| Jealousy cookies |
| その後司令室に戻りブレダたちにもクッキーを返す。そうすればブレダが呆れたようにロイを見て言った。 「考えすぎですよ。アイツがクッキー配るのなんて、本当に感謝の気持ちを表す以外の何物でもないんですから」 「そ、そうは言ってもだなっ」 「あんなに大佐のこと好きなのに、その気持ちを疑うようなことしたら可哀想ですぜ?」 「う……ッ」 あまりに尤もなブレダの台詞にロイは言葉に詰まる。そんなロイにブレダは苦笑して言った。 「ハボックは今中尉のところですか?まあ、頑張って取り戻してください」 「ああ、そうするよ。……ハボックが戻る気があるのか不安だがな」 「そんなの、戻りたいに決まってるじゃないですか」 そんなことも判らないのかと呆れたようにブレダが言う。 「そうだな……そうだと信じて行ってくるよ」 「いってらっしゃい」 笑って見送ってくれるブレダたちに手を挙げて返して、ロイはハボックを取り戻すために司令室を出た。 「はい、どうぞ」 「ありがとうございます、中尉」 ソファーに座ったハボックは差し出されたトレイの上からカップを受け取って礼を言う。自分のカップを手に隣に腰を下ろすホークアイにハボックは言った。 「副官と護衛官と二人してこんなとこいていいんスかね?」 「いいのよ。一度死んだ方が目も覚めるでしょうし」 澄ましてそんなことを言うホークアイにハボックはプッと吹き出す。 「死んだら目ぇ覚めないっスよ」 クスクスと笑いながらコーヒーを啜るハボックの横顔をホークアイは見つめる。自分とは少し色合いの違う金髪に手を伸ばしてそっと撫でながら言った。 「どうして大佐がいいの?」 「あれ?中尉だっていろんな人の中から大佐を選んで側にいるんでしょ?」 そう返されてホークアイは形のよい眉を寄せる。 「軍人としてならついていきたいと思うわ。でも男としてはどうかしら」 「大佐はとっても優しいし、誠実っスよ」 「でもヤキモチ妬きで貴方のことを信用してないわ」 ホークアイはハボックの髪を撫でながら言う。 「貴方のことを信用してたらあんなことしないでしょう?」 「それはまあ、ちょっとやりすぎとは思うっスけど……。でも、あれだけの熱意でもってオレのこと好きでいてくれるのかなぁって思うとちょっと嬉しいっていうか」 ハボックが配ったクッキーを全て回収して回ったのだ。その熱意たるや素晴らしいと言えるのではないだろうか。 「末期ね」 フフ、といかにも嬉しそうにロイのことを話すハボックに、ホークアイはため息をついて金髪を撫でていた手を離す。呆れたようなため息と共にコーヒーを口にするホークアイを見つめてハボックは言った。 「ありがとうございます、中尉」 「まだ判らないわよ。あのアンポンタンがやることやって来なかったら貴方を返す気はないもの」 「中尉ってば」 半ば本気を感じさせる言葉にハボックはクスクスと笑う。そんなハボックを見つめて、ホークアイは言った。 「いつでも来ていいのよ。私は本気だから」 「はい、覚えておきます」 言って笑みを浮かべるハボックにホークアイは手を伸ばす。金色の頭の後ろに手を回して引き寄せ、唇を重ねようとした丁度その時、ドンドンとアパートの扉を叩く音がした。 ロイは司令部から程近いところにあるホークアイのアパートへ向かう。通りから二階の窓をしばらくの間見つめていたが、やがて意を決したように階段へと足を向けた。二階に上がり一番端の部屋の前に立つ。目を瞑り大きく息を吸って吐き出すと、ロイは目を開けて目の前の扉を真っ直ぐに見つめた。ギュッと握り締めた拳を目の高さまで持ち上げると、ドンドンと叩いて出てくるのを待った。 扉が開くまでの間が永遠のように感じる。敵を前にしてもこれほど緊張したことはないと言うほどの緊張に耐えられなくなりそうになった時、カチッと鍵が開く音がして扉が開いた。 「やあ、中尉」 ロイは無表情に見つめてくる鳶色を見返して口を開く。 「ハボックを返して貰いに来たよ」 「少尉を返すわけには参りません。お帰りください、大佐」 ホークアイはそれだけ言うと扉を閉めようとする。ロイは扉が閉まる寸前足を挟み込むと、出来た隙間に手をかけ中に向かって声を張り上げた。 「みんなから取り上げたクッキーは全部ちゃんと返してきた!すまないことをしたと詫びもした!ハボック!お前の気持ちを台無しにするようなことをして本当にすまなかった!どうか私と一緒に帰ってくれないか?」 そう言ってロイは暫く待つ。だが、部屋の奥からはなんの答えもなく、縋るように隙間から奥を見つめるロイにホークアイが言った。 「少尉には帰るつもりはないようですわね。どうぞお帰りください、大佐」 「中尉」 帰れと繰り返すホークアイをロイは見つめる。ギュッと唇を噛むともう一度部屋の奥へと視線を向けた。 「ハボック!どうすれば赦して貰える?お前が赦してくれるなら、私と一緒に帰ってくれるならなんでもする!なにもかも全部捨てろと言うならそうする!お前さえいてくれれば私はなにもいらないんだッ!」 ハボック!と、ロイは何度も奥に向かって呼びかける。だが一向に何の答えも返ってはこず、顔を歪めるロイにホークアイが言った。 「もう少尉の気持ちはお判りになったでしょう?なにを言っても無駄です。もうお帰りになってください」 そう言われて扉を掴むロイの手が弛む。ホークアイはロイの体を押しやるとパタンと扉を閉めた。 → next prev ← |