狂愛  第三章


 その後も散々ハボックを貪って、夜が明ける少し前に漸く眠りについた。2時間ほどしか休んでいなかったにもかかわらず、妙にすっきりと目覚めたロイはシャワーを浴びてくると、まだブランケットに潜り込んだままのハボックの顔を覗き込んだ。
「ハボック?」
 呼び声に答えてハボックがうっすらと目を開ける。泣きすぎて紅くなった目を見つめてロイは言った。
「大丈夫か?」
「…………動けねぇっス…」
 掠れた声でハボックは言う。初めて男に抱かれた体は鉛のように重くて、指一本動かすのも億劫だった。
「痛むのか?」
「…少し…」
 傷つきこそしなかったものの、初めての体に繰り返しの挿入はきつかった。腫れ上がった蕾はまだロイを咥え込んでいるようで、ハボックは温度の高いため息をついて目を閉じる。ぐったりとしたハボックはロイの目にも流石に具合いが悪そうで、ロイは申し訳なさそうに目尻を下げた。
「すまなかった、加減が出来なくなってしまって」
 ロイはそう言ってハボックの頬を撫でる。額にかかる金髪を優しくかき上げて言った。
「今日はゆっくり休んでいろ。中尉には私から言っておく」
 そう言われてハボックは目を開けてロイを見る。ぼんやりと紗がが掛かったような空色の瞳にゾクリとして、ロイはハボックの耳元にきつく口づけた。
「後で何か食い物を届けさせるから、イイコに休んでいるんだぞ」
「……たいさ…っ」
 耳の中に吹き込むようにして低く囁けばハボックの体が大きく震える。一晩ですっかり覚えてしまったハボックの性感帯を刺激するように触れて、ロイは体を離すと言った。
「それじゃあ私は行ってくるよ。二人でサボる訳にはいかんからな」
「………」
 心細そうな顔で見上げてくるハボックの額に口づけてロイは部屋を出る。そうして身動きもままならないハボックを置き去りに司令部へと出かけてしまった。


 ロイが出かけてしまうとハボックはそっとため息をつく。啼き過ぎた喉が痛くて水が飲みたいと思ったが、体を起こすことが出来なかった。
「たいさ……」
 掠れた声でハボックは呟く。ずっと好きだった相手に抱かれはしたものの、ハボックの心は重く沈んでいた。
 ロイが自分を抱いたのはおそらくは単なる好奇心だろう。決して自分を好きだからなどではないのだ。そうは判っていても、抱いてくれている間だけはロイが自分を見つめ自分の事を考えていてくれると思えば、ハボックにはロイを拒むことは出来なかった。
「たいさ……たいさ……」
 悲しくて切なくて、ハボックはブランケットに潜り込んでただ涙を零し続けた。


「大佐、サインお願いします」
 そう言って差し出された書類をロイは受け取って目を通す。サインをしたためると机の向こうに立つ恰幅の良い部下に返した。
「大佐、夕べはハボのアパートに泊まったんでしょう?その後また二人で飲みでもしたんですか?」
 そう聞かれて不思議そうに見返せばブレダが続ける。
「いや、だって今日、体調不良で休みだっていうから。そんなに飲んでたかなと思ったんで」
 ロイはブレダの言葉に苦笑して言った。
「もともとあまり調子が良くなかったようだよ。酒を飲んでガックリきたんだろう」
「まあ、ずっと忙しかったですからね。それにしても」
 珍しい、とブレダは言う。
「昼休みにちょっと覗いてきますよ。一人だと食うもんも困るだろうし」
 そう言って執務室を出ていこうとするブレダをロイは慌てて引きとめた。
「いや、私が様子を見てくるよ。ちょっと忘れ物をしてきたし」
「あ、そうなんですか?俺が判れば取ってきますけど」
 ブレダに言われてロイは首を振る。
「どこに置いたか自分でもはっきり覚えてないんだ。なに、大した手間じゃない。自分で行ってくるさ。ハボックの世話もしてくるからちょっと遅くなるかもしれんが、中尉には上手く言っておいてくれ」
「そのままサボらないでくださいよ」
 冗談混じりに言うブレダを手を振って追い出すとロイは時計を見る。
「昼休みか……少しは元気になってるかな」
 ロイは熱に潤んだ空色の瞳を思い出してうっすらと笑う。急ぎの書類に手を伸ばすと、手早くサインを書き込んでいた。


