菫青石の恋  〜 Another ending 〜


 ロイはポケットから万年筆を取り出そうとしていつもそこに入れていたものがない事に気付く。記憶を探って着替える時にリビングのテーブルに置いたまま忘れてきた事に思い至った。
「ッチ」
 行儀悪く軽く舌打ちするとロイはペン立てに立ててある中から以前使っていたものを取り出す。キャップを取って書類をしたためながらロイは書き味の悪さに今度は思い切り舌打ちした。ポンと机の上にペンを放り出しドサリと椅子の背に体を預ける。腕を組んでため息をついた時、ノックの音がしてホークアイが顔を出した。
「大佐」
 書類も書かずに座り込んでいるロイの姿にホークアイが眉を顰める。責めるような視線にロイはため息をつくと言った。
「ペンを忘れた。仕事をする気にならん」
「またそんな子供みたいなことを…」
 呆れたように言って書類の山の上に手にしたものを積み上げるとロイを見る。
「彼から貰ったペンですか?」
「着替える時にテーブルに置いたままにしてしまった」
 ムスッとして言うロイにホークアイが優しく微笑んだ。
「そこなら失くす心配もないから安心ですわね」
「でもあれがないと書類が書けない」
 子供の我が儘のようなことを言うロイにホークアイが告げる。
「書類を書かないのは構いませんが、仕事が終わらなければいつまでもお帰りにはなれませんから」
 よろしいんですね、と澄まして言うホークアイをロイは睨んだ。放り投げたペンを手に取るとサインを書き始める。
「やればいいんだろう、やればっ」
 そう言ってガリガリと書類を書くロイにホークアイはくすりと笑ったのだった。

 ハボックはベッドの中でゆっくりと目を開ける。ベッドサイドに手を伸ばすと時計をブランケットの中に引き込んだ。
「…9時?」
 そう呟いて部屋を見回すがそこは暗く沈んでいる。そっと体を起こすと髪をかき上げた。
「一日寝てたのか…」
 ロイを送り出した後、あまりの気分の悪さに起きていられず倒れるようにベッドに潜り込んだ。結局そのまま寝入ってしまった様だが、丸一日寝ていた体はそれでもすっきりとはせず、だるくて仕方がなかった。ハボックはベッドから足を下ろすと立ち上がる。とりあえず起きられた事にホッと息をつくと、暗い中階下へと下りていった。リビングに入って灯りのスイッチを押す。パッとついた灯りの眩しさに目を細めると室内を見渡した。
「まだ帰って来てないんだ…」
 それが自分にとっていい事なのか悪いことなのか判断がつかず視線を移せばテーブルに置かれている万年筆が目に入る。ゆっくりと近づくとそれを手に取った。
「マスタングさん、忘れていったんだ」
 使いやすいと喜んで毎日使ってくれることがとても嬉しかった。ハボックは暫くの間万年筆を見つめていたが紙を取り出すと床にペタンと座り込む。そうして万年筆のキャップを取り外すと言葉を捜しながら文字をしたためていったのだった。

