セレスタの涙、オニキスの誓い  第十六章


 ロイは壁の時計を見上げてため息をつく。もしかしたら思いの外食事が長引いて、ホテルに戻ったものの疲れて眠ってしまったのかもしれない。今夜は電話をせずに、明日になってからゆっくりかけてくるつもりなのかもとロイが思い始めた時、電話のベルがリンと鳴った。
「ッ!」
 ロイはすぐさま手を伸ばして受話器を取る。耳に当てるのももどかしく電話の相手に向かって呼びかけた。
「ハボックっ?待ってたぞ!」
 声を張り上げ相手の返事を待つ。だが、受話器から聞こえてきたのは期待した声とは全く違っていた。
「大総統閣下?……大変失礼いたしました。電話を待っていたものですからてっきりその相手かと」
 相手を確かめもせずに声を張り上げてしまった無礼を詫びれば、逆にロイが待ち侘びている相手を引き留めてしまったことへの謝罪の言葉が聞こえる。ロイは内心まったくだと思いながら口に出しては別のことを言った。
「いいえ。こんな機会はそうあるものではありませんから、ハボック少尉にとっても良い経験になったと思います」
 そう言えば今変わると短く告げる声が返ってくる。やっとハボックと話せるのだとロイがジリジリしながら待っていると、少しして今度こそ待ち続けた声が聞こえた。
「ハボック!何度も電話をくれたって?すまなかったな。……それで?中尉からはまだなにも聞いてないんだ、お前から直接聞こうと思ってね」
 ロイはそう言ってハボックが口を開くのを待つ。だが、なかなか返事が返ってこないのに、ロイは眉を寄せてハボックを呼んだ。
「ハボック?」
 そうすれば、少し遅れてハボックの声が返ってくる。遠慮がちに三位に入ったと告げるのを聞けば、ロイは喜びに胸が熱くなるのを感じた。
「凄いじゃないか!よくやった、本当に!」
 ロイはそこで一度切ってから続ける。
「お前は私の誇りだよ、ハボック。これで未来の私の護衛官に一歩近づいたな。新兵で射撃大会に出て堂々の三位!そんな奴が将来の私の護衛官か。嬉しい、本当に嬉しいよ」
 喜びのあまりロイは一気にまくし立てる。そうすれば涙に震えるハボックの声が聞こえて、ロイは苦笑した。
「なんだ、感動して泣いてるのか?馬鹿だな、ハボック」
 今ここにハボックがいるなら抱き締めてやれるのに。ロイはそう思いながらハボックの名を呼ぶ。そうすれば次に聞こえてきたのはブラッドレイの声で、ロイはムッとして眉を顰めた。結局そのままハボックは電話口に戻らず、電話はあっさり切られてしまう。切れた電話を睨みつけたロイは、一つため息をついて受話器を戻した。
「まあ、一応話せたし」
 話をしたと言うほど言葉を交わせてはいないが、ロイは自分を納得させるように言う。
「ハボック、早く帰ってこい」
 そして今度こそ二人で喜びを分かちあいたい。ロイはそう思いながら、手にしたグラスをセントラルの空の下にいる相手に向かって掲げたのだった。


「……う」
 散々に弄ばれ幾度となく精を注がれた躯を、ハボックはぐったりとベッドに投げ出す。もう、下肢が鉛のように重たく身動くこともままならなかった。
「どうした、少尉。悦すぎて腰がたたんか?」
 ベッドに腰掛けたブラッドレイが煙草に火をつけながら言う。ハボックは涙に濡れた瞳で力なくブラッドレイを見上げた。ブラッドレイは一口二口煙草を吸うと、まだ長いそれを灰皿に押しつける。ぐったりと投げ出された長い脚を掴むとグイと胸に押し上げるようにして広げた。
「グチャグチャだな。一体何回イった?少尉」
 苦痛にもがいていた躯がいつしか快楽に震え、ハボックは嬌声を上げては幾度となく絶頂を極めた。快楽と言う甘い苦痛から逃れるため、ブラッドレイに命じられるままはしたない言葉を口にし、尻を振って犯してくれと強請った。最後はベッドに座るブラッドレイのそそり立つ男根を自ら咥え込み、尻を振りたて高い嬌声を上げて果てたのだった。
「犯されるのがそんなに善かったか?」
「い、言わないでください……」
 あんな醜態を晒しては、善くなかったなどという言い訳も出来ない。小刻みに震えて涙を零すハボックを、ブラッドレイは見下ろしてにんまりと笑った。
「もう暫くセントラルにいるといい。マスタングを悦ばせられるように、たっぷり仕込んでやろう」
「ッッ?!」
 その言葉にやっとこれで解放されると思っていたハボックが目を見開く。小さく首を振って見上げてくる空色に、ブラッドレイは圧し掛かるようにして身を寄せて言った。
「久しぶりに手に入れた玩具だ。じっくり楽しませて貰う」
「やだ……もう、嫌だッ!」
 悲鳴を上げてもがく躯を押さえつけ、ブラッドレイは散々に陵辱した蕾に楔を押し当てる。そうすれば蕾は緩く解けて楔を飲み込んでいった。
「あ、あ、あ」
「くくっ、悦んで飲み込んでいくぞ、少尉。すっかりこれが気に入ったようだ」
「違……ッ、もう嫌っス、サー!もうやめ────アアッ!!」
 ガツンと突き上げられ懇願の言葉が悲鳴に変わる。ガツガツと突かれれば瞬く間に躯は快楽に支配され、ハボックは腰をくねらせて喘いだ。
「んあっ!ああんっ!!アッアッ!!」
「そうだ、もっと締め付けてみろ」
 ブラッドレイは悶える躯を突き上げながら楽しそうに言う。
「マスタングのモノだと思ってな」
 そう言うなり貫く躯が大きく震え、楔を埋め込んだ蕾がキュウと締まった。
「嫌ァ……ッ」
「イヤラシい躯だ。さぞマスタングも歓ぶことだろう」
「ッッ、────いさ……っ、あああんんんッッ」
 嘲るように囁くブラッドレイに激しく揺さぶられて、ハボックは為す術もなくただ涙を零しながら、甘い嬌声を上げ快楽に溺れていった。


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