セレスタの涙、オニキスの誓い  第二十六章


 クローゼットの中で息を潜めていたマドラスは、ガチャリと寝室の扉が開く音を耳にしてハッとする。短い悲鳴に続いて、ブラッドレイの声が聞こえた。
「尻を捲くって脚を開け」
 その言葉を聞いてマドラスは内心ため息をつく。国の支配者である男の濡れ場を一部始終聞く羽目になってしまったことを嘆きながらもどうすることも出来ず、せめて少しでも聞かずに済むよう塞いでしまおうかと思った耳に聞こえた声にマドラスは「えっ」と目を見開いた。
「苦しいです、サー……イかせてください……」
 聞こえたのはあの秘書の声ではなく男の声だ。どういうことだとマドラスは狭いクローゼットの中で必死に耳を澄ませた。
 ギシリとベッドが軋む音に続いて、苦しげな息遣いとジュブジュブとイヤラシい水音が聞こえる。なにをしているんだろうとクローゼットの扉に耳を押しつけたマドラスは、続いて聞こえた言葉に目を剥いた。
「随分と上手くなったな、少尉。これならマスタングも大喜びするだろう」
(少尉、だと?マスタングって……まさかっ?)
 マドラスは細心の注意を払ってクローゼットの扉を透かす。そうすればベッドに膝立ちになったブラッドレイの股間に顔を寄せるハボックの苦しげな顔が見えて、マドラスはこれ以上ないというほど目を見開いた。
(ハボック少尉……)
 呆然として見つめるマドラスの視線の先で、ブラッドレイがハボックの頭を押さえつけガツガツと乱暴に突き挿れる。少ししてブルリと体を震わせたブラッドレイは、ハボックの顔を己の股間に押しつけた。
「んぐゥ……ッ!!」
 苦しげに呻きながらもハボックはブラッドレイのなすがままだ。ハボックの喉が上下してゴクゴクと注がれたものを飲み込むと、漸くブラッドレイの手が離れた。
「ゴホッ、ゴホゴホッ!!」
 無理矢理精液を飲まされたハボックが激しく咳込む。ポロポロと涙を零しながらも訴えるようにブラッドレイを呼ぶハボックを扉の隙間から見たマドラスは、しどけなく開いたハボックの脚の間で真っ赤に張り詰めてそそり立つ性器が金色のリングで戒められていることに気づいた。
「益々デカくしてるのかね?すっかりイヤラシい躯になったものだ」
 部屋の隅に置かれた大振りな椅子に腰掛けたブラッドレイに嘲るように言われてハボックが羞恥に震える。それでも相当に苦しいのだろう、ハボックが震える声で懇願した。
「イきたい、イかせてください、サー……ッ!」
 ポロポロと涙を零しながらハボックが訴える。ハアハアと息を弾ませるハボックに飛んだ声に、マドラスはハボックに負けず劣らず目を瞠った。
「それなら尻に咥えたものを手を使わずに()り出したまえ。そうしたら君の好きなものをぶち込んでイかせてやろう」
 とんでもない命令に、それでももう抗う気力もないのだろう、ハボックはブラッドレイに命じられるまま脚を大きく開き、尻を突き出す。苦しげに呻くハボックの白い尻の狭間から卵状の淫具が顔を出すのを、マドラスは呆然として見ていた。
「大した眺めだ。これを見たらマスタングもさぞ興奮するだろう」
 嘲る言葉にハボックが啜り泣くのを聞きながらマドラスはそっとクローゼットの扉を閉める。クローゼットの奥に力なく寄りかかってマドラスは何度も唾を飲み込んだ。
(なんだ、これは。一体俺はなにを見てるんだ?)
 はっきりと見たにも関わらずどうしても信じられない。その時、ハボックの悲鳴のような嬌声が聞こえて、マドラスはギクリと体を震わせた。
「ヒィッ!!やだァッ!!どうしてっ?言われた通りに……ああッ!!」
 その声に被さるようにパンパンと肉同士が激しくぶつかり合う音がする。イヤラシい水音と共にブラッドレイの声が聞こえた。
「抵抗するか?私は構わんがね」
 冷たい声に答えるようにハボックが息を飲む。
「ごめんなさいッ、言うとおりしますッ、どうぞサーの好きに……ッ!!」
「そこまでマスタングが大事か?少尉。こうやって仕込まれている事を、マスタングが喜んでくれるといいものだな。それとも、汚らわしいと言うか」
 ククと低く笑う声とハボックの涙に濡れた喘ぎ声をクローゼットの中で聞いていたマドラスは、爪が刺さるほど手を握り締めて飛び出したい衝動を必死にこらえていた。


「出すぞ」
 ガツガツとハボックを突き上げてブラッドレイは言う。逃げる躯を引き戻してハボックの奥底に精を迸らせて、クローゼットの扉をチラリと見た。
(マスタングの差し金か?……いや、あの秘書官のくだらん嫉妬の方か)
 エレベーターを降り部屋に向かう途中、ここの扉から出ようとした青い軍服姿の人間が慌てて部屋に戻るのが見えた。敵意は感じられなかったからそのままにしておいたが、どうやらこの部屋のクローゼットの中に潜んでいるらしい。ブラッドレイ専用のこの部屋の鍵を使えるのは今のところ副官を除けば秘書官のエリゼだけだったから、おそらくブラッドレイの興味を失ったエリゼが嫉妬に狂ってハボックの関係者にこの部屋に潜んでいろとでも言ったのだろうとブラッドレイは考えた。
(丁度いい、そろそろマスタングに教えてやるのもいいだろう)
 ハボックがロイを想うのと同様、恐らくロイもハボックを想っているのだろう。己の想い人が自ら進んでその身を他の男に差し出していると知ったら、あの男はどんな顔をするだろう。
(折角のギャラリーだ。たっぷりと楽しんで貰おう)
 ブラッドレイはニヤリと笑うと、背後から貫いていたハボックの躯をグイと引き起こした。
「ヒアアアアッッ!!」
 そのままベッドに座り込みハボックを引き寄せる。ズブズブと自重で深々と貫かれ、ハボックの唇から悲鳴が迸った。
「苦し……ッ」
 ビクビクと躯を震わせてハボックが呻く。乱れたバスローブから覗く胸の飾りを指で捏ね回しながらブラッドレイは言った。
「尻を振れ。私をイかせたらその時はリングを外してやろう」
 その言葉にハボックの躯がピクンと震える。他に選択肢があるはずもなく尻を揺すり出すハボックの脚をブラッドレイは背後から大きく開いた。
「あっ、んっ!くふぅ……ッ、サーぁッ!」
「まだだ、全然足りんぞ、少尉」
 わざとらしくため息混じりに言えば、ハボックが泣きながら尻を振りたてる。ハボックの動きよりもその表情に煽られて嵩を増した楔で、ブラッドレイはハボックの中を掻き回した。
「まあいい事にしてこう、今中に出してやる」
 ブラッドレイはそう言うと同時にガツガツと激しく突き上げる。熱を吐き出す寸前、手を伸ばしてハボックの楔を戒めるリングをパチンと外した。
「ヒアアアアアッッ!!」
 そうすれば突然訪れた解放に、ハボックが高い嬌声と共にクローゼットに向かって白濁を迸らせた。


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