| 狂愛 第十章 |
| 「よくも……ッ!!」 怒りで体が震えて言葉にならない。ブレダはグッと拳を握り締めるとリビングの入口に立つロイに向かって殴りかかった。 「うおぉぉぉッッ!!」 渾身の力を込めてロイの顔を殴る。よけもせずにそれを受けたロイは、だがググッと踏ん張ってよろけもしなかった。殴られた拍子に切れた唇から滲んだ血を手の甲で拭ってロイはブレダを睨む。その強い黒曜石の輝きに負けじと睨み返してブレダは言った。 「見損ないましたよ、大佐。アンタがこんな事をする人だったなんて……ッッ」 「こんな事?どういう意味だ?私はただ、ハボックを抱いただけだ」 「抱いた?こういうのはレイプって言うんですよッ!!」 ブレダはそう怒鳴ってソファーに横たわるハボックを指さす。ギュッと唇を噛んで呻くように言った。 「権力を笠に部下をレイプするなんて……アンタはそんな事をするような人だと思ってなかったのにッ!」 実際軍の中には権力を笠に自分の部下を性欲のはけ口にする上官がいるのも事実だ。だが、ロイだけはそんな事をする筈がないと信じていただけに、ブレダは上官に裏切られた怒りと友人を傷つけられた怒りに二重に怒りを募らせていた。 「よくもオレの大事な友人にあんな事を…ッ」 食いしばった歯の間から絞り出すように言うブレダをロイは冷たい目で見つめる。「大事な友人」と言って怒りに身を震わせるブレダを見つめてロイは憎々しげに顔を歪めた。 「レイプ?人聞きの悪い事を言わないで貰いたいな。私たちの行為は合意の上だ」 「そんなわけないでしょうッ!」 平気な顔でそう言ってのけるロイをブレダは睨む。さっきの電話で聞いたハボックの泣き声が頭に木霊して言った。 「ハボの奴、泣いてた。泣いて何度もやめてくれって……。それを合意の上だなんて言うんですか、アンタはッ!」 「その通りだ」 怒りに震えた声で怒鳴った言葉にロイが平然と答える。ブレダはそんなロイを目を見開いて見つめて言った。 「恥知らずにも程があるでしょう?そこまで言うなら俺にだって考えがありますよ、大佐」 例え相手が上官だろうと、ましてや焔の錬金術師と謳われる英雄だとしても構わない。絶対に落とし前をつけてやるとブレダはロイを射殺さんばかりに睨みつけた。 どこか遠くで怒鳴る声が聞こえる。その声に引き上げられるようにゆっくりと意識を取り戻したハボックはぼんやりと天井を見上げる。そこがロイの家のリビングだと言うことに気づくと同時にロイ以外の誰かがいる事に気づいて視線を巡らせた。そうすればリビングの入口に立つロイとの間に恰幅のよい背中が見える。それがブレダのものだと気づいて、ハボックは僅かに体を震わせた。 「ブレダ……?」 掠れた声で呟くように言えば、その小さな声をしっかりと聞きとめたブレダが振り向く。ハボックが目を開けている事に気づくと、慌てて近寄ってきた。 「ハボっ!」 ブレダは叫んでハボックの側に跪く。ハボックの手を取ると顔を歪めて言った。 「もう大丈夫だ、なにも心配する事ねぇからな?」 「ブレダ……どうしてここに……?」 不思議そうに尋ねればブレダが答えるより先にロイが言った。 「少尉はさっきの電話でお前のことを心配してやってきたんだ。私がお前をレイプしたと思ってるそうだ」 「思ってるも何も事実でしょうッ?こんな酷いことして同意だなんてよくも恥ずかしげもなく…ッ」 ロイの言葉にブレダが声を荒げる。守るようにハボックの手を握る手に力を込めるブレダをハボックは見つめ、それからロイを見た。食い入るように自分たちを見つめる黒曜石の瞳の中に揺れる焔を見つけてハボックはうっすらと笑みを浮かべる。それからブレダの手を振り解き、その体を押し退けるようにして体を起こした。 「ハボック?」 傷つけられた体を労って心配そうにブレダがハボックを呼ぶ。だが、ハボックの瞳はブレダを通り越してロイをうっとりと見ていた。 「レイプなんかじゃないよ、ブレダ。オレが大佐に抱いてくれって強請ったんだ」 「え?」 「オレが大佐に抱いてって言ったんだよ」 うっとりと笑って言うハボックをブレダは目を見開いて見つめる。 「な……ん……な、に言って……」 信じられないと言うように見つめてくるブレダにハボックは笑った。 「だってオレ、大佐が好きなんだ。もうずっとずっと大佐の事が好きだった。好きで好きで、大佐の側にいる女の人達にいつも嫉妬してた。