FLARE BLUE  第五十六章


「ぶっ壊れたソファーとかテーブルはとりあえず外に出していいっしょ?」
「うう」
 無惨にも真っ二つになったソファーの片方を抱え上げながら言えば、不服そうな呻き声が聞こえてハボックはロイを振り向く。ソファーの上でクッションを抱き締めて、恨めしそうに見つめてくるロイにハボックは言った。
「アンタ、金持ってんでしょ?また買えばいいじゃないっスか」
「それはすごく気に入ってたんだ、寝心地がよくて」
「また買えばいいでしょうが」
「アンティークだぞ。出す金はいくらでもあるが同じ物はない」
「あー、そうっスか。まったくもう、金持ちはこれだから」
 ブツブツ言うロイにブツブツと返して、ハボックは壊れた家具を外に運び出す。割れたガラスを箒で集めモップで床を拭いて当座出来るだけの片づけを済ませて、ハボックは言った。
「終わったっスよ。割れたガラスは明日業者呼んで下さい」
「ああ、ご苦労だったな」
 ロイはそう言ってソファーから立ち上がる。ウーンと伸びをしながらハボックに言った。
「疲れた……私はシャワーを浴びて寝るよ。一階の書斎の隣が客室だからお前はそこで寝ろ。バスルームにタオルがあるから」
「そっスか、ありがとうございます。おやすみなさ……って、────あれ?」
 リビングから出ていこうとするロイに頷いたものの、ハボックはロイが言った言葉に首を捻る。リビングのドアがパタンと閉まると同時に、ハボックは大声を上げた。
「ちょっとアンタッッ!!」
 ハボックはリビングのドアをバンッと思い切り開けながらロイに向かって怒鳴る。ロイは眠そうに欠伸をしながら何事かと振り返った。
「夜中だぞ、大声を出すな」
「なに言ってんスかッ、オレを騙したっスね!」
「騙した?なにがだ?人聞きの悪い」
「騙したでしょうがッ、こんな状態じゃ休めないって、休むのは寝室っしょ、リビングは関係ないじゃないっスか!」
「朝起きてきて散らかったままじゃ目覚めが悪いじゃないか」
 責める言葉にロイは平然と答える。ふわぁと欠伸をしながら言った。
「その代わりちゃんと終わるまで待っててやっただろう。じゃあな、おやすみ」
 眠そうにそう言うとロイは二階へと階段を上がっていく。寝室の扉を開けて中に入ると服を脱ぎ捨て奥のシャワールームに入った。温めの湯を出し頭から雫を浴びてホッと息を吐く。肌に当たる雫が体の疲れを流し去るように感じながらシャワーを浴びていたロイは、ヒヤリとした空気を感じて振り返った。
「うわっ、おま……ッ、そこでなにしてるッ?」
 シャワールームの扉に手をかけて立っているハボックの姿を目にして、ロイはギョッとして飛び上がる。全裸の体を隠そうと扉の近くにかけてあったバスタオルを取ろうとしたロイの手が届くより一瞬早く、ハボックがタオルを取って背後に投げ捨てた。
「ッ!馬鹿ッ、出てけッ!」
 顔を赤らめてロイは前屈みになりながら喚く。そんなロイを無表情で見つめていたハボックが、ニヤリと笑って言った。
「人を騙してこき使うような奴にはお仕置きが必要だと思わないっスか?」
「べっ、別に騙してないしっ!ちゃんと終わるまで待ってたし、そ、それに料金だって払ったろうッ!キスしたくせにッ!」
 ロイのキスでは足りないと体の芯が火照るような激しいキスをしてきたのはハボックだ。その腹いせにちょっとばかりこき使ってやったのだが、どうやら拙かったろうか。とにかくこんな素っ裸の状態でやりあう訳にはいかないとロイは「出ていけ」と怒鳴る。だが、ハボックが出ていくどころかシャワールームに入ってくるのを見て、ロイは思わず零れてしまった悲鳴を掌を口に当てて抑えた。
「ふぅん。じゃあお仕置きじゃなく追加料金ってことで」
「なっ、なに言ってるッ!いいから出て……ッ、ヒッ」
 ドンッと背後の壁に手をつかれて、ロイはハボックを見上げる。服のままシャワーに濡れるのも構わず見下ろしてくる空色を目を見開いて見つめれば、その空色が物騒に細められた。
「ハボ────、ヒャッ!」
 不意に体を寄せてきた男に壁との間に押さえ込まれたと思うと、股間をキュッと握られてロイは悲鳴を上げる。腰を引こうにも壁に阻まれてどうすることも出来ないでいるうちに、ハボックの大きな手がロイの楔を包み込みゆっくりと扱き出した。
「や……やめ……ッ」
「イイコにしないともっと取り立てるっスよ」
 押しやろうと男の胸に手を突っ張れば耳元に囁かれて、ロイはビクリと震える。徐々にスピードを上げて扱かれて、ロイは息を弾ませてゆるゆると首を振った。
「や、やだ……っ」
「平気だって。ここならどんなにいっぱい出しても全部流れちまうっスから」
 クスリと笑ってハボックはグチュグチュと楔を扱く。もう腹に着くほどそそり立った楔を見下ろして楽しそうに言った。
「あっという間にこんなにして……ヤらしいなぁ、アンタ」
「バ、バカッ」
 揶揄するように言われて、ロイはカアアッと顔を赤らめる。快感を引きずり出され、いまにももう膝が頽れてしまいそうでロイは震える手でハボックのシャツに縋りついた。
「アッ……あ、アッ……も、もうっ」
「もう、なに?イきそう?」
 クスクスと笑いながらハボックはロイの耳に舌を差し入れる。クチュクチュと音をたてて嬲れば、ロイが喉を仰け反らせて喘いだ。
「ハッ、あふ……、あっああッ、やっ、も……イくッ」
「いいっスよ、ほら──── イっちゃいな」
「ッッ!──── アアアアアッッ!!」
 低く囁く声にロイはゾクリと身を震わせる。次の瞬間ロイは高い嬌声と共にハボックの手の中に熱を迸らせた。


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