| セレスタの涙、オニキスの誓い 第百四章 |
| 唐突な誘いに大声で話していた男たちが驚いてハボックを見る。奇妙な沈黙が室内を満たす中、リンチが口を開いた。 「酔ってんのか?ハボック。いきなりどうしたんだよ」 「これっぽっちの酒で酔っちゃいねぇよ。ちょっとヤりたくなっただけだ」 困惑したリンチの言葉にハボックは答える。見つめてくる男たちの視線の先で喉を仰け反らせてゴクゴクと酒を飲み干し、唇の端から零れた滴を手の甲で乱暴に拭った。 「なんだよ。酒入ったから勃たないってか?」 わざと嘲るような笑みを浮かべて男たちを見回す。手にしていたグラスをテーブルに置き、ボトムの前を弛めた。 (どうしても消せない恐怖ならねじ伏せてしまえばいい。ねじ伏せて、オレは────大佐について行かなきゃ) 心の中で何度も大丈夫と唱えても恐怖を押さえることが出来ない。それならば、とハボックは思う。嘗て赴いた戦場で毎晩のように男たちの相手をしていた。あの時の自分は何をされようと恐怖など感じていなかった筈だ。 (あの時と同じように身を任せれば、きっと恐怖なんて感じなくなる。迷う暇も考える時間もなく絶え間無く犯されたら、きっと恐怖なんて感じなくなるに違いないんだ。オレにはもう立ち止まってる時間なんてないんだから) あの戦場で男たちに身を任せていた自分が、今の自分とは全くかけ離れた状態にあったことなど考えもせず、ハボックはそう思う。時間がないと言う焦りとなんとしてもロイについていかなければという切羽詰まった気持ちに任せて、ハボックは弛めたボトムの中へ手を忍び込ませた。 「なんだよ、だらしない奴ばっかりって事?突っ込んでいいって言ってるんだぜ?」 ハボックは笑みを浮かべた顔で男たちを見回す。ボトムに差し込んだ手で楔の先端をグニグニと捏ねながらシャツの裾から手を差し入れた。胸を探り乳首を親指と人差し指で摘んだり押し潰したりする。ハアと湿った息を吐き出す唇を舌でぺろりと舐めた。 「なあ……誰か、オレにデカイの突っ込んでくんない……?」 低く囁けば誰かがゴクリと唾を飲み込む音がする。誰か一人が手を出せば一気にそう言った場へと変わるギリギリの緊張感が、狭い個室を支配した。 「ハボック!くそ……ッ、どこに行ったんだっ?!」 ロイは必死になってハボックの姿を探す。家の周りを探して見つけられず賑わう界隈へと足を向けたものの、行き交う大勢の人や立ち並ぶ店の多さにロイは目眩を覚えずにはいられなかった。通りを歩いているならば何とか見つける事は出来るかもしれない。だが、どこか店に入っているのだとしたら一軒一軒虱潰しに店を調べたところで、果たして見つけられるのだろうか。 「迷ってる場合かッ」 ロイは込み上がる不安を頭を振って振り払うと片っ端から店を覗いて回る。通りに立つ客引きの店員や通りを行く買い物客にもハボックの姿を見なかったかと尋ねたが、ハボックを見たという話は全く聞けなかった。 「くそ……ッ、また同じ過ちを繰り返すのか、私は……ッ」 一度離してしまったハボックの手をやっとの思いでもう一度この手に掴んで、二度と同じ過ちは繰り返すまいと誓った筈だった。それにも関わらずこうしてまたハボックの姿を見失ってしまっているとは。 「頼む、ハボック、頼むから……ッ!」 いつの間にか暮れてしまった街を駆け回って、ロイは必死にハボックの姿を探し続けた。 「……ん」 ハボックはシャツの中に潜り込ませた手で乳首をキュッと摘む。眉を寄せ熱い吐息を吐き出したハボックは、グッと肩を掴まれて伏せていた目を上げた。 「いいのかよ、本当に」 「……勿論。アンタのデカイので気持ちよくさせてよ」 ギラギラとした目で食い入るように見つめてくる男に、ハボックはうっすらと笑う。男の股間に手を伸ばせば、固いボトムの布地越しでも熱を持っていることがはっきりと判った。 「デカイね……突っ込まれたらと思うとゾクゾクする」 急激に膨れ上がる恐怖を押さえ込んで、ハボックは口に出してはそう言う。誘うように男の股間を撫でるハボックの肩を掴むと、男はテーブルの上のグラスを手で払いのけハボックを押し倒した。 「あっ」 固いテーブルに頭をぶつけて、ハボックは痛みに顔を歪める。男はそんなハボックの様子には構わずシャツをグイと捲り上げた。そうすれば部屋の照明の下、白い素肌と紅く色づいた胸の飾りが露わになる。男はゴクリと唾を飲み込むと、プクリと立ち上がった乳首にむしゃぶりついた。 「アアッ!」 ビクッと大きく躯を震わせて、ハボックが仰け反る。乳首を舐め回す濡れた舌の感触ともう一方の乳首を乱暴に摘む指の動きに、ハボックは零れそうになった悲鳴を必死に飲み込んだ。 (平気だ……ッ、こんなの、なんでもないッ!これが我慢出来たらきっとねじ伏せられるんだから……ッ) 怖くてこわくて闇雲に暴れ出しそうになるのを、ハボックは爪が刺さりそうになるほど手を握り締めてこらえる。ギュッと目を瞑っていたハボックは、ガチャガチャとグラスがぶつかる音にうっすらと目を開けた。そうすれば、別の男がテーブルに乗り出して手を伸ばして来るのが見える。男はハボックの頬を両手で挟むとキスをしかけてきた。 「んッ……んぅ……ッ」 名前も知らず、顔すらよく判らない男の舌が口内を好き勝手に動き回る。好きでもない男のキスを受け止めて、ハボックの瞳から涙が零れた。 (たいさ……) ハボックの脳裏に何よりも好きな黒曜石が浮かんだ時、別の誰かの手が伸びてきてハボックのボトムにかかる。弛めてあったボトムは簡単に引き剥がされて、剥き出しにされた脚を撫で回す掌の熱く湿った感触にゾッと身を震わせたハボックは、悲鳴を上げてしまわないよう重ねられた男の唇に己のそれを強く押しつけた。 |
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