夜になれば毎晩大佐の事考えて、ベッドの中で自分の事慰めてた」 ハボックはそう言ってソファーから脚を下ろす。ゆっくりと立ち上がれば注がれた白濁が脚を伝って零れた。 「あ……ん……」 その感触にゾクリとしてハボックは甘い息を零す。それからゆっくりとロイに近づいて言った。 「たいさ……」 ハボックは囁いてロイの前に跪く。ロイの腰に腕を回して縋りつくと言った。 「好き……たいさ、好きっス……」 ロイを見上げて囁けば黒い瞳が食い入るようにハボックを見る。ハボックはうっとりと笑って言った。 「たいさ、オレのこと、抱いて?オレのことめちゃくちゃに犯して、オレん中にたいさの、いっぱい出してッ」 熱に浮かされたような声でそう囁きながらロイに縋りつくハボックを呆然として見ていたブレダはハッと我に返る。勢いよく立ち上がると二人に近寄り、ハボックの肩をグイと引いた。 「ハボっ!もう、そんな事しなくていいんだッ!こんな事許される筈がない、いくら上司だからって───」 「邪魔すんなよ、ブレダ」 言いかけた言葉を遮るようにしてハボックは言ってブレダの手を払いのける。熱に浮かされた空色の瞳で友人を睨んで言った。 「なにも知りもしないくせに大佐の事悪く言うな。オレが大佐に抱かれたくてしてんだよ、余計な口出ししないでくれっ」 そう言って睨みつけてくるハボックをブレダは呆然として見つめる。 「だって、お前……さっき電話で嫌だって泣きながら何度も……」 「そりゃ、セックスして喘いでる声、聞かれるのなんて恥ずかしいもの。あんなイヤラシい声、誰にも聞かれたくないよ」 ハボックは言って目尻を染めた。それからロイを見上げて言った。 「でも、大佐になら何されてもいい……どんな恥ずかしい事でも、大佐になら、オレ……」 そう言って見上げてくる空色をロイはじっと見つめる。それからハボックの顎を掴んで言った。 「なら、今ここでブレダ少尉の目の前で犯されても構わないと?」 「構わないっス……ううん、犯して欲しいっス」 「ハボっ!!」 信じられない言葉でロイに強請るハボックにブレダは目を剥く。なんとか思いとどまらせようとブレダはロイに縋りつくハボックの腕を掴んだ。 「もう、いい!もういいから、ハボック!これ以上バカなことを言うのはやめて───」 「バカなこと?好きな相手に抱いて欲しいっ思うのはバカなことなわけ?」 「ハ、ボ……」 ハボックは思い切りブレダの手を振り払ってブレダを睨む。息を飲んで見つめてくるブレダにフッと笑うとロイに向き直った。 「たいさ……早く、オレに……」 ハボックはそう言ってロイのボトムに手を伸ばすと前をくつろげる。ロイの楔を取り出すと愛しそうにその先端に口づけた。 「ん……すき……」 そう呟くと唇を開き楔をくわえ込む。ジュブジュブとイヤラシい音を立ててロイの楔をしゃぶった。 「ん……ふ、ぅん……ッ、んく……ん、ん………」 うっとりとした表情を浮かべてハボックはロイを育てていく。もう十分に質量を増したと思うと、唾液と先走りの蜜に濡れた楔に頬をこすりつけて言った。 「たいさ……欲し………早く、これでオレのこと…ッ」 「ハボック……」 何も言わずにハボックの好きにさせていたロイが欲に掠れた声でハボックを呼ぶ。その声に嬉しそうに目を細めるハボックをグイと引き上げると、その体を壁に押しつけた。そうして長い脚を高く持ち上げると双丘の狭間で期待に震える蕾に己を押しつける。そうして弛く解けたそこにグイと突き入れた。 「ヒアアアアアッッ!!」 ズブズブと押し入ってくる塊にハボックは嬌声を上げる。ロイの背に腕を回してしがみつくとあられもない声を上げ続けた。 「ヒャウッ!……ああんっ、たいさァ…ッ!イイっ!!もっと……もっと、シて…ッッ!!」 甘ったるい声で言いながらハボックは持ち上げられた脚を必死にロイに絡め、尻を振り立てる。ロイは縋りついてくるハボックを容赦なくガツガツと突き上げた。そうすれば一層高い悲鳴を上げてハボックが善がる。そこに自分達以外の誰かがいる事など忘れてしまったようにセックスに溺れる二人を、ブレダは呆然として見つめていたが、やがてよろよろとした足取りで扉から出ていく。遠くでバタンと扉の閉まる音が聞こえて、ロイはうっとりと笑った。 |
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