セレスタの涙、オニキスの誓い  第七十二章


 ブラッドレイは暫くの間窓の側から動かずにベッドの上に横たわるハボックを見つめていたが、やがてゆっくりと近づいていく。降り注ぐ月の光の中、静かに眠るハボックは人形のようだった。
「少尉」
 ハボックの白い頬を撫でながらブラッドレイはハボックを呼ぶ。だが、ハボックが目覚める様子がないのを見て、ブラッドレイはねっとりと口づけた。舌先で唇をこじ開け口内に舌をねじ込む。舌を絡め呼吸を奪うようなキスを与えればハボックが苦しげな息を漏らした。
「……っ」
 本能的にだろう、空気を求めてもがく躯を押さえつけてブラッドレイはハボックの唇を貪り続ける。ヒクッと喉が鳴る音を耳にして漸く唇を離したブラッドレイの隻眼に、うっすらと開いた空色が映った。
「少尉」
 苦しさからか、涙の膜を張る瞳を覗き込んだブラッドレイはそこになんの感情も浮かんでいないことに気づく。指先でそっと涙を拭ってやりながらブラッドレイは言った。
「可哀想に。アエルゴでマスタングの為に華々しく散るのが望みだったんだろう?だが、どうせあの若造はお前のそんな気持ちなど気づきもせずに、危険な場所から既のところで救い出したと自己満足に浸っているのだろうな」
 クツクツと楽しげに笑ってブラッドレイは囁く。優しくハボックの頬を撫でながら続けた。
「奴はどうやってお前の心を取り戻すつもりなのだろうな。大事に大事に包み込んで、愛してると囁くか?」
 そう言ったブラッドレイは浮かんだ考えがさも可笑しいと言うようにククッと笑う。頬を撫でていた手で首筋を辿り鎖骨の窪みを擽りながら言った。
「マスタングが優しく接することでお前の心を取り戻そうと言うなら、私は荒療治をしてみようか。それで正気を取り戻したらさぞ悔しがるだろう」
 ブラッドレイは隻眼を細めてハボックを見つめる。
「正気に戻らないとしても、自分のすぐ側で再び愛しい部下が汚されたと知った時のマスタングの顔が見物だ」
 低く囁いたブラッドレイの優しく鎖骨を弄っていた指が、不意に別の意志を得て白い肌を抉った。薄い皮膚を剥ぎ取りその下の肉を毟れば滲み出た血が指先を濡らす。ブラッドレイは血の付いた指先を病院お仕着せの寝間着の襟元にかけるとグイと左右に開いた。
「さあ、楽しませてくれ、少尉」
 そう囁いたブラッドレイの影がハボックに覆い被さり、射し込む月光からハボックの表情を隠した。


 本を読んでいたロイは視線を上げると疲れた目を指先で揉み解す。その程度では疲れが取れないと判ると、ロイは立ち上がって窓辺に寄った。閉めていたカーテンを引けば煌々と光る大きな月が空にかかっているのが見える。
「凄いな」
 禍々しい程に輝く月は星の輝きを飲み込んで天空を支配し、更に降り注ぐその光で世界そのものを覆い尽くそうとしているようだ。
「……嫌な月だ」
 その光を浴び続けていれば月の毒に侵されてしまいそうな気がして、ロイはシャッとカーテンを引いた。椅子の上に置いた本を取り上げ腰を下ろす。再び本を開いたものの閉じたカーテンを貫く月の視線を感じて、ロイは本を読み進めることが出来なかった。


 ハボックの寝間着を剥ぎ取り素肌を晒すと、ブラッドレイは長い脚を押し上げ大きく開かせる。こんな風に恥部を晒されたら以前であれば羞恥に震えたであろうが、ハボックは全く反応を見せずぼんやりと宙を見つめているだけだった。
「フン……」
 片眉を跳ね上げてブラッドレイは感情のないハボックの顔を見下ろす。片手を開いた股間の奥へと差し入れ、双丘の狭間で息づく蕾に指を這わせた。やわやわと入口を弄るとグッと指先を押し入れる。潤いのない下の口を無理矢理にこじ開ければ、ハボックの躯がビクリと震えた。
「躯は覚えているか」
 男との経験がなかったハボックを上官を想う気持ちを盾に無理矢理その躯を開いて、犯される悦びを教え込んだのは他ならぬブラッドレイだ。嫌だと心ではブラッドレイを拒んでいながら与えられる快楽を拒むことが出来ず、泣きながら凶悪な牡を受け入れていた。ロイを想いながら躯は快楽に溺れ、そんな己を責め続けていたハボックを思い出してブラッドレイはニンマリと笑った。押し込んだ指で蕾を容赦なく掻き混ぜる。そうすればビクビクと震える躯を押さえ込み、ブラッドレイはもう一本指を押し込んだ。
「……ッ」
 痛みにハボックの喉がヒクリと音を立てる。押し込んだ二本の指同士を離すようにして、ブラッドレイは強引に蕾を割り開いた。
「────ッ!」
 こじ開けられる痛みにハボックの脚が震える。本能的に閉じようとするのを赦さず、ブラッドレイは三本目の指をねじ込んだ。グチグチと掻き回せばハボックの口が大きく開き喉を仰け反らせる。容赦なく掻き回した指を乱暴に引き抜くと、ブラッドレイはボトムの前を弛めた。
「恐怖に怯える顔が見られんのは残念だが」
 ブラッドレイはそう囁いてハボックの脚を大きく開き高々とそそり立つ巨根を蕾に押し当てる。
「これはこれでそそられる」
 ククッと喉奥で嘲笑(わら)って、ブラッドレイはグッと腰を突き入れた。
「ヒ……ッッ!!」
 ズブズブと強引に押し入ってくる凶器に、ハボックの喉から掠れた悲鳴が上がる。喉を仰け反らせ空色の瞳を見開いて身を強張らせるハボックを、ブラッドレイは乱暴に突き上げた。
「ヒィィ……ッッ!!」
 強引な挿入を受け止められず小さな蕾が裂けて、白いシーツに点々と血が滲む。痛みから逃れようともがく躯を押さえつけ、ブラッドレイはガツガツと乱暴に突き上げた。
「く……ッ、ハァ……ッ!!」
 引き裂かれ犯される痛みにハボックの喉から振り絞るように声が零れる。それでも何度目かにブラッドレイが突き入れた時、滾る楔に前立腺を抉られてハボックの躯が大きく跳ねた。
「ヒャ……ァッッ!!」
 繰り返し同じ場所を突き上げれば押さえ込んだ躯が面白いように跳ねる。空色の瞳が与えられる快楽に潤むのを見て、ブラッドレイは低く笑った。
「哀れな」
 閉ざされた心は望まぬ相手に無理矢理犯される痛みを感じる術もなく、純粋に快楽だけを感じ取る躯が哀れを誘う。何度目かに突き入れた時びゅるりと熱を吐き出したハボックの最奥に、ブラッドレイは熱を叩きつけた。


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