凌霄花(のうぜんかずら)の宿  第十六章


「イッ……アアッ!!」
 ガクガクと震える(ジャン)の蕾を俺はぐちゅぐちゅと掻き回す。腫れ上がっているせいで、蕾は昨日より口を閉ざしているように思えた。
真栖(マース)……ッ、痛い…ッ、痛いっス…ッッ」
 ぼろぼろと泣きながら(ジャン)はそう訴える。俺の腕を掴む指を間接が白くなるほど握り締めて、(ジャン)は弱々しく首を振った。
「裂けちゃう……も、死んじゃう……ッ」
 消え入りそうな声でそう言うのにさえ俺は興奮を煽られる。もっと乱暴に蕾を掻き回しながら、俺は体をずらして(ジャン)の楔を咥え込んだ。
「やだッ!!」
 ねっとりと咥えて舌を這わせる。蕾を弄る手を休めずに楔を嬲れば、(ジャン)が可哀想なほどに身悶えた。
「ああ……っ、ぅふ……やめて、真栖(マース)…ッ」
「イイんだろう?(ジャン)……素直にもっと強請ってみろ……」
「そんな……ッ」
 ハアハアと息を弾ませて(ジャン)は首を振る。だが、今では(ジャン)の楔はすっかりとそそり勃ち、腫れた蕾をしとどに濡らすほど蜜を垂れ流していた。
「舌で舐めとるくらいじゃ間に合わないほど涎を垂れ流しているぞ……ほら、もうぐっしょりだ……」
「言うな…ッ!!」
 口に出して言えば(ジャン)が羞恥に震える。それと同時に蕾がきゅうと俺の指を締め付けて、俺はくすくすと笑った。
「そんなにイイのか……指でこれなら俺のを挿れたらどうなるんだろうな」
 楽しげにそう言えば(ジャン)の体がビクリと震える。弱々しく首を振って(ジャン)は俺に言った。
「無理……ッ、そんなの挿れたら…ホントに死んじゃう……ッ」
「そうか、そんなに挿れて欲しいのか」
「ッ?!違……ッ、アアッ!!」
 俺は言って沈めていた指を乱暴に引き抜く。一度身を起こすと着ていた服を全部脱ぎ捨てた。
「……真栖(マース)
 膝立ちで(ジャン)の上に跨る俺を見開いた空色の瞳が見つめる。腹につくほど猛々しくそそり勃つ俺の楔を見て、(ジャン)が真っ青になった。
「無理……ッ、お願い、挿れないで、真栖(マース)……」
 カタカタと震えて(ジャン)が細い声で訴える。そんな声で紡がれる言葉は全て俺を誘う役にしか立たず、俺は笑って(ジャン)の脚を抱え込んだ。
「大丈夫、心配しなくても優しくしてやる……。夕べの俺は優しかっただろう?」
真栖(マース)っ」
「大丈夫、痛いのは最初だけだ」
 そう言いながら俺は(ジャン)の蕾に楔を押しつける。(ジャン)の目が更に大きく見開かれ、その唇から零れる呼吸が浅く(せわ)しなくなった。
(ジャン)……愛してる」
 囁いて俺は押しつけた楔をグイと突き挿れる。(ジャン)の喉がヒクリと鳴って悲鳴が唇から零れる前に、俺は(ジャン)の唇を己のそれで塞いだ。
「ッッ!!んん───ッッ!!」
 唇の中に吹き込まれる悲鳴を俺はうっとりと聞きながら一気に楔をねじ込む。びくんびくんと大きく跳ね上がる体を押さえ込んで俺は吐息を零した。
「ああ、(ジャン)……」
 腫れ上がった蕾がきゅうきゅうと締め付けてくるのがたまらない。熱があるせいか、昨日より更に熱い内壁が俺の楔を包み込み食いつくそうとするようにまとわりついてくる快感に、俺の楔が更に一回り大きくなった。
「イッ……アッ……真栖(マース)…ゥッ」
 ピクピクと小刻みに体を震わせて(ジャン)が俺を呼ぶ。(ジャン)の顔は可哀想なほど青白く、額には汗が滲んでいた。
(ジャン)……可愛いよ、(ジャン)
 俺は優しく囁いて(ジャン)の額にキスを落とす。(ジャン)は引き瞑っていた目をうっすらと開けて俺を見上げた。
真栖(マース)……」
 少しでも痛みを和らげようと体を動かさないようにするどころか、呼吸さえ押さえて微かな声で俺を呼ぶ(ジャン)の頬をそっと撫でる。訴える視線の意味など気づかぬフリで笑うと俺は言った。
「今、もっと善くしてやろうな」
 そう言って俺は(ジャン)の脚を胸につくほど押し上げてガツンと突き上げる。(ジャン)は胸を仰け反らせ悲鳴にならない声を上げて悶えた。
「……ッ、……ィ、ア…ッッ!!」
「凄いな、そんなに嬉しいのか?キュウキュウ締め付けて絡みついてくるぞ」
 クスクスと笑いながら言えば(ジャン)がポロポロと涙を零す。一言も発せず、何の抵抗もないまま(ジャン)は俺に揺さぶられていた。
(ジャン)……(ジャン)……」
 愛しくて愛しくてたまらない。こんな風に自分が誰かを愛することが出来るなんて、考えてみたこともなかった。
「好きだ……お前の全てを俺にくれ、体も……心も」
「……ース…っ」
 俺はねじ込むように最奥へ楔を突き挿れると、(ジャン)の中へ俺の想いを叩きつけた。


