平行世界3
 
 
「どうなってんだよもう、訳わかんない
へたり込んで空色の瞳を見開き呆然と呟くビリーに司令室の面々が顔を見合わせる。ハボックはビリーの前にしゃがみこむとその顔を覗き込んだ。
「名前、なんていうの?」
「え?ウィリアム・ハボック」
「ウィル?」
「いや、ビリーって呼ばれてる」
ポツポツと質問に答えるビリーにハボックは優しく尋ねる。
「ビリー、さっきオレをジャンって呼んだろ? 名前もハボックだし、オレの事知ってるの?それにここ、東方司令部の司令室なんだよね。どうやって入ってきたのかな?」
小首を傾げて尋ねるハボックにビリーは何度か唾を飲み込むと答えた。
「だってだってジャンは俺の兄貴で俺、ロイさんに会いたくてイーストシティに来て
「兄貴? 大佐に会いに来たって。じゃあ、ここへはどうやって?」
「入口でジャン・ハボックに会いに来た弟だって言ったら通してくれた」
それを聞いたブレダが顔を顰める。
「顔パスかよ。そりゃハボとよく似てるけど
「警備上問題ありだな」
腕組みしてそう呟くロイをビリーは見上げて泣きそうに顔を歪めた。
「せっかく会いに来たのに、ロイさん、変なオヤジになってるしブレダ、俺のこと知らないって言うし、ジャンだってっ」
「ああ、よしよし。大丈夫だから、泣くな、ビリー」
オヤジという言葉に反応して何か言おうとするロイを押し留めて、ハボックはクシャクシャに顔を歪めるビリーの肩を抱いてそう言うとロイを見上げる。
「ねぇ、大佐。これって例の
「その可能性大だな」
ハボックの言葉に頷くとロイはビリーに言った。
「おい、パラレルワールドというのを聞いたことがあるか?」
「パラレルワールド? 本で読んだことあるけど。幾つもの世界が平行して存在してて、その世界にはそれぞれ同じ人が住んでるって言うヤツだろ?」
「そう。で、ここはお前の住む世界と平行して存在しているパラレルワールドというわけだ」
ビリーはロイの言葉に引きつった笑いを浮かべる。
「そんな事言って、パラレルワールドなんてただの想像の世界だろ? ホントに存在するわけ
挑むようにそう言ったものの黙りこくって見下ろしてくる幾つもの視線にビリーは押し黙った。暫くして震える声で呟く。
「うそだろそんなこと、あるわけ
「ホントなんだよ、ビリー。オレも吹っ飛ばされたことあるんだ。多分、ビリーの住んでる世界に」
肩を抱いたままそう言うハボックをビリーは信じられないと言うように見つめた。そして、感情は信じたくないというものの、理性は今目の前にいるハボックが自分の兄ではないことをはっきりと理解していることに気付いてしまう。
「そんな
がっくりと力の抜けたビリーの体を支えてやりながらハボックはロイに言った。
「大佐。ビリーがここにいるって事は誰かが向こうに行ってるってことっスよね。誰が飛ばされたんでしょう」
「ビリーは向こうのハボックの兄弟なんだろう? だったらお前の姉妹が飛ばされたと考えるのが妥当だろうな」
「姉貴たちの誰か
ロイの言葉にそう呟いてハボックは眉を寄せる。
「何だか嫌な予感がする。ハボ達に迷惑かけてなきゃいいけど」
ハボックはビリーの金色の頭を優しく抱えながら心配そうに言ったのだった。


2008/05/15


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