そのに


 ハボックは中庭で見つけたそれを抱っこして司令部の廊下を歩いていく。そうすれば丁度向こうから歩いてきたブレダと一緒になった。
「おう、ハボ」
 ブレダはそう言って片手を上げる。それからハボックが抱いているものに気づいて眉を顰めた。
「お前、なにゴミなんて大事そうに抱いてんだよ」
 ブレダはそう言ってハボックが抱いているものを覗き込む。ゴミだとばかり思っていたそれと目が合って、ブレダはギョッとして跳びすさった。
「ゲッ?ゴミに目があるっ?!」
「私はゴミじゃないッ!ロイだッ!!」
 そう怒鳴りつけられてブレダはハボックを見る。ハボックは肩を竦めて答えた。
「中庭の水溜まりに落ちてたんだよ。そのままにしとくのも忍びなかったんで拾ってきた」
「これ、なに?」
 ブレダは怖々とそれに生えた耳をつつく。そうすればガーッと牙を剥かれて慌てて手を引っ込めた。
「私はロイだと言ってるだろうッ!!」
「……だとさ」
 ロイだと名乗るそれの言葉を引き継ぐようにしてハボックは言う。ブレダに向かって唸るロイを宥めるように背を撫でるとハボックは廊下を歩き出した。
「お前、落ち着いてんな。見たことあるのか?その……これ、…ロイ?」
 固有名詞なのか、それともこの生き物の総称なのか、ブレダも迷ったのだろう。自身なさげに言ってハボックを見る。ハボックは抱きついてくるロイの背を撫でながら言った。
「うんにゃ、見たことねぇよ。でもあそこに置いとけないし、中佐なら何か知ってるかなぁと思ってさ」
「中佐が?なんか面白がりそうなだけって気もするけどな」
 ブレダの言葉にハボックは困ったように眉を寄せる。あの上司にはそういった面があるのも確かだ。だが、他に聞けるような適当な人がいないのも事実で。
「まあ、取り敢えず聞いてみるわ」
 ハボックはそう言うと丁度辿り着いた司令室の扉に手を伸ばした。


2009/09/21


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