平行世界7
 
 
「南方司令部からこっちに出張に来てるのが何人かいるそうです」
司令室に戻ってきたフュリーがそう言うのを聞いて、ハボックは顔を顰めた。
「南方司令部じゃあ、飛ばされたのはクリスだ」
「クリスって?」
参ったな、と額を押さえるハボックにビリーが聞く。
「え?ああ、オレの姉貴。南方司令部で司令官付の一等秘書官やってるんだけどね、どうも丁度こっちに来てたらしいからビリーと入れ替わりで向こうに飛ばされたのは十中八九クリスだろうな」
そう言って「はあ」とうな垂れるハボックにビリーはしょんぼりと言った。
「ごめん、俺がこっち来ちゃったから
そう呟くように言うビリーにハボックは驚いて目を瞠る。それからふわりと微笑むと言った。
「何言ってんの、ビリーの所為じゃないよ。オレがため息ついたのはクリス、きっと向こうのハボ達に迷惑かけてるだろうなって思ったからさ」
性格がちょっとね、と囁いてからハボックは続ける。
「ビリーだって大変なんだから、何にも気にしなくていいんだよ」
そう言ってハボックが金色の頭を撫でればビリーが安心したようにハボックの胸に体を預けた。司令室の床に座り込んで身を寄せあっている二人の姿にロイの眉間の皺が深くなる。ロイはビリーの背中を足先でつつくと言った。
「おい、いつまでハボックにくっついてるんだっ、いい加減離れろっ!」
「いてっ、何すんだよ、オジサンっ」
「オッ、貴様ッ、この私をつかまえてオジサンとは何だっ、オジサンとはっ」
「オジサンにオジサンって言って何が悪いんだよっ」
ピキピキとこめかみに血管を浮き上がらせたロイが発火布を嵌めた手を差し出せばハボックがそれを叩き落す。ロイを睨むと言った。
「もうっ、大人気ないっスよ、大佐」
ハボックはそう言うとビリーに手を貸しながら一緒に立ち上がる。それから小首を傾げると言った。
「ビリー、吹っ飛ばされてきたんだからこっちで行く所なんてないよね?よかったらうちに来ないか?」
「え? いいの?」
「もちろ――
「よくないっ!!」
ビリーの言葉にハボックが頷こうとすればロイが大声で否定する。不安そうな顔をしながらもロイを睨むビリーを抱き寄せてハボックはロイを睨んだ。
「なんでそんな事言うんスかっ!ビリーのこと放り出せとでも?」
「別に家に連れて行かんでもホテルなりなんなりあるだろうがっ」
「こんなわけ判らないところに来て、夜ひとりで放っておかれたら不安で堪んないでしょっ?」
「こんな失礼なヤツ、ほっといたって平気だろうっ」
そういい放つロイにハボックは目を見開く。ギュッと唇を噛み締めると言った。
「判りました。それじゃオレがビリーと一緒にホテルに泊まります。それならいいでしょっ」
「なっバカ言うなっ」
目を吊り上げるロイを無視してハボックはビリーににっこりと笑いかける。その肩に手を回すと言った。
「行こう。何にも心配することないからね」
「おいっ、ハボック!」
慌てて引き止めようとするロイを肩越しに振り向くとハボックが言う。
「送迎はブレダにして貰って下さい、それじゃ」
それだけ言うとビリーの背を押すようにしてハボックは司令室を出て行ってしまった。
「なんでそうなるんだっ!」
後には呆然とするロイと、事の成り行きに顔を見合わせてため息をつくブレダ達が残されたのだった。


2008/05/19


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