狂愛  第六章


 ポロポロと涙を零すハボックの体からロイはズルリと楔を引き抜く。零れる涙を唇で拭ってやりながら言った。
「ほら、さっさと後始末しないとだろう?それともこのままブレダ少尉に入ってきて貰うか?」
 そう言えばギョッとするハボックにロイはクスクスと笑う。ショックと疲労ですぐには動けないでいるハボックに向かってロイは言った。
「後始末などできないようだな。ブレダ少尉にやって貰うか」
「やめてっ!」
 言った途端、返ってくる悲鳴のような声にロイはゾクゾクする。力が入らずロイの足下にぺたんと座り込んだハボックにロイは言った。
「それが嫌ならさっさと始末しろ。お前が撒き散らしたんだからな。舐めて綺麗にするんだ」
「な…ん……っ」
「ああ、床より先にこっちだな。お前のイヤラシい穴に突っ込んだら汚れてしまった。舐めて綺麗にしてくれ」
 ロイはそう言って自分の楔を指さす。己が吐き出した白濁とハボックの体液で汚れたそれを突き出されて、ハボックは泣きそうな顔でロイを見上げたが、這うようにしてロイに身を寄せると、言われるままにロイの楔に舌を這わせた。
「ん……ふ、ぁ………」
 一心に舌を絡ませるハボックをロイは食い入るように見つめる。暫くして「もういい」と言うようにハボックの頭を押しやって言った。
「じゃあ、次は床だ。綺麗にするんだぞ。でないとここで何をしていたか、ブレダ少尉にバレてしまうからな」
 意地悪く言えばハボックの体が震える。ハボックは床に這い蹲ると自分が吐き出した白濁を必死に舐めとった。眉間に皺を寄せ、涙を浮かべながらも必死に舐め続けるハボックをじっと見ていたロイは、立ち上がってハボックの後ろに回ると片膝をつく。剥き出しにされたままの白い双丘に手を這わせて言った。
「入れたままだと腹を壊すからな。どれ、こっちの後始末は私がしてやろう」
「えっ?」
 言って双丘の狭間に手を滑らせるロイを、ハボックが肩越しに見上げる。不安そうに見つめてくる空色の瞳に優しく微笑んで、ロイはツプリと指を蕾に突き入れた。
「ヒッ!」
 ビクッと震えるハボックの蕾をグチグチとかき回す。そうすれば震えながら蹲るハボックにロイは言った。
「ほら、何をしている。早く綺麗にするんだ」
 そう言いながらもかき回し続ければ、注ぎ込んだものが蕾から溢れてくる。ハボックの脚を伝い床に零れた白濁を見て、ロイは言った。
「ああ、零れてしまったな。ハボック、こっちも綺麗にしてくれ」
「たいさ…ッ」
 蹲ったままハボックはロイを見上げる。ヒクッとしゃくりあげるハボックは妙に幼げで、ロイはハボックの頬を両手で挟んでその金髪に口づけてやりながら言った。
「お前の中に入れてやった私のものだぞ。それを雑巾で拭き取って平気なのか?ハボック」
「…ッ」
 そう囁けばまん丸に見開く空色の瞳がたまらない。促すようにロイが頷けば、ハボックはおずおずと新たに零れた白濁に舌を這わせた。
「ん………ん……」
 甘く鼻を鳴らして懸命に床を舐めるハボックの楔に目をやれば緩く立ち上がっている。ロイはハボックの蕾の表面を柔々と弄りながら言った。
「なんだ、興奮してきたのか?そんなに私のものは旨いか?ハボック」
 そう聞かれてハボックは何も言わずにギュッと目を瞑る。そのまま床を舐め続けるハボックにロイはムッとして金色の髪を鷲掴んだ。
「旨いか、と聞いてるんだ、ハボック」
「………旨いっス…」
 うっすらと目を開けてそう囁くハボックにロイは満足げに笑う。ロイは掴んだ金髪から手を離して撫でてやりながら言った。
「そうか、だったら後でまたたっぷり飲ませてやるからな」
「たいさ……」
 縋るように見上げてくる空色の瞳に、ロイはうっとりと笑ったのだった。


