに逆回転機能を搭載」だの「ナカを刺激する激しい上下運動」だの「絶倫!最強パワー!」だの、様々な謳い文句やら形もリアルな玩具を見ているうち、ハボックは腰の奥が重くなってきていることに気づいて慌てて首を振った。 (もう、どれでもいい!早く買って店出なきゃっ!) どうせ悩んだところで判らないのだ。ハボックは手近にあった玩具を引っ掴むとレジで投げつけるように金を払い、釣り銭をもらうのもそこそこに店を飛び出したのだった。 アパートに帰るとハボックはシャワーを浴び、ボクサーパンツ一つの格好で寝室に入る。ベッドの上に放り出していた紙袋を取り逆さにすれば、ボトリと箱が落ちてきた。箱を開け中から玩具を取り出す。薄暗い部屋の中、赤黒い男性器の形をした玩具をじっと見つめたハボックは、徐にそのスイッチを入れた。 「うわッ!!」 うねうねと動き出したそれをハボックは思わずベッドに放り投げる。慌てて拾うとスイッチを切り、紙袋の中に突っ込んだ。 「無理ッ!こんなの入るわけねぇじゃん!!」 普段、ロイのイチモツを咥え込んでいるのだ。それを考えれば玩具も大して変わらないと言えたが、生身の躯と玩具と、似ているようでそれは大きく違っていた。 「指でシよう……」 夕べは怖くて一本しか挿れなかった。それなら指の数を増やせばイけるのではないだろうか。ハボックはそう考えて抽斗の中からゼリーのチューブを取り出す。ボクサーパンツを脱ぎ全裸になるとベッドに上がりベッドヘッドに背を預けて大きく脚を開いた。 「……」 半ば勃ち上がった楔には触れず、指にゼリーを取りそろそろと手を開いた脚の間に差し入れる。双丘の狭間に近づければ指先につけたゼリーが触れて、ハボックはビクリと躯を震わせた。 「……、……ッ」 何度も息を吸っては吐きだす。何度目かに息を吐いた時、ハボックは指を一本蕾に押し込んだ。 「ンッ!」 冷たいゼリーの感触に身を強張らせたものの、ハボックはググーッと指を押し込む。根元まで長い指を押し込むとハボックはゆっくりと蕾を掻き回し始めた。 「ぅ……っ、くぅ……ッ」 昨日と同じ奇妙な感覚をハボックは息を詰めてやり過ごす。暫く掻き回していれば体温で溶けたゼリーがグチュグチュとイヤラシイ音を立てた。 「あ……ふぅ……ッ」 徐々に快感が沸き上がり半立ちだった楔が嵩を増して頭をグッともたげてくる。指がスムーズに動かせるようになったことを感じて、ハボックは恐る恐るもう一本指を挿れた。 「ンンッ!」 蕾が広がるのをやけにはっきりと感じて、ハボックは緩く首を振る。怖い気持ちもまだ残ってはいたが、ハボックは指を動かすのをやめなかった。 「は……たい、さ……ッ」 蠢く指がロイのものであるとでも言うようにハボックはロイを呼ぶ。熱い吐息の合間にロイの名を呼びながら指を動かしていたハボックは、迷った末にもう一本指を蕾に押し込んだ。 「くぅっ……きつ……ッ」 流石に三本目はきつくて息が上手く継げない。それでも呼吸が落ち着くのを待って、ハボックはゆっくりと指を動かし始めた。 「は……ッ、うそ……ッ」 グチョグチョとイヤラシイ音を立てて動かせば快感が沸き上がりハボックは背を仰け反らせて喘ぐ。ゾクゾクと背筋を駆け上がる快感に躯を震わせて、ハボックは荒い息を零した。 「あ……ふ……大佐ぁ……ッ」 目を閉じてロイの姿を思い浮かべる。うっすらと笑ったロイの長い指が己の蕾を掻き混ぜているのだと想像すれば、楔が腹につくほど反り返り、タラタラとイヤラシイ汁を垂れ流した。 「んふ……ぅッ、あっ……気持ちイイ……ッ、たい、さッ!!」 後少し、あと少しでイける。そう思ってハボックは埋めた指を激しく動かした。だが。 「あ……ああ……なん、でッ?!」 掴みかけた絶頂はするりと手からすり抜けて、すんでのところでハボックはイく事が出来なかった。 「なんで……ッ、なんでだよッ!!」 埋めることさえ怖がっていた指でハボックはムキになって蕾をかき回す。だが、先走りの蜜に濡れた楔は微かに震えるだけで望んだ最後の瞬間に辿り着くことは出来ず、ハボックはがっくりとベッドに沈み込んだ。 |
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