そのよん


「どうすっかなぁ……」
 ハボックが途方に暮れてそう呟いた時、机の上の電話がリンと鳴る。受話器を取ったフュリーが通話口を押さえながら言った。
「ハボック少尉、詰め所からですよ。演習の時間だって」
「あっ、忘れてたッ」
 ロイを拾ったことで演習の予定があったことをコロッと忘れていた。ハボックはギュッと軍服の袖を握り締める子供を見て言う。
「あのさ、オレ、これから演習行かなきゃなんスよね。悪いけどここで待っててくれる?」
 そう言って床に下ろそうとするが、ロイはハボックにしがみついて離れようとしない。ハボックが手を離しても尚、軍服に掴まってブランとぶら下がって離さないロイにハボックはため息をついた。
「ちょっと、いい加減離して───」
「演習とか言って私を放り出すつもりなんだろうッ」
 何とか離させようとすればそう怒鳴るロイにハボックは目を丸くする。睨み上げてくる黒い瞳にやれやれとため息をつくとしゃがみ込んで言った。
「あのね、演習があるのはホントっス。別にロイを放り出そうとか思って嘘ついてる訳じゃないから」
「だったら私も連れていけ」
「連れてけって……あぶねぇし」
「連れてけーーッ!!」
 キーッと叫ぶロイにハボックはほとほと困ってしまう。二人のやりとりを見ていたブレダが言った。
「連れていってやれば?隅っこにおいときゃ大丈夫だろ」
 本音を言えば犬なのか猫なのか判らないものを置いていかれるのはちょっぴり怖い。ブレダの気持ちにはまるで気づかずハボックはボリボリと頭を掻いて言った。
「仕方ない、じゃあ一緒に連れていきますけど、絶対にオレの言うこと聞くこと、いいっスね?」
「判った」
 指を一本目の前で立てられてロイはコクコクと頷く。神妙なその面もちにハボックは軽く首を振って立ち上がるとロイを抱え上げた。
「じゃあちょっと行ってくるわ」
「おう」
「いってらっしゃい」
 ハボックはひらひらと手を振るとロイを抱いて司令室を出ていった。


2009/12/02


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