第四話


 暫くの間、悪戯にハボックの体に愛撫を咥えながらその長身を抱き締めていたロイだったが、ドンドンと扉を叩く音に顔を顰める。わざわざロイが錬金術で扉を密閉までしているところに、こんな無遠慮に割り込んでこようとする人間がそうそういるとは考えられないから、恐らく扉を叩いているのはあの副官に違いなかった。
「くそ、ゆっくり話す時間も作れんのか」
 ロイは忌々しげにそう呟くと浅く沈めていた指を引き抜く。ビクンと震えるハボックを見下ろすと言った。
「奥のシャワーを使え。立てるか?」
「大、丈夫っス…」
 ハボックは差し出されたロイの手を一瞬の躊躇の後、取る。グイと引き起こされて、フラフラとしながらロイ専用の仮眠室の横に備え付けられているシャワールームへと向かおうとした。ロイは扉へ歩み寄ろうとした足を突然ハボックの方へと向ける。シャワールームへ入ろうとするハボックの肩を掴むとハボックの身体を引き寄せた。
「たい…っ」
 何事かと名を呼ぼうとする唇を己のそれで塞ぐ。舌を絡めきつく吸い上げ、口内を舌先で何度も嬲って唇を離した。
「たいさ…」
 驚いたように見開く空色の瞳をロイはじっと見つめる。それから低く熱い声で囁いた。
「愛している、ハボック。例えお前がなんであろうと、私の気持ちは変わらない」
「…いさ…ッ」
 そう言えば泣きそうに歪む唇にもう一度口付けてロイは今度こそ扉に向かう。ロイが錬成陣を描いた紙に手を伸ばすのを見てハボックは慌ててシャワールームへと入った。パタンと後ろでに扉を閉めてハボックは唇を噛み締める。手に持っていたボトムを落とし、上着とシャツを脱ぎ捨てるとブースに入ってコックを捻った。サアサアと降り注ぐ湯の滴が肌に当たるその刺激だけでも発情した身体はゾクゾクと震え、興奮に鳥肌がたつ。ハボックは震える体を腕でギュッと抱き締めた。そうすればついさっきロイにきつく抱き締められた感触が蘇える。
『愛している』
 そう囁いた声すら思い出されてハボックはきつく唇を噛み締めた。
「ダメだ…もう、傍にいちゃいけないんだ…」
 ハボックは浅ましく発情した身体を抱き締めてそう呟く。頭に響く声に緩く首を振るとシャワーを止めた。そうして体を拭いて服を身につけると、誰もいない執務室を抜けて司令室へと出る。珍しくいつものメンバーがいない中、机の引き出しから紙を取り出すと手早くしたため部屋を出た。途中で目に付いた事務官に書いたばかりの紙を届ける様に頼むと、その足で司令部の扉から出て行ったのだった。


2009/03/05


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