| 続ハイムダール国物語 第二十一章 |
| 「ロイ」 リザと一緒に戻ってきたロイの姿を見て、ハボックがホッとしたように笑みを浮かべる。ロイがハボックに近づくより早く駆け寄ってきたエリシアがロイの手を掴んだ。 「もう、ロイってば迷子にならないで。私より大人なのに心配するじゃない」 「ご、ごめん」 キッと目を吊り上げて言う小さな姫に、ロイは顔を赤らめる。チラリとハボックを見れば、笑みを浮かべたハボックが近づいてきて言った。 「エリシア姫、ロイがまた迷子にならないよう二人でしっかり手を繋いでいよう」 「そうね。ロイ、私たちの手を離しちゃ駄目よ」 言い聞かせるようにロイを見ながら繋いだ手をエリシアがギュッと握る。その反対の手をハボックの手に取られて、ロイは益々顔を紅くした。 「なっ、なに言ってるんだ!小さな子供じゃあるまいし!」 「いつの間にやらはぐれてた人に言う権利はないっス」 「あれは別にはぐれた訳じゃなくてっ」 「ロイ、言い訳は駄目。さあ、しっかり私たちの手を握っててね」 「エリシア!」 どちらが年上か判らないような言葉にロイは抗議の声を上げるが聞き入れられる事はない。両側からしっかり手を握られて技術者たちの説明を聞く羽目になって、ロイはがっくりとと肩を落とした。 「あれならつまらないヤキモチを妬く事もありませんね」 「ティワズ様」 仲良く手を繋いで説明に耳を傾ける三人の様子を見ていれば、背後から聞こえた声にリザは振り向く。近づいてくるティワズを見上げると、リザは言った。 「すみませんでした、ティワズ様」 「ロイ様は本当に無頓着ですね。キスされそうだったというのに全く気づいてらっしゃいませんでしたよ」 「なんて汚らわしい。後で切り捨ててやるわ」 半ば呆れて言うティワズにリザが吐き捨てるように言う。そんなリザにティワズが苦笑して言った。 「そんな事をしてロイ様になんと言うつもりです?それにハイムダールの使節団に絡んで城の兵士を切るなどと言うことになれば、折角の親善訪問に傷を付けかねない」 そう言われてリザがムッとして黙り込む。一番後ろからついてくるホヅルをチラリと見て、ティワズが言った。 「とにかくあの男を必要以上にロイ様に近づけないようにしましょう。と言っても、ロイ様の方から側に置きかねない気もするんですが」 かつて誘拐事件が起きた時の己の見張り役だったファルマンを側におきたいとロイが言い出した事を思い出してティワズはため息をつく。そもそも自国の兵士を警戒するなど思いもしないだろうロイの横顔を、ティワズは紅い瞳を細めて見つめた。 (くそっ、あの赤目の男!よくも邪魔をしやがってッ!!) ホヅルはリザと言葉を交わすティワズを睨みつけて歯軋りする。 (あともう少しでロイ様とキス出来たのにッ!ロイ様が俺と二人きりになりたくて折角作ってくれた機会を、よくも……ッ!!) もうすっかりロイは自分を好きだと決めつけて、ホヅルはキスするチャンスを逃した事が悔しくて仕方なかった。ハボックとエリシアとに両手を繋がれて施設を見学するロイに目をやり、切なげにため息をついた。 (お可哀想に、ロイ様、逃げられないよう手を掴まれてッ!きっと今夜はあのデカブツの王子に酷い目に遭わされるに違いない……ッ!) そう考えればベッドの上でハボックに組み敷かれるロイの姿が目に浮かぶ。泣きながら赦しを乞うロイを思い浮かべて、ホヅルは鼻の穴を膨らませた。 (ああ、俺ならロイ様を優しく愛して差し上げるのに……ッ!あの白い肌にいっぱいキスして、ロイ様のナニをこの手で扱いて気持ちよくしてあげて、そして俺のこの自慢の息子でロイさまを……ッッ!!) いつの間にか妄想の中でロイを組み敷くのがハボックから己へと変わっている。興奮にギラギラと目を輝かせてホヅルはハボックに話しかけるロイを食い入るように見つめた。 (ロイ様、この俺が必ずそこから救い出して差し上げますッ!その為にはハボック王子をこの手で……) ホヅルは勝手な想像を巡らせて昏い笑みを浮かべる。ハイムダールでも一二を争う剣の使い手であるハボックをいとも容易く切り捨てる己の姿を思い描いて、下卑た笑みを浮かべたホヅルは食い入るようにハボックを見つめながらゆっくりと一行の後について歩いていった。 |
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