| FLARE BLUE 第六十章 |
| 「おはようございます、大佐。陣の発動前にもしかして今日はお休みになられるのかと心配しておりました」 始業時間ぎりぎりに執務室に飛び込めばにっこりと笑った鳶色の瞳に迎えられて、ロイはひきつった笑みを浮かべる。 「休む訳がないだろう?そもそも私の本業はこっちで、陣を発動させるのは事件解決のついでみたいなものだからなっ」 はっはっはっと笑ってみせたロイは、続くホークアイの言葉に笑った顔そのままに固まった。 「ご自分のお立場をよくお判りのご様子で安心しました。では、本日の予定を確認致します。まずは十時までにこちらの書類の決済をお願いします。そのあと十時十五分から第三会議室で────」 淀みなく今日の予定を告げられて顔をひきつらせるロイを残して、ハボックは早々に執務室から逃げ出す。司令室の大部屋をぐるりと見回し、書類と格闘するフュリーの隣の椅子を引き寄せ腰を下ろした。 「なあ、中尉さんって幾つ?」 「えっ?ホークアイ中尉ですか?えっと確か────」 記憶を辿ってフュリーが口にした年齢と自分の年齢を比較してハボックは「年上かぁ」と呟く。 「独身だろ?彼氏とかいるのかな?」 「さあ、聞いたことありませんけど」 「美人だし頭も切れるし、つきあおうと思ったことねぇの?」 「無理ですよッ!僕が中尉とつきあうなんて、無理に決まってるでしょッ!」 とんでもないとブンブンと首を振るフュリーにハボックが「そお?」と小首を傾げた時、カチャリと執務室の扉が開いてホークアイが出てきた。 「─────なあに?」 思わずホークアイの顔を見つめる二人に、ホークアイが眉を寄せる。ハッとしたフュリーが「なんでもありませんッ」と書類を引っ掴んで司令室を飛び出していくのを不思議そうに見遣ったホークアイは、ハボックに視線を戻して言った。 「あんまり変なことを吹き込まないで欲しいわ」 「変なことなんて吹き込んでないっスよ。ただ中尉さんは彼氏がいるのかなぁって聞いただけっス」 「────それは仕事とは関係のない話ね」 ジロリと睨んでホークアイは自席に腰を下ろす。ファイルを広げて書類をチェックし始めたホークアイは、じっと見つめてくる視線にため息を零して顔を上げた。 「なにかしら?」 「彼氏いないならオレが申し込んでもいいっスか?」 にっこりと魅力的な笑みを浮かべて言うハボックをホークアイは無表情に見つめる。 「貴方が興味あるのは大佐だと思ったけれど。別に私に気を遣ってくれなくとも気にしないわ」 そんな風に言われてハボックは苦笑して煙草の煙を吐き出した。 「中尉さんは今でも陣を発動させるのは反対なんスか?オレがあの人にちょっかい出すのも反対?」 「陣を発動させる事は正直言って反対よ。でも、言い出したら聞かない人だし、いざとなったら貴方が体を張って護るでしょう」 当然と言う様子でホークアイは言い切る。伺うように見つめてくる空色を見つめ返して言葉を続けた。 「遊びならやめて。ああみえて意外と初心なのよ」 言われてハボックがククッと笑う。 「副官ってのも大変っスね。公私に渡りお守りしなきゃなんねぇの?」 「撃つわよ」 言うより早く銃を手にするホークアイにハボックは慌てて両手を上げた。 「大変な中尉さんの為にオレも少しはお手伝いするっスよ。コーヒーでも淹れてきます。あ、中尉さんも飲みます?オレの淹れるコーヒーは旨いって結構評判いいんスけど」 「────いただくわ」 「了解っス」 ニッと笑ってウィンクしたハボックの背を見送って、ホークアイはため息をつく。 「大変だと思うなら余計な心配事を増やさないで欲しいわ」 うんざりとした体(てい)で呟くと、ホークアイは目の前の書類を手に取った。 |
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