| 真・偏愛 第二章 |
| ロイは暫くの間気を失ったハボックに己を沈めたままでいたが、その汗と涙で濡れた頬をそっと撫でるとずるりと自身を抜き出した。ハボックの蕾からとろりと零れる己の残漿に満足そうに笑うと立ち上がり、ハボックの体を抱え上げ、2階へと上がっていく。ハボックをベッドの上に下ろすと引き出しから小さな機械のような物と消毒薬やガーゼなどを取り出した。一度階下へ下りて冷凍庫に入れてあった数枚のタオルを持ってくる。それからハボックの両手を一つに括るとベッドヘッドへと縛り付けた。ロイはハボックの腰の辺りに跨ると、凍らせたタオルでハボックの乳首を冷やし始める。 「…う…」 ゆっくりと目蓋を開いたハボックはぼんやりと自分に圧し掛かる男を見つめた。胸に押し当てられた冷たいタオルで急激に意識が覚醒し、ハボックの脳裏に少し前に自分の身に起きた事が思い浮かんだ。ハッとして見上げた先にうっすらと微笑む黒い瞳を見つけてハボックは身を捩った。 「なっ…あっ」 身を捩って初めて両手をベッドに括りつけられている事に気がつく。だが、それでもハボックは何とか自由になろうともがき続けた。 「どいてくださいっ!手、ほどいてっ!」 ハボックは自分を見下ろすロイに向かって怒鳴る。そんなハボックをロイは楽しそうに見つめると冷やしていたタオルを取り払った。 「じっとしていろ。痛い思いはしたくないだろう」 そう言ってロイは消毒薬を含ませたガーゼでハボックの乳首を拭く。冷やされた乳首は弄られても判らないほど感覚が麻痺していた。 「なに、言ってるんスか…アンタ、何考えて…っ」 身を捩った途端とろりと脚を伝わる感触にハボックはびくりと体を震わせる。ロイは小型の機械をハボックの胸に押し当てると言った。 「じっとしているんだ、すぐ終わる」 「な、に…?」 何をされるかまるで判らず、ハボックは身を硬くする。その途端、バチンという音と共にハボックの左乳首を痛みが襲った。 「いひぃっ!!」 胸を仰け反らせるハボックからロイはゆっくりと装置を外す。冷やしていたおかげで出血は少なかったが、ハボックの乳首には小さな穴が開いていた。そしてそこにはバーベルタイプのピアスが突き刺さっていた。ロイは両側のボールを外すと半円状の金具に小さなルビーがついた飾りをはめ込む。ロイが手を離したそこには小さなボディピアスが施されていた。 「あ…あっ…つぅ」 ズキズキとする痛みにハボックは息を吸い込むことすらままならなかった。浅い呼吸を繰り返し、はらはらと涙を零すハボックの耳元にそっと口付けるとロイは囁く。 「お前は私のものだ…よく覚えておけ…」 その言葉と同時にロイはハボックの脚を大きく押し開くと、グイと自身を突き入れた。ぐちゅぐちゅとかき回し突き上げるたびハボックの唇から喘ぎ声とも呻き声とも判らぬものが零れる。痛みと恐怖とに混乱しきったハボックはただロイのなすがままに体を揺らし続けた。 気が付いた時には自分のアパートのベッドに横たわっていた。一体どうやってここまで帰ってきたのかハボックには全く記憶がなく、あの出来事は悪い夢だったのではないかと思えた。だが実際には体の奥に残る痛みがそれが夢ではなかったのだとハボックにはっきりと告げていた。ハボックはのろのろとベッドの上に身を起こす。途端胸を襲った痛みにハボックは顔を歪めた。あまりにもおぞましい記憶に必死にその痛みに気付かぬふりをしようとしていたハボックだったが、ジンジンと疼くような痛みはハボックがその記憶から目を逸らすことを赦しはしなかった。 ハボックは恐る恐るシャツの中を覗き込む。自分の胸を飾る血の色をしたルビーを目にした途端、ぐぐっとせり上がってきた吐き気にあらがえず、ハボックは自分の膝の上に汚物を撒き散らした。胃の中の物をあらかた吐き出したハボックは汚物まみれの自分の手のひらをぼんやりと見つめる。その汚れた様が今の自分を表しているように感じて、ハボックは唇を噛み締めた。突然立ち上がったハボックは次の瞬間ふらふらと床の上にしゃがみ込む。這うように浴室まで行くと服を脱ぎ捨て震える手でシャワーのコックを捻った。そうしてガシガシと皮が剥けそうな勢いで体を擦り始める。 「いやだ…いやだ…いやだ…」 そのハボックの唇からはうわごとのような言葉が零れ続けていた。 「先日の爆弾テロの報告書です」 ハボックは執務室のロイの机の上に書類を置いた。そうして一礼すると出ていこうとする。 「ハボック」 扉を開けようとした直前、背後からかかった声にハボックはピタリと動きを止めた。振り返らずに次の言葉を待つハボックにロイが言う。 「何か話していかないのか?」 いつものように、と言うロイにハボックは低い声で答えた。 「話すことがありませんから」 「どうして。いつもおしゃべりしていくだろう?」 そう言うロイにハボックは振り向くと振り絞るように言う。 「アンタと話すことなんて何もないです」 怒りを湛えた空色の瞳をロイはうっとりと見つめた。 「体の具合はどうだ」 「別に何ともないっス」 取りつく島のないハボックの言葉にロイは笑って立ち上がるとゆっくりとハボックに近づいていく。 「来るなっ!」 悲鳴のようなハボックの声にロイは楽しそうに言った。 「何故?」 真っ青な顔で扉に背中を貼りつけるハボックの頬にロイはゆっくりと指を這わせた。途端、その手を思い切り叩き落とされてロイは苦笑する。 「熱があるな。きちんと消毒しているのか?」 「アンタに関係ないっ…!」 ハボックがそう怒鳴った時、遠慮がちに扉をノックする音がした。 「大佐?」 心配そうなホークアイの声にロイが答えた。 「何でもないよ、中尉」 その言葉と同時にハボックは扉を開けて飛び出していく。自分の横を青い顔で走り抜けていくハボックを見送ってホークアイはロイを見つめた。 「大丈夫、何でもないよ」 ロイは笑って執務室の扉を閉める。歩きだそうとしてコツンと足先に当たったものに視線を落とした。腰を屈めて拾い上げるとロイはうっすらと笑う。その手にあるのはハボックの煙草のパッケージだった。 「少尉」 自席で書類を書いていたハボックにホークアイが声をかけた。自分を振り仰いだハボックの顔色の悪さに一瞬息を飲む。 「なんスか、中尉」 ハボックの声にホークアイはハッとすると答えた。 「何か問題があるなら」 「何もありません」 しまいまで言わせずにそう言うハボックにホークアイは言葉を失った。 「少尉…」 「それだけならオレ、この書類急ぎで仕上げなきゃならないんで」 そう言って書類に視線を戻してしまったハボックの横顔の冷たさに、ホークアイは掛ける言葉を見つけることが出来なかった。 |
→ 第三章 |