セレスタの涙、オニキスの誓い  第二十五章


「この部屋に何があると言うんだ」
 マドラスは渡されたキーで部屋に入ると中を見回して呟く。高価な調度品で飾られた部屋の中を抽斗を開けたり扉を開いたりして覗き回ったマドラスは、特に目を引くものもない部屋にフウとため息をついた。
「どこかに隠れて待っていろとか言っていたな」
 もしかしてこれからブラッドレイが来るのだろうか。そうであれば身を潜めて待っているなど以ての外、見つかればただでは済まないのではないかとマドラスは思う。ハボックの処遇が気になるのは確かだし、ブラウンに約束もしてはいるが、ここはやはり帰った方がいいと考えるのが賢い判断だとマドラスは遅ればせながら帰ろうと扉に向かった。だが、扉を押し開いて部屋から出ようとしたマドラスは、廊下の角を曲がってくる人影に気づいて慌てて扉を閉める。キョロキョロと部屋の中を見回して、目に付いた扉に向かって走ると中に飛び込んだ。マドラスが扉を閉めるのに数瞬遅れて部屋の扉が開く音がする。ホッと息をついたマドラスは、飛び込んだのが寝室と気づいて眉を寄せた。
「くそ、参ったな」
 逃げ込むならせめて入口近くのクローゼットにでもするんだったと思いながら、マドラスは仕方なしに寝室のクローゼットの扉をそっと開き中に身を隠した。
(まさかあの秘書官、大総統との濡れ場でも見せるつもりじゃないだろうな)
 自分が知りたいのはハボックの現在の処遇だ。それとも上手い具合にハボックの話を引き出して聞かせてくれるつもりなのだろうか。
(それならこんな手の込んだ事をしなくても司令部で聞かせてくれればいいんだ)
 こんな狭苦しいクローゼットの中に潜んでいるなんてと、酷く情けない気持ちになったマドラスはやれやれと小さくため息をついた。


 ハボックを伴ってホテルのエレベーターを降りたブラッドレイは、部屋に続く廊下の角を曲がったところで僅かに眉を顰めた。だが、それ以上は表情に出さず、何事もなかったように部屋に向かう。いつものようにハボックが先に立って扉を開けるのを待って部屋に入った。ドサリとソファーに腰を下ろすと、ハボックが差し出した冷たく冷やしたハーブティーのグラスを受け取った。グッと飲み干すとさっきのパーティーで飲んだ酒の酒精が抜ける気がする。側に控える青年の顔を見上げれば、時折苦しげに眉を寄せるのを見て口の()を持ち上げた。
「シャワーを浴びる」
「……はい、サー」
 短く言えばハボックが消え入りそうな声で答えて浴室に向かう。ハボックが用意を調えるのを待って立ち上がり浴室に足を向けた。脱いだ服を受け取るハボックに一緒に入るよう視線で命じ先に奥へ入る。湯気のこもった洗い場に入ればハボックがすぐに戻ってきた。
「失礼します、サー」
 ハボックはそう呟いてブラッドレイの体を流す。丁寧に洗う手が時折震えて止まるのを笑みを浮かべて見つめれば、それに気づいたハボックがキュッと唇を噛んだ。
 ブラッドレイがゆっくりと湯船に浸かる間、手早くハボックが自分の身を洗う。それが済むのを見て湯から上がるブラッドレイの体の滴をハボックがタオルで拭き取り、バスローブを着せつけた。
「なにか、お飲物は」
「いらん」
 同じようにバスローブを羽織って浴室から出たハボックが尋ねるのにブラッドレイは短く答える。
「来い」
 肩越しに命じて寝室の扉を開けると、ブラッドレイは後からついてきたハボックの腕をグイと引いた。
「あっ」
 短い悲鳴を上げるハボックをベッドの上に突き飛ばす。見開いて見上げてくる空色を見下ろしてブラッドレイは言った。
「尻を捲くって脚を開け」
「ッ」
 その言葉に鞭打たれたようにハボックの体がビクンと震える。だが、ハボックは何も言わずバスローブの裾を捲り大きく脚を開いた。
「一日中勃ちっぱなしか?」
 大きく開いた脚の付け根、高々とそそり立った楔を見下ろしてブラッドレイが言う。金色のリングで戒められた楔は血管が浮き出るほど堅く張りつめて、ピクピクと震えていた。
「苦しいです、サー……イかせてください……」
 しどけなく脚を開いてハボックが訴える。そのハボックの体を跨ぐようにベッドに上がったブラッドレイを見上げたハボックは、震える手を伸ばしてバスローブをかき分けた。中から逞しい男根を取り出すと唇を寄せる。先端に恭しく口づけてから口中に含んだ。
「ん……んふぅ……」
 ジュブジュブと咥えた楔を唇で扱く。涙を滲ませ必死に奉仕するハボックを見下ろしてブラッドレイは言った。
「随分と上手くなったな、少尉。これならマスタングも大喜びするだろう」
 ブラッドレイが口にした名にハボックの体が大きく震える。離れようとする頭を押さえつけ、ブラッドレイはハボックの喉奥にガツガツと楔を突き入れた。
「ぐふッ!んぐグッ!!」
 息苦しさに目を剥くハボックに構わず激しく突き入れ、ハボックの頭を己の股間に押しつける。それと同時に喉奥にドクドクと白濁を注ぎ込んだ。
「んぐゥ……ッ!!」
 空気を求めてハボックが鼻孔を膨らませる。逃れようともがくのを押さえつければ、ハボックの喉が上下して注がれた白濁を飲み込んだ。
「ゴホッ、ゴホゴホッ!!」
 漸く唇を解放されてハボックは激しく咳込む。ハアハアと弾む息を何度も唾を飲んで整えれば青臭い精液の香りが強く感じられて、ハボックは情けなさにポロポロと涙を零した。
「サー……ッ」
 解放を求めるハボックに、だがブラッドレイはベッドから下りてしまう。部屋の隅に置かれた大振りな椅子に腰を下ろして脚を組んだ。
「益々デカくしてるのかね?すっかりイヤラシい躯になったものだ」
「あ……」
 無理矢理精液を飲まされて、萎えるどころか更に嵩を増した楔を指摘されてハボックは唇を噛む。こんな行為にすら感じてしまう己が嫌で堪らず、ハボックは震える手を握り締めた。
「イきたい、イかせてください、サー……ッ!」
 それでも、解放を求めて疼く躯をどうすることも出来ず、ハボックは泣きながら訴える。そんなハボックを見つめてブラッドレイが言った。
「それなら尻に咥えたものを手を使わずに()り出したまえ。そうしたら君の好きなものをぶち込んでイかせてやろう」
「……サー」
 平然とそう命じる男をハボックは目を見開いて見つめる。それでも解放されるためには言われるままにするしかないと、ハボックは大きく脚を開き腰を突き出した。
「んっ、んんーッ!!」
 ブラッドレイの視線を感じながら埋め込まれたローターを()り出そうとする。必死に腹に力を込めて踏ん張れば卵型のローターが中から蕾を押し開きゆっくりと顔を出してきた。
「大した眺めだ。これを見たらマスタングもさぞ興奮するだろう」
「ッ、……大、さ」
 その言葉にロイの黒曜石が脳裏に浮かぶ。
「嫌だ、見ないで、たいさ……ッ」
 浮かんだ黒曜石が浅ましい己の姿を嫌悪の色を浮かべて見つめているように感じて、ハボックは啜り泣きながらおぞましい行為を続けていた。


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