そのにじゅういち


 晴れ渡る青空の下、男たちがツルハシを振るい土砂を取り除き、壊れた堤防を直していく。長くて辛い筈のその作業を軽口を叩き合いどこか楽しげにこなす様子を、ロイは木の枝に腰掛けて眺めていた。男たちの中に一際輝く金色の髪を見つけてロイは眩しそうに目を細める。ハボックは率先して自身もツルハシを振るいながら、作業全体に気を配り部下たちに話しかけていた。
「おい、キム、足下気をつけろよ」
「マイク、手、足りてんのか?足りなきゃサンダースのとこから回してもらえ」
「サンダース、お前んとこからマイクの……あ?なんだよ、仕方ねぇな。じゃあ、オレがやるわ」
 ハボックは身軽に部下達の間を動き回り、作業が円滑に進むようにする。部下達はハボックの指示を受けて作業を続ける間に代わる代わるロイのところへとやってきていた。
「ロイ、喉乾いただろう、ほら、これ飲んでいいぜ」
「ありがとう」
 ロイが差し出されたペットボトルを飲んでいれば他の隊員がやってくる。
「ほらこれ。クッキー貰ったから、ロイ、食っとけ」
「あ、チョコクッキー!」
 隊員が差し出した袋をロイが目を輝かせて受け取れば、別の隊員が小さなオレンジ色の花をつけた小枝を持ってきた。
「ロイ、金木犀が咲いてたぜ。枝が折れてたから貰ってきちまった」
「わあ、凄い」
 いつの間にかロイの周りに隊員達がわらわらと集まって、ロイの事を何の彼のと構っている。なんだかすっかりと和んでしまっていれば、ハボックがやってきて呆れたように言った。
「お前らなにやってんだ。あんまりのんびりしてっと今日中に終わんねぇぞ」
 そう言えば、やばいやばいと言いながら部下達が散っていく。ハボックはその背を見送ってやれやれとため息をつくと、手にクッキーやら金木犀の枝やらを持っているロイを見て言った。
「ロイ、みんなの働きぶりはどうだ?」
「うん、ちゃんと頑張ってる」
 ロイはクッキーを頬張りながら答える。笑みを浮かべるハボックを見てロイは続けた。
「でも、一番頑張ってるのはお前だ」
「へ?」
「お前がいるからみんな安心して作業してるんだ」
 そんな事を言い出すロイをハボックは目を丸くして見つめていたが、フッと笑みを浮かべてロイに手を伸ばす。
「よし、それじゃあ現場監督に作業の進捗状況を見回って貰おう」
 ハボックはそう言うとロイを肩車した。
「みんなに発破かけてくれるか?今日の予定がちゃんと終わるように」
「うん、任せろ!」
 肩越しに見上げて言うハボックに顔を輝かせてロイは答える。ハボックの肩の上で隊員達に元気よく声をかけるロイの長い尻尾が、嬉しそうにハボックの背で揺れていた。


2011/10/21


→ そのにじゅうに
そのにじゅう ←