Crush! 


「大佐、書類にサインお願いします」
 ハボックは執務室の扉をノックして開けると、大振りな机に向かうロイに書類を差し出す。さっと目を通してサインを認めた書類をハボックに差し出しながらロイは言った。
「ハボック、その……ちょっと時間をとれんか?後でいいから」
 ほんの少し躊躇うようにそう尋ねてくるロイにハボックは目を瞠る。いつチョコを渡そうかと密かに悩んでいたハボックとしては、これ幸いとばかりに頷いた。
「いいっスよ。大佐の都合のいい時間、教えてください」
 そう言われてロイはほんの少し考える。ハボックにフラレた後はとても仕事などする気にはなれないだろうと思いながらロイは言った。
「それなら、七時────でどうだ?」
 そんな時間を提案したのは、ハボックが自分以外の誰かと過ごす時間を遅らせたかったからで、伺うように見上げればハボックが答えた。
「いいっスよ、じゃあ七時に」
 にっこり笑うとハボックは書類を受け取って出ていく。その背を見送ったロイは、引き出しを開けてそこにしまったチョコを見つめてそっとため息をついた。


(よかった、渡す時間とれて)
 バレンタイン当日。もしかしたら早々に帰ってしまうかもといつ渡せばいいのだろうと迷っていれば、ロイの方で何か用事があるらしい。なんの用かは判らないが、その後にチョコを渡す時間を貰うくらい許して貰えるだろう。
(七時、か。デートまでの時間潰しかな)
 もしかしたらもう、誰かからチョコレートを受け取ったのかもしれない。
(いいんだ、オレの気持ち伝えられれば)
 チクリと胸に走った痛みをこらえてハボックは思う。
「さあ、早いとこ仕事片づけちゃおう」
 ハボックは殊更元気に言って、書類に手を伸ばした。


「それでは今日はこれで失礼します」
「ああ、お疲れさま」
 ホークアイが言うのにロイは笑みを浮かべて答える。パタンと扉が閉じると、ロイは顔に貼り付けた笑みを消して銀時計を見た。
(そろそろ七時)
 とうとうこの時がやってきたと思えば、流石のロイも心穏やかではいられなくなる。今日が過ぎればハボックとの関係も変わってしまうと、自分で決めた事とはいえロイは沸き上がる後悔に唇を噛み締めた。
(もう決めた事だ)
 今更後に引くことは出来ない。ロイは引き出しから取り出したチョコをポケットにしまうとそっと目を閉じた。


(時間だ)
 壁の時計を見上げたハボックは、時計の長針があと三十秒ほどでかっきり七時を指すのを確認してゆっくりと立ち上がる。バレンタインの夜、誰もがそれぞれに楽しい時間を過ごそうと帰ってしまい、司令室に残っているのはハボックだけになっていた。ハボックは紙袋の中からチョコの包みを取り出してじっと見つめる。これを渡せばもう、今までのような気の置けない関係ではいられなくなってしまうのだと、ハボックは小さく体を震わせた。
(でももう決めたんだ)
 ハボックはキュッと唇を噛むとゆっくりと執務室の扉に向かった。


