風の行く先   第三十二章


「たいさァ……」
 ロイは組み敷いた躯を大きく開かせると誘うように蠢く蕾に猛る楔の切っ先を押し当てる。そうすれば怯えて揺れる空色にキスを落として、ロイは押し当てた楔をズブズブと沈めていった。
「イヤアアッッ」
 狭い肉筒を強引に押し開いてロイは楔を進めていく。熟れた肉壁が絡みついて、ロイは込み上がる悦楽に熱いため息を零した。
「ひゃうんッ」
 ガツンと突き上げるとそれに答えるようにハボックの唇から嬌声が上がる。空色の瞳からはらはらと涙が零れるのを見れば、ロイは悦びにゾクゾクと背筋を震わせた。
「あんッ、アッアッ……ッ!も、無理ィ……ッ」
 過ぎる快楽にハボックが泣きながら訴える。だが、そんな弱々しい様にも煽られるばかりで、ロイは一層激しく突き上げた。
「んアアッ!たいさァ……ッ!」
 ハボックの躯が高い嬌声と共に硬直する。快楽の強さを見せつけるように突き出した楔からハボックがビュクビュクと熱を吐き出した。
「ア……ああ……ッッ!!」
 それと同時に戦慄く蕾が咥え込んだ楔をキュウキュウと締め付ける。震える吐息を吐き出すハボックの唇を噛みつくように塞いだロイは、締め付けに逆らってぎりぎりまで引き抜いた楔をガツンと最奥へ突き挿れると、熟れた肉壁に思い切り熱を叩きつけた。


「────ッッ!!」
 ハッとロイは閉じていた目を見開く。ハアハアと息を弾ませて薄闇の中天井を睨み付けていたロイは、己の下肢をべっとりと濡らすものに気づいた。
「……嘘だろう?」
 どうやら夢の中ハボックを抱いた悦楽のまま夢精してしまったらしい。そんな自分が信じられず低く呻いたロイは、ガバリと飛び起き寝室の奥のシャワールームに飛び込んだ。熱に汚れた下着をゴミ箱の中へと突っ込み扉の奥へと入る。コックを捻れば降り注ぐ熱い滴を頭から浴びた。
「……はあ」
 ザアザアと降り注ぐ湯を浴びながら、ロイは深いため息をつく。目を閉じれば夢の中、組み敷いていたハボックの泣き顔が浮かんで、ロイはゴツンと壁に額を押しつけた。
『たいさァ……』
 己を呼ぶハボックの甘ったるい舌足らずな声が蘇る。見上げてくる空色の中に浮かぶ恋の色に、ロイはとくりと心臓が音を立てるのを感じて唇を噛んだ。
「ハボック……」
 おかしい。どうかしている。
 ロイは脳裏に浮かぶ空色を打ち消すことが出来ないまま、熱い滴に打たれ続けていた。


「おはようございます!」
 司令室の扉を開ければ飛び出してくるフュリーの元気な声にロイは俯けていた視線を上げる。かけられた声には答えないままロイは視線を巡らせてハボックの姿を探した。
(まだ来ていないのか)
 ハボックの姿が見えない事にロイは落胆してため息を零す。その時、ガチャリと扉が開いてハボックが司令室に入ってきた。
「────?おはようございます」
 じっと見つめてくるロイに不思議そうに首を傾げたハボックが朝の挨拶を口にする。それには答えずハボックを見つめていたロイは、フイと視線を逸らすと無言のまま執務室に入ってしまった。
「どうしたんでしょう、大佐」
「さあ」
 残されたハボック達は何が何だか判らないまま首を傾げる。閉ざされた執務室の扉を尋ねるように見つめていたハボックだったが、軽く首を振ると自席につき書類に手を伸ばした。


 時折誰かが書類の決裁を求めて執務室に出入りする。だが、それ以外は特に何事もなく、サボリ癖のある上官は黙々と仕事をこなしているようだった。
(珍しいな)
 本当はこれが普通なのだと言うことに気づかずハボックは閉ざされた執務室の扉を見遣る。恐らくは目の前の仕事に集中しているのであろう上官に一息入れるためのコーヒーを差し入れるか、珍しくハボックが迷っていると机の上の電話がリンと音を立てた。
「はい、司令室」
 パッと弾かれたようにハボックは受話器を取る。耳に押しつけた受話器から聞こえるテロを告げる声に、ハボックは緊張した面持ちで何度か頷きながらペンを走らせた。ガチャンと乱暴に電話を切る仕草に、司令室の面々の視線がハボックに集まる。
「ハボ?」
「緊急事態!────大佐!」
 尋ねるブレダに短く答えたハボックはメモを手に立ち上がると、ノックもそこそこに執務室に飛び込んだ。


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