「お」
 漸く開いた扉にブレダは腰を上げる。出てきたのがロイではなくてハボックだった事に意外そうに目を瞠った。
「ハボ、お前中に居たのか」
「うん……大佐に言われて口述筆記してた」
「へぇ、珍しい」
 ブレダはそう言ってのろのろと司令室を出ていくハボックを見送る。だが、すぐに切り替えると待っていたグリーンを促して執務室に入っていった。


 司令室を出たハボックは俯いたままのろのろと歩いていく。少し行ったところにある、あまり使われていない小さな会議室の扉を開くと中に滑り込んだ。カーテンをひかれたままで薄暗い会議室に置かれたソファーの上に倒れるようにして座り込む。そのままコトンと座面に体を倒してため息をついた。
 好きだとロイに打ち明けてから、一体どれだけこの身にロイの欲を受け入れただろう。最初は苦痛しかなかったそれが、まだほとんど日が経っていないのにもかかわらず今では例えようもないほどの悦楽をハボックにもたらしていた。ロイを好きであればあるほど、その悦楽はハボックを蕩けさせ、縛ってしまう。例えロイがただ欲を満たす為だけに自分を抱いていると判っていても、ハボックにはロイを拒むことができなかった。
「たいさ……」
 もし自分がちょっとでも拒めば、ロイはすぐ自分を捨てて今まで通り綺麗な女性とデートを重ねるだろう。
「やだ……そんなの…ッ」
 他の誰にもロイをとられたくない。ずっと自分は男だからと見ていることしか出来なかったのだ。例えどんな形であれ自分を見てくれるロイを失いたくなくて、ハボックは熱く疼く体を抱き締めて嗚咽を零した。


「ハボック、車を回せ」
「えっ、あの、すみません、まだ書類が…」
 執務室から出てくるなりロイが言う。あのまま会議室で寝込んでしまった為、本日中に処理しなければならない書類を抱えてハボックは慌てた。
「俺が運転しましょうか?」
 困った様子のハボックを見てブレダが口を挟む。ロイはブレダの方を見もせずに言った。
「私はハボックに言ってるんだ」
 そう言って苛立たしげに見つめてくる黒い瞳にハボックは唇を噛む。ブレダはそんなハボックを見つめて手を差し出した。
「俺がその書類やっといてやるから寄越せ」
「ブレダ」
 そう言われてホッとしたような顔をするハボックと、安心させるように頷くブレダを見ていたロイは顔を歪める。ブレダに書類を渡そうとするハボックの手をパンッと叩いて言った。
「甘ったれるな。自分の仕事は自分でやれ、ハボック」
「じゃあ、あと15分でいいんで時間ください」
「ダメだ、今すぐ車を回せ」
 不機嫌そうに言うロイをハボックは困りきって見上げる。二人のやりとりを聞いていたブレダはたまらずに言った。
「大佐、いくらなんでも無茶苦茶です。書類は自分でやれ、車も出せ、って、ハボの体は一つなんですよ?」
「昼間ぐずぐずしているからそんなことになるんだろう?自業自得だ」
「大佐」
 ハボックが席を外していた理由をブレダは知らない。だが、それにしてもロイの言うことは余りに理不尽に聞こえて、ブレダはロイを睨んだ。暫く黙ったまま睨み合っていた二人だったが、先に目を逸らしたのはロイだった。
「ハボック、書類をブレダ少尉に渡せ」
「大佐」
 ロイはそう言うとさっさと司令室を出ていってしまう。ハボックがホッとしたように息を吐くのを見たブレダは、なんだか胸が痛んで眉を寄せた。ブレダが手を差し出せばハボックは小さく笑って書類を手渡した。
「ごめん、ブレダ」
「構わねぇよ。ほら、さっさと行け」
「うん」
 ハボック頷いて小さく笑う。立ち上がって司令室を出る直前もう一度振り向いて笑うハボックを、守ってやりたいという気持ちが不意に沸き上がってブレダは書類をじっと見つめた。
「アイツだっていい大人なんだから」
 子供の時と今では違う。そうは判っていても、最近のハボックを見ていると何故だか不安を感じずにはいられない。
「くそ、それもこれも全部大佐のせいだ」
 もともとロイにはマイペースで勝手な部分がある事はあったが、それはため息混じりに肩を竦めればすむ程度のものであったはずだ。
「ハボになんかあったら容赦しねぇ」
 ブレダはそう呟くと、眉間に深い皺を刻みながら書類をめくったのだった。


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