この想いの行きつく果て  第一章


ロイは司令室に入るとぐるりと部屋の中を見渡した。そうして金色の頭が目に入るとホッと息をつく。ハボックは今
電話で誰かと話しこんでいた。片手に受話器を、もう片手に吸いかけの煙草を持って、時折笑いながら話をして
いる。
(誰と話をしているんだろう…)
楽しげなその様子から、相手が上官でないことは確かだ。綺麗な空色の瞳を輝かせて、時折手にした煙草を
色の薄い唇へと運ぶ。時折ちらりと覗く舌先に、ロイはぞくりと体を震わせると慌てて執務室へと入った。
閉めた扉に背を預けて、ロイはため息をつく。一体、いつからこんな事になってしまったのだろう。自分はずっと
男になど興味はなかったし、これからもそうだと思っていた。だが、気がついたときには自分の部下であるハボック
の姿を四六時中追っていた。その空色の瞳に見つめられるとドキドキと胸が高鳴り、ハスキーな声に背筋を
ぞくりと快感が走り抜ける。あの逞しい腕に抱きしめられて口付けられたらどんな気持ちだろうと、ロイは独り寝
のベッドの中でハボックの姿を思い浮かべては自身を慰めていた。
(どうかしてるんだ、私は…)
そう思ってはみても募る想いをどうすることも出来ない。だが、その想いを知られることもまた恐ろしくて、ロイは
最近ハボックの顔をまともに見ることも出来ないでいた。
はあ、とため息をついて、ロイはもぞ、と腰を揺らめかせる。さっき見たハボックの姿に自分が欲情している事に
気づいてロイは泣きたい気持ちになった。
(どうかしてる…たったあれだけのことに…)
自慢ではないが、これまで随分と恋愛も経験してきた。その殆んどは自分が主導権を握り、相手を翻弄してきた
と言えると思う。だが、ハボックに関しては自分はまるで何も知らない少女のようだ。ハボックの一挙手一投足に
翻弄されている。ロイが唇を噛み締めて熱を持ち始めた自身に触れようとした時、背にした扉がノックされた。
「大佐?ハボックですけど。」
そう言いながらロイの返事を待たずにぐいと扉を開けてくる。ロイは慌てて扉から背を離すと机の向こうへと
回った。
「どうした?」
ワザとらしく書類に目を落とし、ハボックの目を見ずに尋ねる。だが、一向に返ってこない返事に訝しんだロイが
視線を上げると、自分をまっすぐにみつめてくる空色の瞳と目があった。咄嗟に目を逸らそうとして、だがその
強い光に瞬きをすることすら出来ない。凍りついたようにハボックを見つめるロイに、ハボックはうっすらと笑った。
「たいさ…。」
その唇が動いてロイを呼ぶ。それだけの事にロイは大きく体を震わせた。
「アンタ、最近まともにオレのこと見ないっスよね。そのくせ、オレが見てないときは舐めるようにオレのこと
 見てる。どうしてです?」
聞かれて、だが答えられるはずもなく、ロイはハボックを見つめたまま唇を震わせる。そんなロイにハボックは
近づいていくと、その顎を掴んだ。
「もしかしてオレのこと、好きだったりして…」
そう言われてロイの顔にたちまち血が上る。真っ赤になってしまったロイをハボックは目を丸くして見つめていた
が、次の瞬間くすくすと笑い出した。
「へえ、そうなんスか、気づきませんでしたよ。だってアンタ、しょっちゅう綺麗どころとデートしてるし、昨日だって…」
そう言いかけてハボックは今気づいたと言うように目を見開いた。
「そういやアンタのデートの相手、金髪ばっかでしたよね。青い目の娘(こ)も多かったし。単にアンタの好み
 なんだって思ってたけど、それってもしかして」
オレの代わりなんスか、と囁かれてロイはぎゅっと目を閉じた。そんなロイの様子にハボックはニンマリと笑う
と聞いた。
「アンタって、オレを抱きたいの?それとも」
ハボックの唇がロイのそれに触れんばかりに近づくと囁く。
「オレに抱かれたいの…?」
ハボックの言葉にロイの体が大きく揺れた。ハボックはくくくと笑うとロイの耳元に唇を寄せる。
「いいっスよ。アンタなら抱き心地よさそうだし。今夜仕事が終わったらアンタの家に行きますから、楽しみに
 してて下さいよ。」
約束、とハボックはロイの唇を塞いだ。忍び込んできた舌がロイの口中を散々に嬲った末、出て行く。がくんと
机に手をついて体を支えるロイを置いて、ハボックはまた後で、と執務室を出て行った。

