セレスタの涙、オニキスの誓い  第五十五章


 ワアッと怒声とも喚声ともつかぬ声があちこちであがる。それに答えるように激しい銃声と砲弾の音が広い戦場に響きわたった。
 ハボックは塹壕の陰から飛び出すと押し寄せる敵に向かって銃を撃ち放つ。銃を撃ち、走り、そしてまた走るハボックは機械のように目の前の敵を的確に倒していった。激しい銃撃を受けて敵の一部が雪崩を起こしたように崩壊する。ここぞとばかりに崩れた箇所を集中的に攻撃すれば、ハボックたちの前に敵の足並みは乱れ押し戻された。
 それでも何とかこちらへ攻め入ろうとする敵に向かって、ハボックは腰から引き抜いたナイフを翻す。薙ぐように払ったナイフをそのまま横へ腕ごと動かせば、ブチブチと肉を引きちぎった刃が真っ赤な血に染まった。
 ドサリとただの肉の塊になった体が地面に落ちる。動かなくなった体に一瞬視線を向けたハボックは、耳を打つ狂気を帯びた叫び声に俯けていた顔を上げた。
「ウガアアアアッッ!!」
 撃ち尽くしたライフルを白兵の武器に変えてハボックに向けて撃ち下ろそうとする敵の額を、ハボックは銃で打ち抜く。撃たれたことが信じられないと言うように大きく目を見開いて地面に倒れ伏す兵士を、ハボックは空色の瞳で見つめた。
(なんで)
(なんでオレじゃないんだ)
 ハボックがそう思ったとき、耳元を銃弾が掠める。ハボックを掠めた銃弾はすぐ側に立っていた味方の兵士の脳天を撃ち抜き、兵士は声もあげずに地面に頽れた。
「うわああッ!ジョーンズッッ!!」
 それを見た別の兵が上げる悲鳴をハボックはぼんやりと聞く。更に敵兵がハボックたちに向かって銃を撃とうとするのを見て、ハボックは地面を蹴って敵兵に駆け寄った。
(早く)
(早く、その銃で)
「殺せよ」
 ハボックは縋るように敵兵を見つめてナイフを構える。銃声が長く響いたあと、倒れた男を見下ろして立っていたのは血塗れのナイフを手にしたハボックだった。
(なんで)
(なんでだ)
 ハボックは何度も何度も問いかけながら銃を撃ちナイフを振るう。太陽が傾き戦場に響きわたっていた銃声が途切れた時、血のような夕日に全身を紅く染めてハボックは立っていた。
(ああ)
(まだ)
 ────イキテル。
 そう呟いたハボックの瞳から零れた涙が、夕日を受けて血のように煌めいた。


「ちきしょうッ!!どうしてジョーンズが死んでお前が生きてやがるんだッッ!!」
 戦闘が終わり僅かばかりの灯りに照らされた野営地に喚き声が響く。ガッと鈍い音と共に顎に衝撃を受けたハボックは、地面に倒れ込んだ。
「ジョーンズを盾にしやがったなッ?報復のつもりかッ?ああ?」
 殴った男は倒れたハボックの上に馬乗りになってハボックの躯を押さえつける。なにも言わないハボックに怒りを募らせる男に、周りを取り囲んでいた別の男が言った。
「落ち着け、キーツ」
「落ち着いてられるかッ!ジョーンズが死んだんだぞ、サンダースッ!!こいつのせいでッ!!」
 キーツと呼ばれた男はハボックの肩を掴んで地面から引き上げると、ガンッとハボックの頭を地面に打ちつける。低く呻いたものの抵抗する素振りを見せないハボックを更に打ちつけようとするキーツを、サンダースは腕を引いて止めた。
「止めるなッ!思い知らせてやらなきゃ今度は俺たちが危ない……ッ」
「だったら他の方法で思い知らせりゃいいだろ?なあ、ディック」
「ああ、徹底的に躯に教えりゃいいんだよ」
 サンダースの言葉を受けてもう一人の男が言う。下卑た笑みを浮かべて見下ろしてくるサンダースとディックを見上げて、キーツもいやらしい笑みを浮かべた。
「なるほど、確かに、その通りだな」
 キーツはそう言うとハボックを見下ろす。ただ静かに見上げてくる空色を見つめて、キーツは言った。
「ハボック。二度と馬鹿なことを考えないよう、その躯にみっちり教えてやる」
 そう言ってもハボックは怯えた様子もなくただキーツを見つめる。その瞳にキーツは苛立ちを覚えて、ハボックの頬を思い切り張った。
「ふざけた態度をとっていられるのも今のうちだぞ、ハボック……ッ!!」
 歯を剥いて低く囁いたキーツの手がハボックのボトムにかかった。


