平行世界2


「いい加減にしろっ! 大体貴様何者なんだっ?!」
 ロイは襟首を掴む手を振り払うと目の前の金髪の男を睨みつける。ビリーも負けじと睨み返しながら怒鳴った。
「俺はウィリアム・ハボックだっ! お前こそ何なんだよっ、本当のロイさんをどこへやったっ?!」
 そう怒鳴るビリーをロイはまじまじと見つめる。
「ハボック…?」
 告げられた名を繰り返してよく見れば、確かにその空色の瞳といい蜂蜜色の髪といい、自分の愛する部下によく似ている。二人の様子を見守っていたブレダ達もビリーの顔を覗き込むと言った。
「ハボックって、さっきもちょっと似てるとは思いましたけど…お前ハボの親戚か何かか?」
 そんな風に言われてビリーはビックリしてブレダを見る。
「やだな、ブレダ。いい加減イジワルやめろよ。そこまで知らないフリしなくたっていいだろ?」
「フリって、いや、実際お前のこと知らねぇし」
 そう言うブレダの顔が大真面目でとても自分をからかっているわけではないのだと見て取ると、ビリーは大きく目を見開いた。よろよろと後ずさると皆の顔を見渡す。
「うそ…どういうことだよ…ブレダ、俺のこと知らないって…ロイさんだって別人だし…」
 スーッと蒼褪めるビリーの様子に流石に心配になってロイが声を掛けようとした時。
「なにやってんの?みんな」
 ハボックが司令室の扉を開けて入ってきた。
「あ、ハボ」
「なに、一体どうし――」
「ジャンっ!」
 司令室を包む異様な空気に、ハボックがブレダに尋ねようとした時、ビリーの口から声が上がる。驚いたハボックが自分の名を呼んだ人物へ視線を向けると、ビリーはホッとしたように力を抜き、そして。
「え?ジャン…?」
「そうだけど、どちらさん?」
 にっこりと微笑む見慣れているはずなのに全く知らないその笑顔に、ビリーはヘナヘナと座り込んだのだった。


2008/05/14



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