第十一話


「ハボ……ジャク…っ」
 己を睨みつける男を目にした瞬間、振り返ったロイの唇から零れるように言葉がついて出る。会ったことのないその男を、だがロイはよく知っていた。
 ハボックと同じ空色の瞳、蜂蜜色の髪。神が戯れで創り出したようなその完璧な造形は、ハボックと寸分違わぬものでありながら全く似ていなかった。
 何も言わずにただ睨みつけてくる男をロイもただ睨み返す。暫くの間そうして睨み合っていた二人だったが、やがてロイが口を開いた。
「ハボックはどこだ?」
「どうして俺に聞く?」
 ロイの質問は己がハボックの行方を知っていると前提しての問いかけだ。
「俺が知っているとは限らないだろう?」
「ハボックはお前のところにいる。そうだろう?」
 知っているとも知らないとも言う前にそう断定するロイにジャクは目を瞠る。その目をスッと細めて尋ねた。
「どうしてそう思うんだ?」
「アイツが行くとしたらお前のところしかあり得ない」
 ロイはそう答えて続ける。
「私はハボックを探している。居場所を教えろ」
「教えたらどうする気だ?」
「連れ戻す」
 尋ねれば間髪入れずに返る答えにジャクは目を見開いた。それから手をギュッと握り締めてロイを睨む。憎しみすらこもった苛烈な空色を受け止めてロイは繰り返した。
「連れ戻す。居場所を教えろ」
「断る…ッ」
 ロイの言葉に今度はジャクが即答する。ジャクは怒りに全身の毛を逆立て、唸るように言った。
「断る。ジャンはお前のところへは返さない。あれは俺のもんだ…ッ」
 そう言い捨ててジャクはロイに背を向けて走り出す。
「ジャクっ、待てッ!!」
 咄嗟に追いかけたものの、背の高い姿はものすごいスピードで走り去り瞬く間に見えなくなってしまった。
「くそ…っ、……ハボックっ」
 ジャクを見つけだせばそこにハボックもいる。ロイはハボックを取り返す為に彼と瓜二つの姿を探し続けた。


2010/05/12


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