セレスタの涙、オニキスの誓い  第百二十一章


 ドカドカと荒い足取りでロイはホテルのロビーに飛び込む。ハアハアと肩を上下させ息を弾ませながらロビーを横切ってエレベーターに向かおうとするロイの前に、ホテルの支配人が立ち塞がった。
「お待ちください!今夜はもう、エレベーターはお使いになれませんっ」
 そう言って行く手を塞ぐ支配人をロイは睨む。苛烈な焔を宿らす黒曜石に睨まれて、支配人はよろよろと後ずさりながらもロイに向かって両手を突き出した。
「だ、大総統閣下のご命令です……っ、今夜はエレベーターを使う事は────」
「ブラッドレイは部屋にいるんだな……?────ハボックと一緒に」
「え……?」
 低く呻くように言うロイに、ロイを押し留めようと両手を突き出していた支配人は目を見開く。
「ハボックと……ッ」
 ギリと歯を食いしばってロイは立ち塞がる支配人を睨めつけた。
「どけ」
「で、ですが……ッ」
「どけェッッ!!」
 あくまで己の職務を全うしようとする支配人にロイは声を張り上げる。焔をまとった怒気に気圧されるように尻餅をついた支配人の横をすり抜けて、ロイはエレベーターに向かった。
「ッ?!」
 だが、開閉ボタンを押してもエレベーターは反応しない。カチカチと何度もボタンを押しても全く動く気配のないエレベーターに、ロイは舌打ちして床にヘたり込んだ支配人を振り返った。
「キーを寄越せ」
「しかし……、────ヒッ!!」
 髪の毛がチリチリと煙をあげて、支配人はギョッとして手で髪を叩く。慌てて火を消す支配人を見下ろしてロイは言った。
「次は燃やすぞ────キーを寄越せ」
「…………」
 低く囁く黒曜石に、支配人は震えながらポケットから取り出したエレベーターのキーを差し出す。ロイは支配人の手からキーを引っ手繰ると、エレベーターの開閉ボタンのすぐ側にある鍵穴にキーを差し込みオンの方へ回した。そうしてもう一度開閉ボタンを押せばエレベーターの扉がゆっくりと開く。開いた扉から乗り込み最上階のボタンを押したロイは、上へと上がっていくエレベーターの中ジリジリとしながら扉を睨みつけていた。


「あ……やァ……ッ」
 ジェルのぬめりを借りて押し入ってくる男の指に、ハボックは顔を歪めて首を振る。グチグチと蕾を掻き回されればゾクゾクとした快感が背筋を這い上って、ハボックは弱々しくもがいた。
「どうした、少尉?悦くなってきたか?」
「……ッ」
 違うと言ったところで大きく開かれた脚の付け根、ゆるりと勃ち上がった楔を見れば快感を感じているのは一目瞭然だ。もう一本指を増やされグチョグチョと激しく掻き回されて、ハボックは喉を仰け反らせて喘いだ。
「も……やめて……ッ」
「やめて?相変わらず素直でないな、君は」
 ハアハアと弾む息の合間に「やめて」と訴えるハボックにブラッドレイはクツクツと喉奥で笑う。今ではもう熱を蓄えて高々とそそり立った楔から先走りの蜜をたらたらと垂らすハボックの顔を覗き込むようにして、ブラッドレイは言った。
「本当はもう一刻も早くここに突っ込んで欲しいのだろう?逞しい牡を突き立てられてグチャグチャに掻き回して欲しいのだろう?」
「違……っ、アアッッ!!」
 一層激しく掻き混ぜられてハボックは大きく背を仰け反らせる。嫌だと思いながらも掻き回す指をキュウキュウと締め付けてしまう己の躯に、ハボックは唇を噛み締めて涙を零した。
「嫌だ……ッ、嫌だ、もう……ッ!」
 こんなのは耐えられないと思いながらも躯は与えられる快感を受け入れ、更にもっとと強請る。心と躯のギャップに耐えられず、ハボックはポロポロと涙を零した。
「ふふ……、いい顔だ、少尉。知ってるかね?君のそう言う表情は男の嗜虐心をそそる。もっと啼かせてやりたいと思うのだよ。心当たりがあるだろう?」
「知らないッ、そんなことッ!勝手なこと言うなッッ!!」
 そう大声を張り上げながらもハボックの脳裏をこれまでの事が(よぎ)る。激しく掻き回す指の動きに涙を零しながらゆるゆると涙に濡れた顔を振るハボックに、ブラッドレイがクスクスと笑った。
「本当に君は男心を擽るな。軍人としてマスタングの背中を護るよりベッドで奴の相手をした方がいい」
「ッ!」
 面白がるように言うブラッドレイの言葉にハボックは大きく目を見開く。涙に濡れた瞳でブラッドレイを睨んで言った。
「オレは軍人として大佐の背中を護るんですッ!そう決めて────アアッッ!!」
「君には無理だよ、まだ判らんのか?」
 グッと指を突っ込まれて悲鳴を上げるハボックにブラッドレイは嘲るように言う。
「くだらん夢にいつまでも縋ったりしないよう、しっかりとその躯に教えてやろう」
「なん……、んああッ」
 低く囁いてブラッドレイは埋めていた指を乱暴に引き抜くと、ハボックの脚を押し開き抱え上げた。
「しっかりその躯と頭に刻みたまえ。君にはマスタングの背中を護るなど無理だ。奴の役に立ちたいなら精々男に脚を開くことだ」
 ブラッドレイは低く囁いてそそり立つ己をハボックの双丘の狭間へと押しつける。たぎる塊が戦慄く蕾を割り開き押し入ろうとするのを感じて感じて、ハボックは目を見開いた。
「やだ……ッ、嫌だッ!挿れないでッッ!!」
 恐怖に顔を歪めて激しく首を振るハボックにブラッドレイはクツクツと笑いながら腰を突き出す。巨大な熱い塊が僅かな抵抗をみせる蕾を押し開きゆっくりと狭い肉筒に突き入ろうとするのを感じて、涙に濡れたハボックの瞳が大きく見開かれた。


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