| 菫青石の恋 第四章 |
| caution!! この章では 読後の苦情は一切受け付けませんのでご了承の上お進みください。 「まったく、下らんことをぐちゃぐちゃと…!」 会議から戻ってきたロイは手にしたファイルを机に叩きつける。ドサリと腰を下ろして背もたれに体を預けると深い息を吐いた。目を閉じて眉間を揉み解すロイにホークアイがコーヒーを差し出しながら言う。 「お疲れさまでした。相変わらずでしたか?」 「…よくもまあ、次から次へと難癖をつけるものだ。あんなことを考える暇があるならもう少し建設的なことを考えたらどうなんだ」 ロイはそう言うとコーヒーをガブリと飲んでその熱さに目を白黒させた。憎々しげにカップの中身を睨みつけるロイにホークアイが言う。 「お疲れのところ申し訳ないのですが…」 「またサインか!いっそのことフュリーに頼んで自動サイン機でも作ってもらったらどうだ」 「大佐」 たしなめる様なホークアイの声にロイはため息をつくと書類を手に取った。 「これだけだからな。今日はこれだけやったらもう、絶対に帰るぞ」 子供のように口を尖らせてそう言うロイに、ホークアイは苦笑しただけで何も言わなかった。 宣言どおり必要最低限の書類にだけ目を通すと帰り支度を始めるロイに、ホークアイは何も言わずに車を回すよう連絡する。ロイはホークアイの気が変わらぬうちにと言わんばかりの勢いで司令部を後にすると外へと出て行った。 玄関前で待っていた車に乗り込むと車は静かに走り出す。苛々とした気持ちを抱えたまま窓の外を眺めていたが、不意に心に浮んだ顔に無性に会いたくなってロイはハンドルを握る警備兵に声をかけた。 「ちょっと止めてくれ」 「えっ、はいっ」 急ブレーキをかけて止まった車の扉を自分で開けるとロイは車から降りる。 「ここまででいい。ご苦労だった」 「えっ?あっ、ちょっと、マスタング大佐っ!」 家まで送り届けるよう言われていたのだろう、突然降りていってしまったロイに慌てつつも車を置いていくわけに行かず、困り果てて名を呼ぶ警備兵を置き去りに、ロイは数日前通った道を歩いていった。まだ日が暮れて間もないとはいえそこは既に結構な賑わいで、ロイは人ごみをすり抜けて目指す建物へと足早に歩く。ようやく辿り着いた店の入口を見上げて、ロイはひとつ息を吐くと扉を押して中へと入っていった。 「お客様、ご予約は頂いてますでしょうか」 すぐさま寄ってきた男にロイは首を振って答える。 「いや、予約はしてない。ハボックに会いたいんだが」 「申し訳ございません、当店は完全予約制になっておりまして…」 「それは判っている。何とかできないか?」 「そう申されましても…」 男は困ったようにそう言ったがロイの顔をじっと見つめると「あ」と小さな声を上げた。 「申し訳ございませんが、こちらで少々お待ちいただけますか」 そう言って手近な部屋にロイを案内すると慌しく出て行く。15分ほども待ったろうか、やはり無理だったかとロイが思い始めた頃、部屋の扉が開いて黒尽くめの男が入ってきた。 「大変お待たせいたしました、どうぞこちらへ」 男に促されるまま部屋を出て先日と同じようにエレベーターに乗る。 「急でしたのであまりお時間をお取り出来ないのですが」 「構わない。少し話が出来ればいいんだ」 そう答えるロイに男はホッとしたような顔をした。エレベーターを降りて厚い絨毯を敷いた廊下を通り抜け、この間と同じ部屋に通される。腰を下ろすか下ろさないかの内に扉がノックされてハボックが顔を出した。 「お待たせして申し訳ありません、マスタングさん」 「いや、忙しかったのだろう、無理を言ってすまなかった」 ロイがそう言えばハボックは微笑んで答える。 「いえ、今日はお呼びがかかってなかったんで家でぐずぐずしてたんスよ。無理なんてことはないっスから」 ハボックはそう言ったが、それは嘘だろうと思われた。ハボックは電話を取るとロイに聞く。 「お飲み物は?この間と同じものでいいっスか?」 ロイが頷けばハボックは早口で電話に囁いた。改めてロイに向き直ると口を開く。 「今日は来てくださって嬉しいです。ホントの事言うとまた来て貰えるとは思ってなかったんで」 「どうして?」 「だって噂の売子を見に来たって仰ってたでしょう?