セレスタの涙、オニキスの誓い  第百三十四章


「は……ふ……」
 何度も角度を変えては唇をあわせ舌を絡めあう。薄く目を開けて間近に迫る相手の顔を見れば熱く見つめてくる黒曜石に、ハボックは頬が熱くなるのを感じた。
「はぁ……ッ」
 ブランケットの陰で秘密めいた口づけを繰り返していた二人だったが、やがてロイがブランケットを撥ね除けるようにしてハボックをベッドに押し倒す。見上げてくる空色を見つめながらロイは紅く染まったハボックの頬に手を伸ばした。
「ハボック」
 優しく頬を撫でながら名前を呼べば、ハボックが伸ばした手をロイの髪に差し入れる。ロイは引き寄せられるままハボックの胸に顔を埋めた。白い肌を彩る薄桃の乳首を唇に含んで、ロイはきつく吸い上げる。チュウと吸い上げられるまま胸を仰け反らせて、ハボックは喘いだ。
「ハァ、ん……ッ!胸……やあ……っ」
 嫌々と首を振ってハボックが言う。こんな風にほんの少し胸を弄られただけで感じてしまう躯が恥ずかしくて、押しやろうとするハボックの手を取ってロイはその指先にそっと口づけた。
「可愛いよ、ハボック……感じてるお前はとっても可愛い……」
「ッ、たいさッ」
 指先に口づけてそんな事を言うロイを、ハボックは顔を赤らめて睨む。ロイはハボックの顔を見つめたまま指先で唾液に濡れた乳首をこねた。
「んあッ!」
 ビクッと震えてハボックは喉を仰け反らせる。クニクニとこねられて、ハボックは己の中心がクンと頭を擡げるのを感じた。
「やあんッ」
 羞恥に震えてハボックは片腕を掲げて顔を隠す。ロイは手に取ったハボックのもう片方の手に舌を這わせて言った。
「腕をどけろ、ハボック……感じてるお前の顔を見せてくれ」
「やだ……こんな顔……ッ」
「愛してる……感じるお前の顔が見たいんだ」
「ッッ」
 チロチロと指先を舐めながらそんな風に言われれば、いつまでも顔を隠してはいられなくなる。おずおずと腕を外した顔を真っ赤に染めたハボックが、羞恥に涙ぐんだ空色の瞳で睨んでくるのを笑って見返してロイは言った。
「ふふ……可愛いな、ハボック」
「知らないっスッ!」
 嬉しそうにそう言うロイにハボックはプイとそっぽを向く。そんなハボックの様子にクスリと笑ってもう一度ペロリと指先を舐めたロイは、プクリと立ち上がった乳首をチュウチュウと吸う。もう一方を指先でこねられて、ハボックは首を振って喘いだ。
「んんッ!は、あ……ッ!い、やッ!」
 胸への愛撫で背筋をぞわぞわと快感が這い上がっていく。何度もシーツを蹴って必死に快感をやり過ごそうとするものの、快楽に従順になるよう仕込まれた躯はどうすることも出来ない。またも冷たい隻眼の視線を感じてハボックが顔を歪めた時、優しい声がした。
「ハボック」
 その声にハボックは閉じかけた目をハッと開く。そうすれば黒曜石が熱く見つめていることに気づいて、ハボックは腕を伸ばした。
「たいさ……っ」
 伸ばした腕でロイの頭を引き寄せ胸に抱え込む。差し出すように胸に顔を押しつけられて、ロイは白い胸に口づけた。
「アッ」
 きつく吸いついてロイは薄紅の花びらを散らす。何度も口づけて幾つも花びらを散らす度、ハボックの躯がビクビクと震えた。
「ああ……たいさァ」
 散りばめられた花びらが躯に熱く火を灯し、快感を生み出す。その快感を生み出すのがロイだと確かめるようにハボックがロイを呼べば、ロイが口づけながらそれに答えた。
「ハボック……ハボック」
 優しく響く声が安堵と悦びをもたらして、ハボックは涙を流す。ハボックの頬を濡らす涙に気づいて、ロイが尋ねるようにハボックを呼んだ。
「ハボック……?」
 ロイは呼んで金色の睫に宿る涙を指先で拭う。そうすればハボックが涙に濡れたロイの指先に口づけて答えた。
「嬉しいんス……オレ、ずっと大佐とこうしたかった……」
 ブラッドレイに、男たちに身を委ねながら、心の奥底でずっと思い描いていたのはロイの姿だった。
「好き……たいさ、大好き……」
「ハボック」
 涙に濡れた顔を泣き笑いに歪めて何度もそう囁くハボックに、ロイは堪らない愛しさと切なさを感じて深くふかく口づけた。


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