「んああッッ!!」
 四つに這った躯を背後から貫かれて、ハボックは喉を仰け反らせて喘ぐ。ズブズブと押し入ってきた楔に遠慮の欠片もなく狭い秘窟を掻き回され抉られて、ハボックはガクガクと震えながら地面を掻き毟った。
「男にケツを犯されて悦ぶ淫乱のくせにッ!!ああ?善くて堪んねぇんだろッ?きゅうきゅう締め付けてくるぜ!」
 ガツガツと突き挿れながらキーツは罵る。ハボックの髪を掴んで引き上げながらガツンッと奥を突き上げた。
「ヒアッ!!」
 衝撃にハボックの唇から悲鳴が上がり、そそり立っていた楔からびゅるりと飛び散った白濁が地面に吸い込まれる。ハアハアと苦しげに息を吐くハボックの顎を、サンダースが掬い上げて言った。
「気持ちイイだろ?死ぬかもしれないって恐怖を忘れさせてやってんだ。恨むどころか感謝して欲しいぜ、ハボック」
 ククッと笑ってサンダースは苦しげな息を零すハボックの口に醜悪な楔をねじ込む。ハボックの前後の口に己のイチモツをねじ込んで恍惚とした表情を浮かべている仲間に、ディックが不満げな声を上げた。
「おい、お前ら。いい加減場所空けろっての!俺だってぶち込んでやりてぇんだよッ!」
 下肢を剥き出しにしたディックの股間で赤黒く光る楔が、物欲しそうに先走りの蜜を零しているのを見てキーツが笑う。
「なんだよ、涎垂らしてんのか?ディック」
「うるせぇ、いつまで待たせんだ?いい加減代われッ!」
 これ以上待てないと、ディックはキーツを押しやろうとする。そうすればキーツはハボックを犯す動きを休めずに言った。
「挿れちまえよ」
「え?」
 言われた意味が判らずディックはキョトンとする。そうすればキーツはニヤニヤと笑いながら言った。
「脇から挿れちまえ。この淫乱なら二本ぐらい楽々飲み込むぜ、きっと」
「…………そいつはいい」
 キーツが言っている意味を理解してディックはにんまりと笑う。既に二人の男に犯されているハボックの腰を引き寄せ、そそり立つ楔を近づけた。
「入るか?」
 いざ挿れようとしてその蕾の小ささにディックは眉を寄せる。そうすればキーツは笑って言った。
「平気だって。早く突っ込みたいんだろ?」
「まあな」
 ディックが頷くのを見て、キーツは身を捻るようにしてハボックの真後ろから体をずらす。僅かに出来た隙間に、ディックはゴクリと唾を飲み込むと楔を押しつけた。
「挿れるぜ」
 低く囁いたディックは何度か挿れ損なった後、狭い隙間に赤黒い楔を強引にねじ込んだ。
「ッッ!!ンッ、んぐぅぅぅーーーーッッ!!」
 既に男のモノを咥え込んだ蕾に更に楔を突っ込まれ、ハボックは激痛に悲鳴を上げる。サンダースのイチモツを頬張った唇の隙間から悲鳴を零すハボックに男たちは下卑た笑い声を上げた。
「すげぇ、中がうねって吸いついてくるぜッ!」
「堪んねぇッ!!食いちぎられそうだッ!!」
「お前ら、ひでぇことするなぁ!」
 ゲラゲラと笑う男たちに滅茶苦茶に犯されながら、ハボックは頭上に広がる星空を見上げる。
(明日は)
(死ねるかな)
(明日こそ)
 男たちの熱に内も外も汚された躯が、明日こそはその機能を全て停止して土埃に塗れる事を願いながら、ハボックはそっと目を閉じて視界から星空を追い出した。


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