そのじゅう


 すっかりしょげかえってしまったロイを抱いてハボックは司令部の廊下を歩く。ショボンと俯くロイの顔を覗き込むようにしてハボックは言った。
「ロイは悪くないっスよ。条件反射なんスから」
「う……」
 そう優しく言われて泣きそうに顔を歪めるロイの頭をポンポンと叩いてハボックは続ける。
「司令室に戻るっスね。オレ、ちょっと書類書かなきゃならないんでその間いい子にして待ってて下さい」
「判った」
 ハボックの言葉にロイは今度こそと言うように頷いた。ハボックはたどり着いた扉を開くとロイを抱いたまま司令室に入った。
「あれ?早いですね、少尉」
 演習が終わるのはもう少し先だったはずだ。そう思いながら尋ねたフュリーはハボックの腕に抱かれるロイの姿に目を瞠った。
「その子、もしかして……」
「ん?ああ、ロイだよ」
 ハボックはそう言いながらロイをソファーに下ろす。目をきらきらと輝かせたフュリーが早速寄ってきてロイを見た。
「うわー、うわー、かっわいい!メチャクチャかわいいですねっ!」
 そう言われてロイがちょっと恥ずかしそうに顔を赤くする。そのとき丁度部屋に戻ってきたホークアイとブレダに向かってフュリーが言った。
「中尉!ロイですよ、かわいいでしょうっ?!」
 その声にホークアイがソファーにチョコンと座るロイを見る。ハボックの大きなTシャツをワンピースのように着ているロイに、ホークアイは目を丸くした。暫くの間じっと見つめていたホークアイは、急いで自席に戻ると抽斗の中からポットをとり出す。すぐにロイのところへ戻ってくると、ふたを開けて差し出した。
「飴は好き?」
 ニコニコと笑うホークアイにロイも笑って頷く。ポットから飴を取り出して「ありがとう」とにーっこりと笑えば。
「……カワイイっ!」
 キュッと抱き締められてロイは目を白黒させる。フュリーと二人大騒ぎしているホークアイを意外そうに見つめてハボックが言った。
「うわー、あの中尉が!信じらんねぇな、ブレダ」
 さっきまで近くにいた筈の友人に言ったが返事がない。あれ?と思って司令室を見渡せば一番遠い壁に張り付くブレダに目を丸くした。
「こっちはこっちで極端だな」
 ハボックが呆れたように言った時。
「なに騒いでんのよ、お前ら」
 声のする方を振り向けば、眼鏡の奥の瞳に面白そうな光をたたえたヒューズが立っていたのだった。


2010/04/27


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