「失礼します」
 コンコンとノックの音に続いてハボックの声がする。カチャリと扉が開く音に、ロイは閉じていた目を開けた。
「もう、仕事終わったんスか?」
「ああ。お前は?」
「オレももう終わったっス」
 ハボックがそう答えた後はお互いに黙り込む。カチカチと棚の時計が時を刻む音だけが響く執務室、互いに口を利けずにいれば俄に高まる緊張にロイがガタンと椅子を蹴立てて立ち上がった。カッと靴音を立てて近づいてくるロイに、ハボックがハッとして俯けていた目を上げた。
「ハボック」
「大佐」
 ピンと張り詰めた空気。もう相手にチョコを渡す事以外考えられなくて────。
「「好きだッ(ですッ)」」
 ほぼ同時に言い合ってチョコを差し出す。受け取って欲しいと叶わぬ願いを込めて互いに下げた頭を、次の瞬間二人はガバッと上げた。
「「えッ?!」」
 驚いて見つめあう互いの手にチョコの包み。暫し呆然と見つめ合った二人は、カァッと頬に血を上らせた。
「好きって……私を?」
 信じられない思いでロイはハボックを見つめる。驚きに目を見開いて見つめる先で、ハボックが顔を真っ赤に染めて自分を見つめていた。
「大佐がオレを好き……?うそ……」
 絶対に叶わぬ想いだと思っていた。それなのにまさかこんな展開になるなんて、信じられないと思うと同時に思いがけない結末に、ハボックの瞳に涙が込み上げてきた。
「嬉しいっス……」
 顔を真っ赤に染めてハボックはポロポロと涙を零す。チョコをギュッと抱き締めて見つめてくるハボックの様子に、ロイはドクンと心臓が鳴るのを感じた。
(カ、カワイイ……ッ)
 色白の肌が首まで真っ赤に染まっている。そんな様を見れば服の下の肌はどうなっているのだろうと言う考えが浮かんで、ロイは手を伸ばすとハボックの肩をガシッと掴んだ。
「ハボックっ、好きだッ」
「たいさ……んんッ」
 言うなりロイは噛みつくように口づける。半ば強引に舌をねじ込み、ロイはハボックの口内を舌で弄った。
「ん……ん……」
 ピチャピチャと舌を絡められて、ハボックが甘く鼻を鳴らす。その甘ったるい声にロイは興奮してハボックをソファーに押し倒した。
「アッ!」
 ドサリと折り重なるようにして倒れ込んだ躯を、ロイは押さえ込む。ボタンを留めていない上着を毟り取るように脱がせると、Tシャツの裾をめくり上げた。
「やッ」
 白い肌が興奮に薄い桜色に染まっている。ロイは胸の頂を彩る飾りにゴクリと喉を鳴らしてむしゃぶりついた。
「アアッ」
 いきなり胸に吸いつかれて、ハボックが悲鳴を上げる。それに構わずロイは口に含んだ乳首をきつく吸いピチャピチャと舐めると同時に、もう一方の乳首を指でグリグリと押し潰した。
「やあんッ」
 両方の乳首を吸われ潰され引っ張られてハボックは嫌々と首を振る。快感とも痛みともつかぬ感覚に震えて押し返そうとすれば一層きつく愛撫されて、ハボックはハアハアと息を弾ませた。
「胸、やだ……ッ」
 薄色だった乳首がロイの愛撫ですっかりと濃い色に変わっている。ぷっくりと腫れるように膨らんだ乳首に軽く歯を立てれば、ハボックが涙に濡れた悲鳴を上げた。
「や……そこ、も、イヤ……」
「ハボック……ッ」
 泣きじゃくって嫌と訴えるハボックの姿に興奮してロイは鼻を膨らませる。両方の乳首を指で摘んでキュウウッと引っ張れば、ハボックが胸を仰け反らせて嬌声を上げた。
「やあああんッ」
 ハボックはハアハアと息を弾ませながら恨めしげにロイを見上げる。涙に濡れた空色にロイはチュッとキスを落とした。
「イヤって言ったのに」
「ふふ……お前があんまり可愛いから」
 すまんと言えばハボックが顔を赤らめる。その唇にキスを落として、ロイはハボックのボトムに手をかけた。
「やッ」
 脱がせようとするロイの手をハボックが押さえる。紅い顔で見上げてくるハボックにロイは言った。
「好きだよ、ハボック……お前の全部を見せてくれ」
「た、たいさ……」
 そんな風に言われて、ハボックが迷うように目をさまよわせる。ロイはハボックの返事を待たず下着ごとボトムを剥ぎ取ってしまった。
「やだァッ!」
 煌々とした灯りの下、全裸に剥かれてハボックが羞恥に悲鳴を上げる。ハボックが縮こまろうとするのを赦さず、ロイはハボックの脚を掴むと大きく広げた。
「やっ、嫌ッ」
 ハボックが慌てて曝された股間を両手で隠す。脚を押さえたままロイは、股間を隠すハボックの指に舌を這わせた。
「愛してるよ、ハボック……私に見せてくれ」
 ロイはそう囁きながらピチャピチャと指を舐る。口に含み軽く歯を立て指の間を舐めれば、ピクピクと震えたハボックの手から力が抜けていった。ロイは手をかき分けるようにしてハボックの中心に顔を寄せる。もうすっかりと立ち上がりとろとろと蜜を零し始めている楔にねっとりと舌を這わせた。
「やあんッ」
 ビクッと震えてハボックは背を仰け反らせる。拒むように髪を掴んでくるのに構わず、ロイはじゅぶりと楔を咥え込んだ。
「アアッ!」
 熱い口内に包み込まれて、ハボックが悲鳴混じりの叫び声をあげる。ジュブジュブと唇で扱かれて、ハボックは喉を仰け反らせて喘いだ。
「アッ、アアッ!やあ、んッ!!」
 舌で喉で締め付けられて、ハボックは瞬く間に追い上げられていく。ソファーの座面を何度も引っ掻いて、ハボックは激しく首を振った。
「ダメッ、も、でちゃう……ッ!やめて、たいさ、やめてッッ!!」
 このままではロイの口の中に射精してしまう。そんなわけにはいかないとハボックは必死に込み上がる射精感をやり過ごそうとする。だがロイは一層激しく楔を愛撫するときつく吸い上げた。
「ッ!────アッ、ア──ッッ!!」
 きつい攻めに耐えきれず、ハボックは熱を吐き出してしまう。ドクドクと口内に注がれる熱をロイは躊躇わずに飲み込んだ。



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