| 平行世界4 |
| 「まったくジャンったらちっとも連絡寄越さないで…。それもこれもあのエロオヤジの所為に違いないわ」 ズンズンと東方司令部の廊下を歩きながらクリスは呟いた。クリスは今、出張で東方司令部に来ている上司に同行してイーストシティへとやってきたところだった。 以前、東方司令部に来た時、偶然弟のハボックが上司であるところのマスタング大佐と付き合っていることを知った。当然大反対してハボックを南方に連れて行こうとまでしたのだが。 『誰よりも愛している』 『オレも大佐のことが好きだ』 二人の本気を知って不本意ながらも二人の仲を認めた形になったのだが。 「だからって賛成したわけじゃないのよ」 ここに来たからにはマスタングには一言言わずにはおられない、そんな事を考えながらクリスが司令室への角を曲がった時。 グラリと地面が揺れた。それに続いて回りの景色もぐにゃりと揺れたかと思うとあたりを眩い光が包み。 「きゃあっ?!」 両腕を顔を庇うようにあげたクリスは光が消えたのを感じるとゆっくりと腕を下ろす。 「何、今の」 きょろきょろとあたりを見回すが、何も変わったこともなく忙しげに軍人達が行き交うだけだ。クリスは暫くの間様子を伺っていたが、何事も起きないと判るとゆっくりと歩き出す。疑問に思いつつも司令室に辿り着けば考えてもせん無いことは頭から追い出し勢いよく扉を開けた。 「ジャンっ!」 目の前に飛び込んできた金髪にクリスはそう呼びかけるとツカツカと歩み寄る。背の高い男をキッと見上げると言った。 「アンタって子はどこまで私に心配かければ――」 そこまで言ってクリスは思わず言葉を飲み込む。空色の瞳を見開いてじっと見つめれば、突然怒鳴りつけられた男、ハボックが困ったようにへらりと笑った。 「ええと、オレの何を心配してくださったんでしょう」 ハボックはそう言うと頭を掻く。クリスを見つめると言った。 「あの、失礼ですがどちら様かなっと…」 そう言うハボックの胸倉をクリスは鷲掴む。グイとハボックを引き寄せるとその顔を覗き込んだ。 「ジャン、アンタいつからそんな品のないガラの悪い顔になったのっ?」 「はあっ?!」 「あんなに可愛かったのに…。判ったわ、それもこれもあのマスタングの所為ねっ!」 よくもあのエロオヤジっ!と歯軋りする美女にハボックは目を見開く。グイグイと締め付けるクリスの手を押さえると言った。 「ちょっ…あの、落ち着いてっ…つか、ガラの悪い顔ってなんスかっ?!」 「おだまりっ、ああもう、こんなになっちゃって…」 クリスがそう言ってハボックの頬を撫でた時、背後から冷ややかな声が聞こえた。 「ハボック、そのご婦人は誰だ」 「あっ、たいさっ」 ハボックの言葉にクリスは慌てて振り向く。ハボックを睨んでいる黒い瞳を見ると言った。 「このエロオヤジっ!よくも私の大事な弟を――」 「エロオヤジ?」 怒鳴りかけて目にしたロイに思わず口を噤むクリスにロイがムッと顔を歪める。 「エロオヤジとはどういう――」 「ちょっと貴方なんのつもり?」 「…え?」 ハボックの襟首を離してまじまじと見つめてくるクリスにロイは思わずキョトンとする。クリスはロイとハボックの顔を交互に見比べて言った。 「ちょっと一体これ、どういう冗談なの?ジャンも貴方も、一体どうなってるの?」 「え?え?」 目を吊り上げて問い詰めてくるクリスに、何がなんだか判らずにポカンとするロイとハボックだった。 2008/05/16 → 5 3 ← |