セレスタの涙、オニキスの誓い  第四十五章


「ハボックを大総統のイーストシティ滞在中、事務官として、ですか?」
 ブラウンは確かめるように電話の相手に繰り返す。
「しかし、ハボックはまだ訓練中の身ですし、出来れば他の者を────」
 当てて欲しいと言いかけるブラウンの言葉を遮って「これは決定事項だ」と告げる相手に、ブラウンはため息をついた。
「判りました。それなら書類を回して下さい。──え?いや、ですが……、──── 判りました」
 大総統の名を振りかざして強引に話を進められ、ブラウンは押し切られる形で渋々と頷く。そうすれば、ガチャンと切れた電話に、ブラウンは思い切り顔を顰めた。
「まったく、なにが大総統だ。また訓練が遅れてしまうではないか」
 そうでなくとも射撃大会後セントラルから戻ってくるのが遅かったのとその後の体調不良のせいで、ハボックの訓練は他の新兵よりだいぶ遅れてしまっている。やれやれと受話器をフックに戻してブラウンは椅子の背に体を預けた。
「気に入ってくれるのはいいが、訓練の邪魔をするのはどういう了見だ?ペットじゃないんだ、ちゃんと訓練せんでどうする」
 ボソリと呟いた言葉が今ハボックの身に降り懸かっていることを端的に言い当てていることには気づかず、ブラウンはうんざりとしたため息をついた。


 ロイがガリガリと書類を書き込んでいれば、ノックの音がしてホークアイが執務室に入ってくる。サインが欲しいと書類を差し出され、ロイは顔も上げずに書類を引っ手繰った。内容を確認しようと書類をめくろうとすれば、苛立ちに震える手はページを上手くめくれずロイは乱暴に舌打ちする。愛用の万年筆のペン先を引っかけて乱れたサインを認めるロイを見つめて、ホークアイが言った。
「気になるのでしたら迎えに行かれたら如何ですか?」
「迎えに?誰をだ?」
 ホークアイの言葉にロイはゆっくりと顔を上げる。昏い焔を宿す黒曜石にホークアイは綺麗な眉を顰めた。
「そうやって意地を張って、貴方はどうするおつもりですか?大事なものを本当になくしてしまってから後悔しても遅いということが、どうしてお判りにならないんです?」
「サインをした。提出しておいてくれ」
 ロイはホークアイの問いには答えず書類を差し出して立ち上がる。
「この後会議だったな」
「大佐」
 呼ぶ声に責める響きが宿るのを聞き逃さず、ロイはホークアイを見た。
「会議に出ると言ってるんだ。文句を言われる筋合いはあるまい?」
 そう言って執務室を出ていくロイの背を見送って、ホークアイは深いため息をついた。


「サー、もうすぐ会議のお時間です」
 書類を手に部屋に入ってきたハボックがそう言うのを、ブラッドレイは椅子に深く背を預けたまま見上げる。立ち上がる気配がない男に、ハボックは困ったように眉を寄せた。
「サー、あの……」
「少尉」
 促す言葉をハボックが紡ぐ前にブラッドレイがハボックを呼ぶ。一瞬躊躇ってからハボックはゆっくりとブラッドレイの側に歩み寄った。
「あっ」
 そうすれば伸びてきた手がハボックを乱暴に引き寄せる。ブラッドレイはハボックの体を俯せに机に押さえつけると、ボトムに手をかけた。
「サー!」
「大人しくしていたまえ」
 思わず声を上げるハボックにピシリとそう告げると、ブラッドレイは下着ごとボトムを膝までずり下げる。抽斗からジェルのチューブを取り出して蓋を外し、ハボックの蕾に押し当てジェルを押し出した。
「んんッ」
 ぬるりと冷たいジェルが入ってくる感触に、ハボックは顔を顰める。それでも抵抗する素振りを見せないハボックに、ブラッドレイは唇の端を持ち上げて笑うと蕾に中指を押し込んだ。
「ッ!!」
 ビクッと震えてハボックは身を強張らせる。それに構わずブラッドレイは押し込んだ指をぐちゅぐちゅと掻き回した。
「くぅ……ッ」
 ギュッと机の端を握り締めて耐えるハボックの後孔を好き勝手に掻き回して、ブラッドレイは指を抜く。抽斗の中から小さなボール状のローターを取り出し、ジェルを塗すとハボックの蕾に押し当てた。
「……やっ」
 冷たい無機物の感触にハボックが顔を歪めて小さく首を振る。それでも振り払うでなくなすがままに身を任せるしかないハボックを見つめながら、ブラッドレイはローターを容赦なく中へ押し込んだ。
「アアッ!!」
 まだ開ききらない蕾を強引に押し開いてぬぷんと躯の中に潜り込んでくる異物に、ハボックが目を見開く。グイと奥まで押し込んで、ブラッドレイは手に残ったジェルをハボックの脚に擦りつけて落とすと立ち上がった。
「ああ、そうだった。少尉は我慢のきかない躯だったな。うっかり粗相をしないよう、これをつけておいてやろう」
 ブラッドレイはそう言って震えるハボックの躯を乱暴に表に返すと、まだ反応を見せていないハボックの楔に金色のリングを填めてしまった。
「さっさと支度をしたまえ。会議に遅れる」
「…………はい、サー」
 消え入るような声で答えてハボックは机から身を起こす。震えながら引きずり下ろされたボトムを直しベルトを締めた。
「お、待たせ、しました、サー」
 微かに震えながらもハボックはそう言ってブラッドレイを見る。よく見れば僅かに目尻を染めてはいるものの、パッと見ただけでは後孔にローターを仕込まれ、楔には射精を禁止する為のリングを填められているとは全く判らなかった。ブラッドレイは抽斗から薄いカード状のリモコンを取り出す。弄ぶようにカードの表面を撫でた指先がリモコンのスイッチを押した。
「ヒ……ッ!!」
 その途端ビクッと震えたハボックが机に手をついて躯を支える。低いモーター音とともに躯の内部で動き回るローターに、ハボックは唇を噛み締めて耐えた。そうすれば少ししてフッと動き回るローターが止まる。まだ体内でその存在を主張してはいるものの、凶悪なまでの動きが止まったことでホッと息を吐き出すハボックを見て、ブラッドレイは楽しそうに言った。
「では行こうか、少尉」
「──── イエッサー」
 ハボックは震える声で答えると、部屋を出ていくブラッドレイの後を追った。


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