レヴィアタンの焔  第三十八章


 重なる唇を受け止めてハボックは荒い息を吐く。いつしかその腕はロイの背中に回されて、二人はきつく抱き締めあっていた。何度も繰り返される口づけが漸く終わり、ロイの唇がハボックの首筋を辿り、その熱い手のひらが引き締まった体をまさぐり始めて、ハボックは慌ててロイを押し戻した。
「ちょっと、タンマっ!待って、大佐っ!!」
 突然ジタバタと暴れ出したハボックにロイは顔を顰める。ハボックを上から見下ろして言った。
「なんだ、今更。やっぱり今日はナシ、とか言っても聞かんからな」
「いや、そうじゃなくて…」
 ハボックはのし掛かって来る男を赤い顔で見上げる。なにやら言いづらそうにしていたが、ロイに睨まれて口を開いた。
「なんでオレが下なのかなぁって」
「は?そんなの決まってるだろう、可愛いからだ!」
 あまりにきっぱりと告げられた理由にハボックはポカンとする。次の瞬間真っ赤になって暴れながら怒鳴った。
「なんスか、それっ!!それ言うならアンタの方が美人でしょっ!!アンタが下になってくださいよっ!!」
「馬鹿言え、私のどこが美人だと言うんだ。私のような人間は美男子というんだ」
 わかったか、と偉そうに言うロイにハボックは言う。
「ああ、はいはい。んじゃ、100歩譲ってアンタのことは美男子って言うとして」
「なんだその、嫌そうな言い方は」
「オレの方がアンタよりデカイんだから普通はオレが上でしょ?」
 言った言葉を綺麗に無視されてロイは顔を顰めたが、ハボックの言葉に更に眉間の皺を深くして言った。
「それを言うなら私の方がお前より階級が上だ」
「そりゃそうっスけど、オレ、今まで抱かれる立場になったこと、ないっスもん」
「あったら赦さん」
「いやだから、そういう事じゃなくてっ」
 何となく会話が噛み合わない事に若干疲れを感じてハボックはため息をつく。そんなハボックをじっと見つめてロイは言った。
「要はお前が私を抱きたいと言いたいんだろう?」
「あ、そう。そうっス。オレも男ですし」
 抱く立場の方がいいなぁ、とロイの事を伺うように言うハボックにロイはニヤリと笑う。
「生憎だったな。私も挿れられるより挿れる方がいい」
「な…っ」
 露骨な言葉にハボックの頬に朱が差す。ロイは紅く染まったハボックの頬を撫でて言った。
「四の五の抜かすな。これ以上焦らされたら何をするか判らんぞ。さっさとお前を寄越せ、ハボック」
 頭の上からつま先まで全部、と囁くロイにハボックは口をパクパクさせる。腕で顔を覆うとため息混じりに言った。
「も、ホント勝手なんだから…」
「ハボック」
 苛立ちを滲ませるロイの声にハボックは腕の隙間からロイの顔を見上げる。
「アンタがオレのものになるって言うなら、オレが抱かれるんでもいいっス」
 そう言って見上げてくる空色の瞳にロイは笑った。
「勿論だ。私の全てはお前のものだ、ハボック」
「…オレの全部もアンタのものっスよ」
 小さな声でそう囁くハボックにロイはゆっくりと体を重ねていく。そのロイの耳に「でも」と呟くハボックの声が聞こえる。
「優しくしてくださいね」
「善処しよう」
 にんまりと笑って言うロイに。
「ひでぇ」
 ため息混じりに言ってハボックは目を閉じた。