「え?出張っスか?」
「ああ、セントラルの馬鹿どものおかげでな。1週間くらいで帰れると思うんだが」
 珍しく早く――と言ってももう10時を回っていたが――帰ってきたロイは上着を脱ぎながら言う。疲れたようにソファーに腰を下ろしたロイはハボックを見上げると言った。
「お前もあまり体調がよくないようだし、本当は家を空けるのは嫌なんだが」
 ロイはそう言うとハボックの腕を掴んで引き寄せる。その頬を撫でながら言った。
「ずっと顔色がよくないだろう。一度医者に行った方がいいんじゃないのか?」
「たいしたことないっスよ。オレ、季節の変わり目って体調崩しやすいんです」
 ハボックはそう言うとロイの手に頬を擦り付ける。ロイの手を両手で包むと大事そうに胸元に引き寄せた。
「一緒に暮らし始めて1週間も離れるのって初めてっスね…」
 ハボックは呟くように言うとロイを見上げる。その空色の瞳にゾクリと背筋を震わせるとロイはハボックの体をソファーに押し倒した。
「マスタングさん…っ」
 悲鳴のように自分の名を呼ぶハボックの唇をロイは乱暴に塞ぐ。舌を差し入れてきつく絡めればハボックの体が震えた。
「ヤッ…ここじゃやだっ…ベッドに…っ」
 そう言ってもがくハボックのシャツをロイは引き裂くように剥ぎ取る。ズボンに手をかけると下着ごと取り去った。
「マスタングさんっ!」
 明るく照らされた室内で曝け出されてハボックが羞恥に身を縮める。隠そうとする手足を押さえつけてロイは言った。
「全部見せてくれ。隅から隅まで全部…っ」
「やっ、ヤダっ」
「1週間も離れるんだぞっ、そう思ったら気が狂いそうだ…っ」
 呻くようにそう言うロイをハボックは驚いて見上げる。自分を見つめる熱く燃える黒い瞳にハボックの体からゆっくりと力が抜けていった。ロイはハボックの頬を撫でるとそっと口付ける。唇を滑らせると首筋をきつく吸い上げた。
「っっ」
 ビクッと震える体に構わず、ロイは唇を滑らせていく。肩に胸にいくつもいくつも印を刻みながらハボックの体を丹念に辿った。臍の周りを廻り、脇の肌の薄いところに歯を立てる。
「イッ…」
 ロイが唇を離せばうっすらと血が滲んだ。ロイはハボックの長い脚を大きく開かせると片方をソファーの背に掛けてしまう。下肢を大きく晒されてハボックは耐え切れずに両手で顔を覆った。ロイは開いた脚の中心で息づくハボック自身を手に取る。そこはもう、すっかりと立ち上がってとろとろと蜜を零していた。ロイはそそり立つ竿に沿って指を滑らせる。堅く漲ったそれに浮き出る血管を辿るように指を滑らせればハボックの唇から熱い喘ぎが零れた。
「あ…マスタングさん…っ」
 ピクピクと震えるそれにロイは舌を這わせる。カリの部分を何度も舌先で嬲り、先端の穴を押し広げるように舌で潰すとじゅぶと咥えこんだ。
「ンッ…アッ…」
 じゅぶじゅぶと唇で擦り上げながら上目遣いにハボックを見る。最初は手で顔を覆っていたハボックは、今では片手でソファーの座面の淵を、もう片手でソファーの背を必死に握り締めていた。
「ヒ…ンッ…んあ…っ」
 ロイの口中で硬度を増し震えるそれが限界に近いのだと感じて、ロイは袋へと手を伸ばす。揉み込むように愛撫し、中の珠を転がせばハボックが悲鳴のような声を上げた。
「イッ、アッ…、出ちゃう…っ」
 ソファーを掴むハボックの指が白くなるほど力が込められる。ハボックは耐えるように浅い呼吸を繰り返していたが、ロイがきつく吸い上げると同時に耐え切れずに白濁を迸らせた。
「アアアッッ!!」
 白い喉を仰け反らせて吐き出される熱をロイはごくりと飲み干す。唇を離すと舌を使って丁寧に清めた。それからロイはハボックの腰を上に押し上げるようにして双丘に手をかける。白いそれを割り開けば、ひくつく蕾が現れた。ロイの視線を感じて、ハボックがゆるゆると首を振る。それでもロイのなすがままに身を任せるハボックが愛しくて、ロイは蕾へと唇を寄せた。舌先で触れればハボックの体がビクリと跳ね上がる。ロイは親指で蕾をグイと開くとその中に舌を差し
入れた。
「アッ…ヤダッ!」
 ロイの濡れた舌がぬめぬめと這い回る感触にハボックは涙を零しながら喘ぐ。さっき熱を放ったばかりの中心は既に勢いを取り戻し、ハボックの蕾に舌を這わせるロイの鼻先を蜜で濡らした。
「い、や…っ、も、ヤッ…!」
恥ずかしさのあまりどうにかなってしまいそうで、ハボックは泣きじゃくる。それでも快楽に素直な体はロイの愛撫に蕩けていった。
「マスタングさぁん…っ」
 呼ぶ声に答えるようにロイはつぷりと指を差し入れる。ズズッと根元まで入れるとグチグチとかき回した。
「ヒ…ウウッ…」
 ロイの指が熱い粘膜をこすりかき乱す。ハボックが腰を揺らし始めたのを見てロイが言った。
「いいのか?ハボック…」
 そう聞けばハボックがこくこくと頷く。羞恥が更に快感を煽ってハボックは泣きながらロイに手を差し伸べた。
「き、て…マスタングさん…も、はやく…っ」
 そう言ってロイを強請るハボックにロイはうっとりと笑う。もう既にガチガチになっている自身を取り出すとハボックの蕾へと押し当てた。
「あ…」
 長い脚を抱え上げてハボックの顔を見つめれば熱に濡れた空色の瞳がロイを見上げる。ロイはハボックの目元にキスを落とすとゆっくりと体を進めていった。
「あ、あ、あ…っ」
 ずぶずぶと押し入ってくる熱にハボックは目を見開いて背を仰け反らせる。狭い器官を一杯に押し広げてくるそれにハボックは耐え切れずに熱を吐き出した。
「アアアッッ!!」
 ビュクッと先端から噴き出した熱が二人の腹を汚す。ロイは半ばまで埋めた自身を一気に最奥まで突き入れた。
「ヒイイッッ!!」
 ガツンと突き上げられてハボックが悲鳴を上げる。ロイは構わず突き入れた熱を今度は一息に入口まで引き戻した。
「ヤアアッッ!!」
 乱暴な抽送に内臓を引きずり出されるような錯覚に陥り、ハボックの体が逃げをうつ。だが、ロイはそれを赦さず強引に引き戻すとガツガツと突き上げた。
「ヒゥッ…い、ヤァ…ッッ!!」
「ハボック…ッッ」
 ロイが名を呼べばハボックの瞳がロイを見上げる。ロイの髪に手を差し入れるとそっと引き寄せた。引き寄せられるままロイはハボックの唇に己のそれを重ねる。
「ンッ…ンンッッ!!」
 ハボックの悲鳴を飲み込んで、ロイは深く穿つとその最奥へ熱を叩きつけた。


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