| FLARE BLUE 第五十八章 |
| 窓辺に寄りかかり煙草を吸う横顔は意外に端正でロイは思わず見入ってしまう。抜けるような空色の瞳を縁取る存外に長い金色の睫を見つめていれば、不意に今までになくハボックへの興味が沸いてロイは尋ねた。 「お前、これまでどうしてたんだ?」 「えっ?」 唐突にそう聞かれてハボックが弾かれたようにロイを見る。じっと見つめてくる空色にドギマギしながらロイは言った。 「あ……いや、その……」 尋ねたもののやはり話題にする話ではなかったかとロイは口ごもる。そうすればハボックがニヤリと笑って言った。 「なに?力のことっスか?」 「ああ、まあ……あっ、でも話したくないなら無理にしなくていい!私とお前の契約に力の話を話さなければいけないという決め事はない。依頼したことをちゃんとやってくれればそれ以上は求めない」 そう言うロイにハボックが僅かに目を見開く。それからクスリと笑って言った。 「アンタってやっぱ面白いなぁ。ねぇ、なんでアンタみたいのが軍にいるの?軍の組織から浮いてるっしょ」 「失礼な奴だな。私が伊達や酔狂で大佐をやってると思っているのか?」 逆に問い返されて、ロイはムッと眉を寄せる。そんなロイにハボックは窓に凭れて言った。 「実はオレ、アンタの肩章は色仕掛けで買ったんじゃないかと思ってたんスよ────って、燃やすのはなしで」 言った途端懐から発火布を取り出すロイに、ハボックが慌てて言う。ジロリと睨んでくる黒曜石を見返してハボックは言った。 「そうっスね。これまではそんなに力に振り回される事もなかったからな、適当に仕事受けてそれなりに楽しんで暮らしてきたっスね」 ハボックは言って右手の掌を上にして見せる。その掌の上に淡いブルーの光が浮かび上がるのを見て、ハボックは目を細めた。 「オレも実際はよく判らないんスよ。なんなんスかね、この力。でも、使えばウザイ奴らは蹴散らせたし、結構便利してたんだけどな」 そう言うハボックの掌の上で光がその明るさを増していく。細めた目を眇めるようにして見ていたハボックは、不意に伸びてきた手がその光を包むように押さえ込むのを見て目を見開いた。 「ちょ……ッ?アンタ……」 いつの間にか側に立っていたロイの白い掌がブルーの光を包み込み、やがてロイの手の中に飲み込まれるように光が消える。この男にしては信じられないほど驚いた様子で見つめてくる空色に、ロイは肩を竦めて言った。 「大した事ないな。どうってことない」 そう言うロイをハボックは目を見開いて見つめていたが、やがてクッと喉を鳴らす。クックッとさもおかしそうに笑って、ハボックは言った。 「やっぱアンタ面白いなぁ」 「私のために働きたいと思うようになっただろう?」 フフンと笑ってロイは言う。光を飲み込んだ掌を軽く振るロイの手首を掴んで、ハボックは白い掌を見つめた。 「ママの言うことも間違っちゃいないって事っスかね」 「なんだ、ハウラの言う事ならまんま信じる訳じゃないのか?」 「まあね」 言われてハボックは苦笑する。ロイの手を指を絡めるように握り締めて言った。 「楽しみっスね。鬼が出るか蛇が出るか」 「出るのは悪魔じゃないのか?」 「ふふ、どうっスかね」 クスリと笑みを零すハボックの唇を、ロイは己のそれで塞いだ。 |
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