ロイは外での会議を終えて、司令部には戻らずそのまま自宅へと戻っていた。コートを玄関の脇にかけると
浴室へと入っていく。鏡に映る自分の姿を見てロイはため息をついた。昼間のハボックの言葉に全身が期待
に震えている。自分を見返す黒い瞳が欲情に濡れているのが耐えられなくて、ロイは目を閉じた。緩く頭を
振ると鏡から顔を背けて服を落としていく。中へ入ってシャワーのコックを捻ると冷たい水を全身に浴びた。
(何を期待してるんだ、私は…)
抱いてもらえるかもしれない、そう思っただけでゾクゾクする。あの腕に抱かれてもう一度口付けられたい。
(バカだ…。からかわれただけかもしれないじゃないか。)
そうは思っても高まる熱を抑えられない。ロイは冷たい水を浴びているにも係わらず熱く熱を持つ体を抱き
しめた。壁に手をつくともう一方の手でそそり立つ中心を握り締める。
「あ…は…ハボック…っ」
空色の瞳を思い浮かべながらロイは自身を慰める手の動きを早めていった。
「はあっ…あっ…ハボック…ハボっ」
自分の口中を蹂躙したハボックの舌の熱さを思い浮かべた瞬間、ロイの中心が白く爆ぜていた。
「あっあああっっ」
吐精して、ロイはずるずるとその場に座り込む。冷たい水に打たれながらロイはゆっくりと流れていく白濁を
見つめ続けていた。

シャワーを浴びて服を着ると、ロイは食事をする気にもなれずソファーに座り込む。時計の音だけが響く部屋
の中で、ロイはソファーの上で膝を抱え込むと目を伏せた。ハボックから何の連絡もないまま時間だけが刻々
と過ぎていく。そうして時計の針が今日の終わりを告げ、伏せたロイの瞳からぽろりと涙が零れた。惨めな
思いが胸を占め、涙を止めることが出来ない。ソファーで膝を抱えたままはらはらとロイが涙を流していると、
その時。コンコンと、扉をノックする音が響いた。びくんと体を震わせると、ロイは慌てて服の袖で涙を拭う。
玄関に飛び出すと震える指で扉を開けた。あけた扉の先に薄っすらと笑う空色の瞳を見つけて、ロイの心が
喜びに震える。
「こんばんは、たいさ。」
ハボックはそう言うと中へ入り後ろ手に鍵を閉めた。
「同期のヤツらと飲んでたらちょっと遅くなっちゃいました。」
平然とそう言うハボックにロイはぐっと唇を噛み締める。
「飲んでたのか?」
呟くように聞くロイにハボックは楽しそうに答えた。
「ええ、誘われたんで。別に大佐とは時間の約束してなかったし、拙かったっスか?」
聞かれてロイは慌てて首を振る。そんなロイの顔を覗き込むとハボックは言った。
「もしかして泣いてたんスか?」
「な、泣いてなんか…っ」
ビクッと体を震わせてそういうロイの顎を掴むとハボックはその顔を見つめる。
「来ないと思いました?」
ふるふると首を振るロイの耳元に唇を寄せるとハボックが囁いた。
「可愛いっスね、アンタ。」
たっぷり可愛がってあげますよ、と言うハボックの胸にロイは顔を埋めると瞳を伏せた。


→ 第二章



caution!!

この作品には性的表現が多分に含まれます。そういったものが苦手な方、また、24歳以下の方は
閲覧をご遠慮下さい。また、甘い二人がお好みの方にはお勧めできません。閲覧後の苦情は一切
受け付けませんので、ご注意の上お進み下さい。