 うつらうつらしていたハボックはカチャリと扉の開く音にうっすらと目を開ける。ベッドサイドに立つ男をぼんやりと見上げた。
「……いさ…?」
 ぽやんとして見上げてくる空色の瞳にロイはうっとりと笑う。ベッドの縁に腰掛けてハボックの頬に手を寄せた。
「どうだ?少しはよくなったか?」
 そう尋ねればハボックが数度瞬く。ハッと目を見開くと慌てて起きあがろうとした。
「あ」
 途端にふらりと傾ぐ体をロイは咄嗟に支える。熱を帯びた体をギュッと抱き締めて言った。
「大丈夫か?無理するな」
 耳元に吹き込むようにして言えばハボックがビクリと震える。ロイはそんなハボックを見て目を細めて言った。
「どうした?ハボック……」
 低く囁いてハボックの背に添えていた手を背骨に沿って這わせる。這わせた指で双丘の狭間をゾロリと撫で上げた。
「ヒッ」
 背を仰け反らせたハボックの手がロイの腕をギュッと掴む。ロイはその手に口づけるとゆっくりと腕に沿って舌を滑らせた。
「……ッ!」
 ビクビクと震える体を抱き込むようにしてロイはハボックをベッドに押し倒す。目を見開いて見上げてくるハボックにロイは言った。
「欲しいんだろう、ハボック」
 低く問いかければ空色の瞳がこれ以上ないほどに大きく見開かれる。否定も肯定も出来ないハボックの股間に手をやってロイはクスクスと笑った。
「もう濡れてるじゃないか」
 そう言って楔の先端をクニクニと捏ねる。確かにそこはすでに緩く立ち上がりうっすらと蜜を滲ませていた。
「違うッ」
「じゃあこれはどう言うことだ?」
 ロイはそう言って指先についた蜜をねちゃねちゃと弄ってみせる。その様にハボックは息を飲むと真っ赤になって唇を噛んだ。ロイは指先を濡らす熱を、堅く噛み締めたハボックの唇に塗り付ける。微かに首を振るハボックにロイは言った。
「まあ、ちょうど昼の時間だ。食い意地の張ったお前の孔が私を欲しがってるんじゃないかと思って来てみたんだが、やはりそうだったようだな」
 楽しそうに言えばハボックが必死に首を振る。ロイはハボックの中心に指を絡めるとゆっくりと扱きだした。
「たいさ…っ、やだッ」
 ハボックが悲鳴のような声でロイを呼ぶ。その声を心地よく聞きながらロイは言った。
「嫌じゃないだろう?もうこんなぐちゃぐちゃにして……。素直に欲しいと言ったらどうだ?」
 そう言いながら扱く手の動きを早めていく。ハボックはロイの腕を握り締めてふるふると首を振った。
「や……たいさ…ァ」
 弱々しくロイを呼んだハボックが胸を仰け反らせる。ギュッと目を閉じ唇を噛み締めたまま、ハボックはびゅるりと熱を吐き出した。
「……っっ、……ぁ…ッ」
 ハアハアと息を弾ませて涙ぐむハボックの顔をロイは食い入るように見つめる。
「……た…さ……ァ…」
 涙に濡れた瞳で見上げられれば余計に啼かせてやりたくなって、ロイは前をくつろげるとハボックの脚を抱え上げ、紅く腫れてヒクつく蕾に押し当てた。
「やだっ、やだぁ、たいさ…っ」
 ふるふると首を振るさまはロイの欲を煽るばかりだ。ロイは逃げようとしてもがく体を押さえつけて、押し当てた楔をグッと蕾に突き入れた。
「ヒイッ!」
 一晩中弄ばれたそこは既に緩く解けていて、ロイの楔を抵抗なく飲み込んでいく。夕べ見つけたハボックのイイ場所を突いてやれば、ハボックの唇から甘い悲鳴が上がった。
「ひゃあっ!…アアッ!!」
 突き上げる度ハボックの内壁が熱く絡みつき、楔をきゅうきゅうと締め付ける。酷使され過ぎて痛む入口と太い楔で熱い秘孔を犯される快楽に翻弄されて、ハボックは啼きながら悶えた。
「無理ィ…ッ!も、無理…ッ!」
「嘘を言うな。こんなにイヤラシく絡みついてくるクセに……モット、の間違いだろう?」
「ちが…ッ」
 ロイは弱々しくもがくハボックを激しく揺さぶりながら言う。ガツガツと何度か突き上げれば、ハボックが背を仰け反らせて果てた。
「アアアアアッッ!!」
 夕べから何度吐き出させられたか判らない。もう、だいぶ粘性もなくなってしまった熱がハボックの楔を辿り、激しく突き上げられる蕾へと零れてグチュグチュとイヤラシい音を立てた。
「たいさ……も、辛い………無理…ぃッ」
 そう言うハボックをロイはじっと見つめる。攻め立てる動きを止めずに言った。
「違うな、ハボック。もっと他に言うことがあるだろう…?」
 囁く様に言うロイは涙に濡れた瞳で見上げる。暫くじっと見つめていたが、やがて震える声で言った。
「出して…っ、大佐の、オレん中、出して…ッ」
「イイコだ、じゃあたっぷり飲ませてやろうな」
 ロイはそう言って笑うとハボックの脚を更に押し開きねじ込むようにして突き上げる。
「ヒィッ!アアッ、たい、さ…ッ!!」
「出すぞ、ハボック…っ」
 低く唸るように言ってロイは突き破るほどきつく最奥を突き上げる。それと同時に熱い飛沫をたっぷりと注ぎ込んだ。
「ア…ッ、……やあああんっっ!!」
 高い悲鳴を上げて背を仰け反らせたハボックは、体の内側を焼かれながら自身もまた熱を吐き出したのだった。


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