| そのいち |
| 「えーと」 ハボックは東方司令部の中庭で水溜りの中に座り込むそれを見つめてポリポリと頬を掻いた。雨上がりの庭で、滑って転んだのだろう、泥んこになったその生き物はパッと見には5、6歳の男の子に見えた。もし普通に男の子であったなら、こんなところに入ってきちゃダメだろ、と言ってつまみ出せばいいだけの話だ。だが、ハボックをしてそうさせなかったのはその生き物の頭とお尻にどう見ても猫の耳とシッポにしか見えないものがついていたからだった。 「えーと」 ハボックはどうしていいのか判らず、もう一度そう呟く。テロリスト相手であれば決して迷ったりしないのだが今回ばかりはどう対処していいのかさっぱり判らず、ハボックは座り込んでいるそれをしげしげと見つめた。すると。 「人のことをジロジロ見るなんて失礼なヤツだなっ!」 「おわっ、喋ったっ!」 ハボックの視線に耐えかねたのか、泥だらけのそれがハボックを睨みつけてそう言う。耳とシッポ以外は人と変わらないのだから喋って当然と言えばそうなのだが、いきなりの事に驚いたハボックがそう言えばそれはますます目を吊り上げて言った。 「喋るに決まってるだろうっ、私をなんだと思ってるんだ」 「なんだって言われても…判んないんスけど」 ハボックはボソリとそう呟くと腕を組む。 「中佐に聞けば判るかな」 ハボックはそう言うとそれの襟首を掴んで水溜りから引き上げた。 「こらっ!私は猫じゃないぞっ!苦しいじゃないかっ!」 「……猫じゃないんだ」 だったらなんなのだろうと思ったのが顔に出たのだろう、それは襟首をつかまれてぶら下がったままエラそうに腕を組んで答えた。 「私の名はロイだっ!」 それは固有名詞なのだろうか、それとも男の子に猫耳とシッポがついている生き物の総称なのだろうか。 判断がつきかねたもののそれでもハボックは「ロイね」と呟くとその生き物をダッコして司令室に向かったのだった。 2007/12/28 |
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