セレスタの涙、オニキスの誓い  第二十三章


「まったく、どういうことなんだか」
 ブラウンは机を指先でトントンと叩きながら呟く。ロイに言われずともいい加減自分の部下を返して欲しいと思っているのは、ブラウンとて同じだった。
今まで優秀な部下を射撃大会に何度となく出してきたが、こんな風にそのまま引き留められたことなどない。中にはハボックよりも優秀な者もいたが、大総統が興味を示したことは一度もなかった。
「ハボック、だから……?」
 ふとそんな考えが浮かんでブラウンは軽く目を瞠る。特に理由もなく浮かんだ考えだったが、そう考えれば説明がつく気がした。
「…………」
 トントンと指先で机を叩いてブラウンは考える。机を叩くのをやめその手を受話器に伸ばした。ダイヤルを回し目指す相手に繋がるのを待つ。少しして相手が出ると、ブラウンは挨拶もそこそこに話を始めた。
「マドラス、そっちに私の部下のハボック少尉が大総統のところで引き留められているのは知っているだろう?早く戻してくれるよう要望を入れてるんだが、さっぱり埒があかなくてな」
『ああ、この間マスタング大佐の副官からも問い合わせがあったよ』
「それなら話が早い。悪いが今ハボックがどういう状況にあるのか少し調べて貰えんか?ハボックを引き留めていったい何をさせたいのか、正直さっぱり判らんのだ」
 ブラウンがそう言えば彼の同期であり射撃大会の担当でもあったマドラスはフムと考える。
「確かに射撃大会ではいい成績を収めたかもしれんが、ハボックは訓練中の身だ。さっさと戻して貰わんとハボック一人訓練が遅れてしまう」
 ブラウンが重ねて言えばマドラスが「確かに」と頷いた。
『判った。今どういう状況か調べた上でハボック少尉を早く戻すよう働きかけてみる。大総統付きで引き抜くにせよ訓練が中途半端ではかえって使いものにならんだろうしな』
「状況が判ったところで一度連絡をくれ」
『ああ。少し時間がかかるかもしれんが』
「なるべく早くな」
 ブラウンが言えばマドラスが苦笑する。それでも「判った」と答えが返って電話が切れた。
「まったく、せめて連絡を寄越せ、ハボック。直属の上官だぞ」
 ブラウンは受話器を戻しながら、そう呟いてため息をついた。