ホントに部下の方々との単なる話のタネだと思ったんスよ」 ロイはハボックが差し出したグラスを受け取りながら答えた。 「何となく顔が見たくなったんだ。迷惑だったか?」 そう言われてハボックは僅かに目を見開いたが、次の瞬間にっこりと笑う。 「すごく嬉いっス」 心の底から嬉しそうな声にロイの胸がざわりとざわめく。それが一体何なのか見極めることもできないまま、ロイはハボックと言葉を交わしていたのだった。 「今度はもっと時間取れるようにしますから。是非またいらして下さい」 そう言って見送ってくれたハボックに頷いたロイは娼館を後にして夜の道を歩き出す。苛々とした気持ちはハボックと言葉を交わすうちにいつしか消えていたが、だが今度はなにやらロイを落ち着かない気分にさせるものに気づいて、眉を寄せた。 「一体なんだと言うんだ」 今まで感じたこともないそれに、ロイはなんと説明をつけてよいか判らず、首を振ると意識の外へとそれを追いやったのだった。 「全く、いつまで待たせれば気が済むんだっ」 部屋に入った途端、飛んできた声にハボックは申し訳なさそうな表情を浮かべると口を開く。 「申し訳ありません、シュトフ大佐。ちょっとした手違いがありまして」 「手違いだと?!高い金を払ってんるんだぞ。当然この待ち時間は差し引いてもらうからな」 「勿論です、シュトフ大佐」 ハボックはにこやかに笑ってそう答えながらも内心では「セコイ男」と罵っていた。わざわざ自分の事を「大佐」と肩書きつきで呼ばせるこの男を、ハボックは大嫌いだったがそれでもそんなことはおくびにも出さず酒の入ったグラスを差し出す。シュトフはぐびりと一口飲むと乱暴にグラスを置き、ハボックの腕を掴んだ。 「酒はもういい。こっちへ来い」 シュトフはそう言うとハボックの腕を引いて続き間になっている寝室へと入っていく。ベッドの上にハボックを突き飛ばすように押し倒すと不満げに言った。 「まったく、どれ程待たされたと思っているんだ。それに最近ちっともお前を抱けないではないか」 「オレもなかなか大佐にお会いできなくて、凄く淋しかったっス…」 そう言われてシュトフが下卑た笑いを浮かべる。 「可愛いことを言う。今夜はたっぷりと可愛がってやるからな」 そう言って圧し掛かってくる男にハボックはそっと目を閉じたのだった。 ぐちゅぐちゅと濡れた音と肉を打つ音が薄闇の中に響き、苦しげな喘ぎ声がそれを彩っていく。ハボックはその身の奥深くにシュトフの牡を受け入れさせられていた。 「んっ…ああっ…ふあ…っ」 びくびくと身を震わせるハボックにシュトフが満足げに笑う。 「どうだ、ここがイイんだろうっ?ああ?もっと啼いてみろ」 「ああっ…ヤダ…ヒッアアアッ…!」 ガツガツと乱暴に突かれてハボックは身を仰け反らせて喘いだ。白い肌を上気させ、薄っすらと涙を浮かべるその表情にシュトフは興奮してさらに奥を穿つ。 「ヒッ…ダメ…そ、んなにしたら…っ」 「そんなにしたら、なんだ。もっと奥を突いて欲しいのか、そうなんだな」 シュトフはそう言うとハボックの長い脚を抱えなおしガンッと突き入れた。 「ッッ!!あ…アアッ!!」 ハボックの手がシュトフの背をかき抱きその中心が熱を迸らせる。突かれて達したハボックをシュトフは満足げに見下ろすと涙に濡れた頬を撫でた。 「ふふ、可愛いな、全くお前は。もっともっと悦くしてやるぞ…」 シュトフはそう囁くとハボックの中に埋め込んだ己をグラインドさせるようにして突き上げる。短い悲鳴を上げるハボックの中心を握り締めると乱暴に扱いた。 「や…やめ…っ…も、くるし…」 力なく身悶えるハボックを思うままに犯しながら満足そうに笑うシュトフに、ハボックは身を任せながら熱くなる体とは裏腹に醒めていく心で冷静に事態を見つめていた。 『お前を自分のいいようにしてると思い込むバカな男達を見下してやるといい』 まだ子供だった頃、初めて抱かれた時に言われた言葉が頭をよぎる。 (バカな男…) 心の中でそう呟くと、いつものようにハボックは、あの時自分を見下ろしていた黒曜石の瞳を思い浮かべながら快楽に身を任せていった。 |
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