平行世界16
 
 
「おい、ハボ。いつまでそうやってんだよ」
ブレダはそう言うと馬乗りに跨った椅子の背に顎を載せる。目の前のベッドにはブランケットの小山が1つ。ブレダの問いに答えてくぐもった声が聞こえた。
「うるさいっ、オレはもう誰にも顔、合わせられないんだっ」
朝っぱらからどんどんと扉を叩く音にブレダが扉を開けると真っ赤な顔をしたハボックが立っていた。ハボックは何も言わずにブレダを押しのけて中へと入ると、ブランケットの中に潜り込み、それ以来ずっとそこで丸まっているのだ。どうせまたくだらない痴話喧嘩だとは思ったが、それでも訳を聞いてみれば抱かれているところをビリーに見られたとか何とか。しかもそれをロイが気付いていながら自分には教えてくれなかったと恨み言を並べるハボックに、ビリーが来てからろくにハボックに触れられないロイがとる暴挙としては簡単に想像がつくだろうとブレダは思ったが懸命にも口には出さずにいた。
「二人のことぶん殴ったんなら、もうそれで気が晴れただろうが」
「気は晴れたって恥ずかしさが消えるわけじゃないもん」
モゴモゴと答えるハボックに何を今更とブレダは思う。それでも一応宥めようともう一度口を開こうとした時、ドンドンと扉を叩く音がした。
「ほら、迎えが来たぜ」
「帰れって言って」
そう答えるハボックにブレダはため息をつくと玄関に向かう。扉を開ければ挨拶もなしにロイとビリーが家の中に飛び込んできた。
「ハボックっ、私が悪かった!」
「ジャン、ごめん。だから一緒に帰ろう!」
二人は口々に叫びながらハボックの機嫌を取ろうとする。
(落ち着くまでほっといた方がいいと思うけどなー)
鬱陶しいほどにやかましい二人に、ブレダがそう思った時。
「煩いなっ!オレはもう恥ずかしくて消えちまいたいんだからほっといてくれっ!」
ガバリとブランケットを跳ね除けてハボックが叫んだ瞬間。床がグラリと揺れて、カッとあたりを眩い光が覆った。
「うわっ?!」
「なっ?!」
そうしてゆっくりと光が収縮したその場所には。
これは一体どういうこと?」
ポカンとしてベッドに座り込んだクリスの姿があった。


2008/05/28


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