「────時まで会議、その後六時からサンセベーリアホテルで戦争孤児の支援の為のチャリティパーティが────」
 ブラッドレイはファイルを手に今日の予定を読み上げる秘書の女性を机に肘をついて見つめる。退屈そうに彼女が言い終えるのを待ってやったいたが、ため息をひとつついて言った。
「ハボック少尉は何をしている?」
「書類の整理をお願いしてやっていただいてます」
 エリゼが低い声で答えるのを聞いて、ブラッドレイは体を起こし椅子の背に身を預ける。
「書類の整理はいいからここへ呼んでくれ。それからサンセベーリアホテルに部屋を頼む。今日はパーティの後そのままホテルに泊まるから君は私がパーティに向かったら帰ってくれて構わん」
 ブラッドレイがそう言うのを聞いてエリゼは思わず身を乗り出した。
「私は呼んで頂けないのでしょうか。今までは私がいつも同行させて頂いてそのままホテルに────」
「エリゼ秘書官」
 言いかけたエリゼの言葉をブラッドレイが遮る。その隻眼に浮かぶ冷たい光を見れば、エリゼはそれ以上続けることが出来なかった。
「言われたことだけやればいい。それ以上君には求めん」
 出ていけと冷たく告げればエリゼが顔を歪める。手にしたファイルを間接が白くなるほど握り締めていたが、長い髪を振り払うようにして執務室の扉に手を伸ばすと乱暴な仕草で開いた。
「ハボック少尉!大総統閣下がお呼びです!」
 怒りに震える声で扉の外へ声を張り上げれば弱々しい返事が返ってくる。少ししてやってきたハボックをエリゼは怒りと嫉妬と侮蔑を秘めた瞳で睨みつけると、ヒールの音も荒々しく執務室を出ていった。戸惑った顔でエリゼの背を見送ったハボックは、ブラッドレイの声にビクリと震えて視線を執務室の中に向ける。
「中に入って扉を閉めたまえ。もっとも君が開けておきたいと言うならそれでも構わんがね」
「サー」
 意地の悪い言葉にハボックは唇を噛んで扉を閉めた。そのままそこに立ち尽くしていれば呼ぶ声にブラッドレイに近づく。見上げてくる隻眼を見つめて、ハボックが震える唇を開いた。
「オレをイーストシティに帰してくださ────」
「マスタング大佐は元気で活躍しているようだよ」
 必死の思いで口にした言葉をブラッドレイが遮る。
「これからも活躍出来るかは、君次第だがね」
 そう続けられれば言いたい言葉を奪われて、ハボックは息を飲んでブラッドレイを見つめた。
「イーストシティに帰るかね?」
「────いいえ、サー」
 返す言葉に選択肢はなく、ハボックは消え入りそうな声で否定する。視線で促され、震える手で服を脱ぎ捨てた。
「その格好もすっかり馴染んだようだ」
 まるで特に変わったものでもないかのように貞操帯を見てブラッドレイが言う。ハボックを引き寄せ鍵を外すと、貞操帯を床に投げ捨てた。そうすればハボックが何も命じられなくてもブラッドレイに尻を向ける。キュッと引き締まった蕾から覗くビーズの先端を掴むと、ブラッドレイは勢いよく引き抜いた。
「ヒアアアアアッッ!!」
 大小のビーズがぬぷぬぷと抜けていく感触にハボックが悲鳴を上げる。最後の一つが抜け出れば、蕾がヒクヒクとイヤラシく蠢いた。
「少尉」
 ハアハアと弾む息を整える間もなく促され、ハボックは支配者のボトムに手を伸ばす。前を緩め逞しい男根を取り出すとピチャピチャと舌を這わせた。たっぷりと唾液を塗すと顔を上げて立ち上がる。そのままブラッドレイと向かいあうように脚を跨ごうとすれば、ブラッドレイの手がハボックの躯を反転させた。そのまま大振りな机の上に俯せに躯を押さえつける。ヒクつく蕾に巨根を押し当てれば、ハボックの躯がビクリと震えた。
「そう言えば、マスタング大佐から問い合わせがあったようだよ」
「え?」
 ブラッドレイの言葉の中の名前に反応して振り向こうとするハボックの頭を、男はガッと掴んで机にゴリゴリと押しつける。それと同時に玩具で緩んだ蕾に押し当てた楔を一気に突き入れた。
「ヒィィッッ!!」
 ズブズブと押し入ってくる凶器に机に押しつけられたハボックの唇から悲鳴が上がる。片手で頭を押さえつけたままガツガツと突き上げながらブラッドレイが言った。
「君のことを随分気にしていたらしい。心配しているようだし、どうしているか知らせてやるといいかもしれんな────大総統の相手をしています、これで大佐の将来は保証されましたとでもね」
「やめてっ!」
 ブラッドレイの言葉に被せるようにハボックが叫ぶ。ゴリゴリと頭を机に押しつけられ、容赦なく突き上げられながらハボックが言った。
「二度と帰してくれなどと言いませんッ!だから大佐には何も言わないでッ!!」
 必死に叫びながら見上げてくる空色をブラッドレイはじっと見つめる。
「サーの言うとおりにしますッ!逆らいませんッ、だから大佐に手ぇ出さないでッ!!」
 ハボックの唇からそんな言葉が飛び出すのを聞いて、ブラッドレイは楽しげに笑った。
「マスタングがそんなに好きかね?」
 意地悪く尋ねればハボックの顔が歪む。ブラッドレイはハボックの髪を鷲掴んでその耳元に囁いた。
「答えろ、少尉」
「……好きです」
「では、マスタングを呼べ。呼びながら私に犯されるといい」
 言うなりブラッドレイはガツンと突き入れる。衝撃に悲鳴を上げたハボックは、ギュッと噛み締めた唇から呻くように言葉を絞り出した。
「……大佐」
 一度呼べば涙と共に想いが溢れてくる。
「イヤだ、こんな……っ、……たいさァっ、アアッ!!」
 その途端ガツガツと最奥を抉られて、呼ぶ声が悲鳴に変わった。
「ヒィッ、たいさっ、大────、ンアアアアアッッ!!」
 その身の奥深くを望まぬ相手に犯されながら、ロイを呼び続けるハボックの心がポロポロと欠け落ちていった。


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