雨にうたえば
明るい空の下、しとしとと降る雨の中を傘を差して歩いていく。季節は秋と冬の境目。降ってくる雨はそれにふさわしく
冷たかったけれど、オレの心はなんとなくウキウキとしていた。原因はなんてことのないことばかり。
大佐に出した書類が一発で通ったとか、
演習の時、部下達の前でやった模範の射撃がバッチリだったとか、
食堂のエビフライが他のヤツより1本多かったとか
もう空だと思っていた煙草のパッケージの中に、実は1本残ってたとか。
一つ一つはちっぽけでどうでもいい事ばかりだったけど、でもチリも積もればなんとやら。最近あまりいい事のなかった
オレには、ちっちゃないい事の寄せ集めは大きないい事になって気分を幸せにしてくれる。
傘をくるくると回しながら歩いていけば自然と鼻歌が零れたりして、それがまた妙に楽しくて、オレはくすりと笑うと
手にした買い物の袋を揺すり上げた。
久しぶりに重なった休日。本当は一緒に買い物に出たかったけれど、寒さもましてや雨なんて大嫌いなあの人が
付き合ってくれるはずなどなく、それが判っていたオレはまだベッドの中でまどろんでいるあの人を置いて早々に
買い物に出た。起きる頃に合わせてブランチを用意しようと袋の中は結構な数の食材が詰まっている。
オレは鼻歌を口ずさみながら空を見上げた。曲に合わせるように自然と足取りも軽くなってステップでも踏もうかと
思ったオレが空から戻した視線の先に見慣れた黒髪。
「買い物なら声くらいかけろ。」
そう言ってブスッとしてオレを見る。
「せっかくなら一緒に行きたいだろう。」
そう思ったのがオレだけじゃなかったのだと、ぶっきらぼうに知らせてくれるアンタにオレのこころがまたウキウキと
弾みだして。
「大佐、一緒に踊りましょうか。」
そう言ったら「ばあか。」って照れくさそうに言った顔が嬉しくて、オレはまたくるくると傘を回した。
2007/11/29
雨ネタって思っていたら浮んできたのがこの歌「雨に唄えば」。映画は見た事ないんですけど曲は結構すきかなぁって。何となくステップ踏みたくなる曲
ですよね。そんなことを考えながら書いたら、ありがたい事に「踊らなくてもいいからロイを姫抱きにしてくるくるって回って欲しい」ってコメントを頂きましてv
そんなワンシーンを追加したのが下記にリンクしたその後です。
→ 「雨にうたえば その後」(ハボロイ・2007/12/4日記ss)