平行世界5
 
 
「私をからかってるの?一体どういうことよっ?!」
目を吊り上げる美女にハボックはロイの顔を見る。情けなく目尻を下げると言った。
「あの、大佐、こちらの女性は大佐の知り合いっスか?」
「何言ってるんだ、お前の知り合いだろう?」
互いにそう言う二人にクリスは眉を跳ね上げた。
「ちょっと、ジャン。アンタ実の姉に向かってなんて事言うのよ。それにマスタング大佐、貴方それって私に対する嫌がらせのつもりなのっ?」
「「実の姉っ?!」」
驚きのあまりハモってしまったことにも気付かず二人は顔を見合わせる。それから腰に手を当てて顎を反らし、睨みつけてくるクリスの顔をまじまじと見つめた。
「何となくお前に似てる気がするんだが、ハボック」
「オレもそんな気がしてきたっス」
ロイの言葉にハボックは頷いてクリスを見つめる。その蜂蜜色の髪も、空色の瞳も、自分が持っているものと同じである上、その顔立ちも男女の違いはあるもののどこか共通点があるものだった。
「大佐、オレ、嫌な予感がします」
「お前もか? 私もだよ」
ハボックはロイの返事に「うう」と低く唸ると額を押さえる。それでも言わないわけにはいかず、クリスを見ると言った。
「あの、失礼ですがお名前は?」
「アンタ、私をバカにしてるの?」
「いや、そういうわけじゃないんスけど、一応教えていただければ」
へらりと笑って頭を掻くハボックに、クリスは一瞬間を置くと答える。
「クリスティーヌ・マーシャルよ」
「旧姓はクリスティーヌ・ハボック?」
そう言われて頷けばハボックがロイの顔を見た。その思わせぶりな態度にクリスは苛々して言う。
「言いたいことがあるならさっさと言いなさい、ジャン!」
クリスの言葉にハボックは視線を戻すとその空色の瞳をじっと見つめた。それからゆっくりと言葉を選びながら言う。
「驚かないで聞いて欲しいんスけど」
なに?」
至極真面目なハボックの顔にクリスもふと不安になってその顔を見上げた。いつもとどこか違うという気持ちが俄かに大きくなって、クリスは僅かに目を見開く。そんなクリスにハボックは言った。
「ここはクリスティーヌさんの世界じゃないっス。所謂パラレルワールド。信じられないかもしれないっスけど、アンタは別のオレ達がいる世界に飛ばされて来ちゃったんスよ」
え?」
クリスはハボックの言葉が理解できずにポカンとする。そんなクリスにハボックは根気強く説明を繰り返した。
「じゃあ、私は今、別の世界にいるってこと?」
「そうっス」
「じゃあ、アンタはジャンじゃないの?」
「ジャン・ハボックではあるけどアンタの弟のジャンじゃないっス。オレには姉貴はいないっすから」
そう言われてクリスはハボックをじっと見つめる。それからロイの顔をじっと見つめるとポツリと言った。
「確かにアンタはジャンじゃないし、貴方もマスタング大佐じゃないわ。ジャンはもっと可愛いし、マスタング大佐だって
クリスはそう言うと手近の椅子にぽすんと腰を下ろす。それから力なく笑うと言った。
「で、私はどうすればいいのかしら?」
そう聞かれてハボックとロイは困ったように顔を見合わせたのだった。


2008/05/17


→ 
 ←