真栖(マース)……(ジャン)の具合はどう?」
 (ジャン)の為のミルクリゾットを使用人が作る間、厨房の入口に寄りかかって待っていると背後から躊躇いがちな声がかかる。肩越しに振り向けば雀鈴(ジャクリーン)が胸元で手を握り締めて立っていた。
雀鈴(ジャクリーン)
(ジャン)、少しはよくなったの?」
 そう聞かれて俺は寝室のベッドに横たわる(ジャン)の姿を思い浮かべる。強引なセックスは(ジャン)の体調を悪くするばかりで、ぐったりとベッドに沈み込む(ジャン)の熱は朝より高くなってた。
「そんなに簡単に治るようなら看病の必要もないだろう?」
 冷たい口調でそう言えば雀鈴(ジャクリーン)は胸元の手をギュッと握り締める。ほんの少し躊躇って、それから口を開いた。
「あの……あのね、真栖(マース)。ずっと看病してるのも大変でしょう?今夜は私が看病するわ。だから真栖(マース)は少し休んで───」
「お前は一切近づくなと言ったのを覚えてないのか?」
 雀鈴(ジャクリーン)の言葉を遮って俺は言う。驚いたように目を見開く雀鈴(ジャクリーン)に俺は続けた。
(ジャン)の看病は俺がする。お前が看病したのでは良くなるものもよくならん」
「そんな…ッ、酷いわ!」
「普段のお前の(ジャン)への態度を考えたことがあるのか?雀鈴(ジャクリーン)
 そう尋ねられて一瞬黙り込んだ雀鈴(ジャクリーン)がクシャリと顔を歪める。
「だって…だってそれは……ッ」
 吐き出すようにそう言ったもののそれ以上は言えずに、雀鈴(ジャクリーン)はクルリと背を向けて走り去ってしまった。
「まったく……」
 うんざりとため息を吐いた時、丁度リゾットが出来上がり、俺はトレイを手に(ジャン)が待つ部屋に戻った。


 部屋に戻り俺は扉に鍵をかけると(ジャン)が眠るベッドに近づく。トレイをベッド脇のテーブルに置き、(ジャン)の耳元に唇を寄せた。
(ジャン)
 何度か繰り返し呼ぶと(ジャン)がゆっくりと目を開ける。俺がすぐ側から覗き込んでいることに気づいた(ジャン)がギクリと体を強張らせるのに構わず、背中に手を当てて体を起こしてやった。
「リゾットを作らせた。少し食べろ」
真栖(マース)……」
 背中の後ろにクッションを入れてやり、椅子を引いてきて側に腰掛ける。リゾットの皿を手に取れば(ジャン)が不安げに俺を見つめた。
「食え」
 俺はスプーンでリゾットを掬って(ジャン)の口元に運ぶ。おずおずと開く唇にスプーンを含ませリゾットを食べさせた。
「もういいっス」
 半分ほど食べたところで(ジャン)が言う。本当はもう少し食べさせたかったが首を振る(ジャン)に、俺は一つため息をついて皿をテーブルに置いた。そのまま俯く(ジャン)の顔をなにも言わずに見つめる。少しして(ジャン)が俯いたまま口を開いた。
「判らないっス。どうして真栖(マース)がオレにこんなことすんのか」
「愛していると言わなかったか?」
雀鈴(ジャクリーン)がいるのに?!アンタがここに来たのは雀鈴(ジャクリーン)との結婚を許して貰うためっしょ?」
「何度も言わせるな、雀鈴(ジャクリーン)のことはもう愛していない」
 そうきっぱりと言えば(ジャン)が弾かれたように顔を上げる。その綺麗な空色に引き寄せられるように俺は(ジャン)の頬に手を伸ばした。
「何故だろうな。お前と雀鈴(ジャクリーン)は本当にそっくりだ。それでいて全然違う。お前の髪は太陽の光を集めて輝いているのに雀鈴(ジャクリーン)のは金メッキの光でしかない。お前の瞳は大空の輝きを映して澄み切っているのに雀鈴(ジャクリーン)のはまるで澱んだ水の色だ」
「…………雀鈴(ジャクリーン)を愛してないなら、結婚する気がないならアンタはここから出ていくべきっス」
 (ジャン)は俺の手を振り払って言う。
雀鈴(ジャクリーン)からアンタの話を聞くのは楽しかった。兄さんが出来るんだと思ったらとっても嬉しくて……。でも、アンタがもう雀鈴(ジャクリーン)を愛してないと言うなら、今すぐここから出てって下さい」
(ジャン)
「出てけ…ッ、オレにこれ以上触んないでッ」
 (ジャン)はそう言って引き寄せたブランケットを抱き締める。全身でオレを拒絶する(ジャン)に、怒りにも似た感情が沸き上がった。
「何故だ?俺はお前が好きなんだッ」
「オレの気持ちは?雀鈴(ジャクリーン)の気持ちは?アンタ、大事な事忘れてるよ!」
「俺が嫌いか?(ジャン)
 そう尋ねれば空色の瞳が見開かれる。(ジャン)は俺を真っ直ぐに見て言った。
「今のアンタは好きじゃないっス」
「ッッ!!」
 その言葉を聞いた途端、俺の中で何かが弾ける。次の瞬間、俺は(ジャン)に飛びかかっていた。


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