「たいさ…、あのっ」
「なんだ?」
 とりあえずどっちがどうするかを決めた途端、楽しげにハボックの服を脱がせ始めたロイにハボックが言う。シャツを脱がされズボンに手がかけられたところで、ロイの手をがっちり押さえてハボックが言った。
「灯り!あかり消してくださいっ!」
「何故?」
「何故って……恥ずかしいからに決まってんでしょっ」
「私は別に恥ずかしくないぞ」
 そう言って無造作に下着ごとズボンを引きずり下ろそうとするロイにハボックは慌てる。
「オレは恥ずかしいんですってばっ」
「うるさい奴だな。灯りを消したらよく見えんだろうが」
「見えなくていいんですっ!」
 とんでもないことを言うロイの腕から逃れようとハボックはもがいたが、ロイは難なくハボックを押さえ込むと下着ごとズボンを剥ぎ取ってしまう。
「やだあっ!!」
 煌々とした灯りの下に曝け出されてハボックは悲鳴を上げて身を捩る。ロイはハボックの体を押さえ込むと囁いた。
「見せろ、ハボック。お前の全部は私のものなのだろう?」
 そう囁けば羞恥に潤んだ瞳でハボックはロイを見上げて言う。
「だったら大佐も脱いでください。オレばっかり恥ずかしいの、ズルイっス」
 目尻を染めて言うハボックにロイはクスリと笑うと身を起こした。手早く脱ぎ捨てれば軍人らしく鍛えられた体を目にしてハボックは益々顔を紅くする。
「どうした?」
「や、なんか恥ずかしいっていうか」
「自分が脱がされるのも私が脱ぐのも恥ずかしいのか。わがままな奴だな」
「暗けりゃ恥ずかしくないんスよ」
 ボソリとそう文句を言えばロイがニヤリと笑った。
「慣れろ。出ないといつまで立っても先に進まん」
「ホント、アンタって勝手」
 ハボックはそうぼやくと腕を伸ばしてロイを引き寄せる。唇を合わせてくるハボックにロイは目を細めた。
「なんだ、急に積極的になったな」
「早く訳わかんなくなった方がいいかなって」
 溺れちゃった方が恥ずかしくない、とキスの合間に言うハボックにロイは低く笑う。
「そう言うことなら任せておけ」
 そう言って肌をまさぐり出すロイに「失敗したかも」と思うハボックだった。

「んっ…あ、たいさっ」
 唇を離れたロイのそれがハボックの耳を甘く噛み、舌先が中に差し込まれる。ぬちゃりとしたその濡れた感触にハボックはぶるりと身を震わせた。
「ん、は、あっ…!」
「ハボック…」
 濡れた舌先と共に低い囁きを吹き込まれてハボック体が大きく震える。ギュッと腕を掴むハボックの手に力が入るのが感じられてロイは低く笑った。
「アンタの声って、すげぇクル…っ」
「そうか?お前がこんなに耳が弱いとは知らなかったぞ」
 ロイはそう言うと立ち上がり始めているハボックの楔を膝で押し上げる。ハボックは目尻を染めてロイを睨むと言った。
「オレだって知らなかったっスよ」
「そうなのか?じゃあ他にもお前の知らない事を探してやろう」
 ロイはそう囁いて唇を滑らせていく。首筋を辿り肩や腕を辿る間にその白い肌に紅い印を刻むのは忘れなかった。印を刻む度ピクピクと震える肌にロイはうっとりと笑う。そうして刻んだ印よりも尚色鮮やかに胸を彩る飾りを目にしてロイは囁いた。
「ずいぶんと旨そうだ」
 そう言ってロイはぷくりと立ち上がった胸の飾りに舌を這わせる。そうすればピクリと震えるハボックにロイは聞いた。
「感じるのか?」
「よく判んないっス…」
 女性とのセックスで相手のそれに触ったことはあるが触られた事などない。そこが感じるポイントなのかどうかなど、ハボックに判るはずもなかった。
「フン、だったら少し遊んでみるか」
 ロイは楽しそうに言うと紅く色づく飾りを捏ね回す。その弾力を楽しみながら摘んだり押し潰したりすればハボックの体が小刻みに震えた。
「あ…なんかムズムズする…」
 ロイが捏ね回すたびもどかしい刺激が背筋を走る。それが快感なのかただくすぐったいだけなのかよく判らず、ハボックは緩く首を振った。それを見ていたロイは指で弄っていた飾りを唇に含む。強く吸い上げ、甘く噛み、舌先で嬲ればハボックは大きく体を跳ね上げた。
「ハボック…」
 乳首を含んだまま名を呼べばハボックの体が震える。ちゅぱちゅぱと音を立てて吸い上げながらロイは言った。
「いいのか?」
「判んね…ぇっ、や、アッ、うそっ」
 何がうそなんだかと、ハボックが口走った言葉にクスリと笑いながらロイはそこばかり執拗に責め立てる。
「あ…っ、も、そこ、ヤダっ」
 ついに泣き言を言い出したハボックにロイは言った。
「嫌って事もないだろう?少なくとも悪くはないようだが」
 そう言ってハボックの脚の間にねじ込んだ体を使ってハボックの脚を押し開く。そうすればさっきよりも立ち上がり先走りを垂れ流し始めた楔が曝されてハボックは顔を赤らめた。
「イイんだろう?」
 そう尋ねればハボックが曖昧に頷く。
「たぶん…」
「こんなにしておいてたぶんも何もないんじゃないのか?」
「だって初めてなんスもん。よく判んねぇ…」
 困ったように言うハボックにロイはにんまりと笑った。
「だったらよく判るところに聞いてみるか?」
 そう言ってロイは先走りを零すハボックの楔を握り締めた。


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